【国内試乗】「JAGUAR I-PACE HSE」ジャガーが打つEV第2世代への先手

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Eタイプの世界的な成功をきっかけに、スポーツカーメイクスとしての地位を確固たるものとしたジャガー。昨今は、クラシック部門の充実を図ることと、もうひとつ注力しているのが、電気自動車の自社開発。そのお披露目は、2016年のLAショーが選ばれ、ブランド初のピュアEVとしてIペイスがアンベールされた。ここでは、先んじて発売された欧州系ピュアEVを連れ出し、第2世代EVとも言えるIペイスの現在地やEVの未来を占った。

同じBEVでも成り立ちや思想は異なっている

CO2排出量規制が厳しく、なおかつ電動車には有利なルールとなる欧州から続々とBEV(電気自動車)が発売される。これまで市販されていたのは、来るべき電動車時代を先取りした先行的なモデルという意味合いが強かったが、これからは普及に向けて本格的に取り組んだ第2世代と見て取れる。パラダイムシフトの足音が聞こえ始めたとも言えよう。
そんな普及前夜を迎えて、いま日本で購入できる欧州BEV3台に比較試乗してみることにした。ボディサイズや車格、コンセプトやパフォーマンスなどはバラバラだが、それぞれのキャラクターを探っていきたい。
まずは、既存のエンジン車をベースとしたフォルクスワーゲンe-ゴルフ。今後はBEV専用プラットフォームのモデルにバトンタッチする予定であり、本格普及の前段階のモデルとして作られた。
エンジン車用プラットフォームのMQBに搭載されたバッテリー容量は35.8kWhで航続距離はJC08モードで301km、国際測定基準のWLTPで231km。モーターの最高出力は100kW(136ps)、最大トルクは290Nm、車両重量は1590kgでエンジン車に比べ300kg程度重い。それでも乗り味には秀逸なゴルフらしさが存分に生かされている。むしろ、その重さがいい方向に働き、どっしりとしたドイツ車風の味わいは高まっている。
よく知られているようにモーターはゼロ回転から最大トルクを発揮できるので、発進加速は力強く、日常でよく使う速度域や加速ではエンジン車よりも乗りやすくて頼もしい。これはBEVに共通する乗り味であり美点だ。ただし、全開加速を試みると、50km/h程度まではスポーツカーにも負けないと思えるほどに力強いが徐々に加速感が薄れはじめ、100km/hまではそこそこ、その上は少し鈍いと感じるようになる。
それでもパフォーマンスはBEVとなっても乗用車として十二分。もう少し航続距離があると嬉しいなと思えるが、ID3になれば十分だろう。今回電費も測ってみたが街中は7.6km/kWh、東名高速道路を90km目安で走って8.3km/kWh、110km/h目安で7km/kWhだった。

BMW i3は2013年に発売。当初のBEVは22kWhのバッテリーを搭載、最新モデルは42kWhで、WLTCモードで360km。i3はBEVのネックである車両重量増を考慮してアルミシャシー+カーボンボディとして初期モデルでは1195kgに抑えたのが特徴だ。
モーターは125kW(170ps)、250Nm。e-ゴルフと同じくコンパクトカーだがパワー志向なのがBMWらしい。車両重量は初期よりもバッテリーが大容量化され、さらにREXのため1440kgだが軽快に走る。
RWDということもあってアクセルを深く踏み込んだときのトラクションの強さが気持ちいい。パワー志向のため伸び感もあり、e-ゴルフに比べると100km/h付近での加速でもまだ力に余裕が感じられる。カタチ的にも街中での使用を中心にしたモデルではあるものの、駆けぬける歓びを最大限に表現したことは伝わってくる。燃費は街中が7.3km/kWh、80km/h目安が7.6km/kWh、110km/h目安が6.7km/kWh。e-ゴルフよりも軽量だが、わずかに届かなかった。

フォト=河野敦樹/A.Kawano ル・ボラン2019年9月号より転載

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石井 昌道
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