自宅で楽しむ911選びは十人十色。カーコンフィギュレーターで自分好みの1台を作ってみる!

03 Custom/僕を悩ませる911の論理と感情

ボルシェ911とは意味不明なブランドだと、つくづく悩むことがある。
クルマにとって最大の重量物であるエンジンを後輪に覆いかぶさるように搭載、その車輪を駆動させることを基本に技術的な構成を守り続ける。最大ウエイトの位置は徐々に重心点に寄せられていき、ついには後輪の内側に少しだけ踏み込んだけれど、つまりは絶対的にRRが完全無欠の理想ではなく、それによって得るものと失うものがあることの承知を晒したわけだがそれゆえに頑固一徹さが際立つ。
レースでは必ず勝つ。一点の妥協も許さぬマネージメントと高度な技術により、世界のサーキットを席巻する。まるで技術書を積み重ねたかのように隙がない。挑むライバルの前に仁王像のようにたちはだかり足払いをしてきたのだ。
だが一方で、言葉を選ばずに言えば、ふざけたクルマを用意するから不思議である。徹底徹尾性能を追い求めるのならば、屋根など取り払ったりしないはずだ。クルマがルーフを失えば、どれほどの悪影響を与えるかを理解していながら、ボディ剛性には欠かせないルーフを捨て去ってしまうのだからこれはもう狂気である。
つまり、911には「論理」と「感情」が共存しているのだ。「理屈」と「ハズシ」と言い換えてもいい。意味不明なブランドだと悩む理由はそこにある。だからまず、カーコンフィギュレーター遊びをするにあたって最初の1ページで最大の岐路に立たされる。しっかりとしたルーフを備えたクーペか、潔くルーフをとっ払ってしまったカブリオレか。ここで進路は決定してしまう。つまり、「理屈」と「ハズシ」。理論的に速さを追求するのか遊ぶのか。それから先のチョイスに影響する。
ご丁寧にポルシェ911には、「理屈」と「ハズシ」がきっちりと並ぶ。ベーシックなカレラにも、戦闘力を高めたカレラSにも、あるいは孤高の存在であるターボSにも、我々の悩みを弄ぶかのようにクーぺとカブリオレがラインナップしているのである。
さて、どっちの道を歩むか……。
個人的な好みが許される今回の企画で僕は、しばらく躊躇した挙句、「ハズシ」の道に進むことにした。理屈を捨て去り、ただ単純に爽快なオープンエアドライブに空想の世界に没入することにした。
3つに絞られた選択肢の中で僕の目を惹いたのはターボSである。650psというバカバカしいほどのパワーや、絶対に経験することがないであろうにもかかわらず330km/hというと途方もない最高速度に目が眩んだのだ。これみよがしに張り出したフェンダーは、理想的なはずしの世界に足を踏み入れるには適している。
ちなみに、「金に糸目をつけず……」、という編集部の好意によって、金額を確認しないで進むことにした。最後にどうなっていようと知ったことではない。
実はもう、ここまで来ればその先はテンポよくマウスを連打することができる。コンセプトがはっきりしているからだ。
ボディカラーは派手なカーマインレッド。315/30ZR21という大径タイヤがより強調されるようにホイールをチョイス。スポーツサスペンションをクリックしたのは10mm低い車高を手に入れたかったからだ。インテリアも徹底して本革のレッド。メーターリングも赤。
かくして僕が理想と掲げたポルシェ911は、理屈とは背を向ける豪華絢爛の派手な仕様になった。総額3637万5200円。オプションだけでもう一台クルマが買える。それでも予算は編集部が工面してくれる。
僕の出費は、宝くじ代金だけである。

■Name/木下隆之
■Age/60歳
■Model/911ターボSカブリオレ
■TOTAL/36,375,200円
■Body Color/カーマインレッド
■Roof/ブラック
■Interior/ボルドーレッド
【Option List】
・ボディカラー(カーマインレッド)/452,223円
・幌(ブラック)/0円
・レザーインテリア(ボルドーレッド)/0円
・シートセンター レザー、コントラストカラー/139,537円
・ミラーベース(エクステリアカラー同色塗装)/89,630円
・リアサイドエアインテークペイント仕上げ/83,519円
・PORSCHEロゴ、LEDカーテシーライト/24,445円
・エンジンコンパートメントリッド(チタングレー塗装)/70,278円
・モデル名エンブレムなし/0円
・8速ポルシェドッペルクップルング(PDK)/0円
・スポーツエグゾーストシステム(シルバー)/513,334円
・パワーステアリングプラス/43,797円
・PASM付きスポーツサスペンション(10mm低く設定)/248,519円
・20/21インチ911Turbo Exclusiveデザインホイール/0円
・マトリックスヘッドライトブラック(PDLS Plus含)/102,871円
・デザインテールライト/139,537円
・レーンキープアシスト/97,778円
・アダプティブクルーズコントロール/283,149円
・ナイトアシスト/389,074円
・レーンチェンジアシスト/137,500円
・ポルシェエントリー&ドライブシステム/0円
・イオナイザー/47,871円
・スポーツシートプラス/0円
・ストレージパッケージ/0円
・ボルドーレッドシートベルト/73,334円
・スポーツクロノパッケージ ストップウォッチダイアルガーズレッド仕上げ/58,056円
・スピードメーターダイアル ガーズレッド/58,056円
・レザーインテリアパッケージ(インテリア カラー)/0円
・エアベントとスラットのレザー仕上げ/186,390円
・レザー仕上げヒューズボックスカバー/35,649円
・ポルシェクレストエンボスアームレスト/37,686円
・レザーサンバイザー/69,259円
・インナードアシルガードレザー/70,278円
・スポーツシートプラスバックレストレザー、エクステリアカラーペイントインレイ/267,871円
・レザー仕上げのキー、レザーポーチ付き/61,112円
・キルティング削除/0円
・ヒーター付きマルチファンクションステアリングホイール、マットカーボンパネル、スムーズレザー仕上げ/103,890円
・アルミニウムPDKセレクターレバー/101,852円
・アルミニウムペダル/58,056円
・ブルメスターハイエンドサラウンドサウンドシステム/530,649円

ルボラン2020年7月号より転載

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