「VWゴルフTSI再検証」GT TSIはT-FSIを積むGTIにどこまで迫れたか?【VW GOLF FAN Vol.12】

速さはGTIに軍配、TSIの良さは懐の深さ

次にGTIでサーキットを走り出してみると、よりガシッとした安定感のある乗り味に気付く。よりスポーティなサスセッティングと実質接地幅およそ5mmアップの効果だろう。実はリム幅が広がるとサイドウオール部の絞り込みが少なくなるので、タイヤの剛性も若干アップするのだ。

ステージがハードになればなるほど、そのポテンシャルが発揮されるGTI。やはり“GTI”の名は伊達ではないことを、今回のアタックでも証明してみせた。エンジンは直噴の2L直4DOHC16Vターボ。パワー&トルクは200ps/5100〜6000rpm&28.6kg-m/1800〜5000rpmで、GT TSIに対して+30ps&4.1kg-mとなる。だが、その数値以上に、シート形状ひとつとってもGTIがスポーツ度で上回るのは明らか。今回のタイム差はエンジン性能だけではなく、それらを含めた総合力の差といえよう。

とはいえ、操縦性にさほど大きな差はないといえるし、接地面積が広がったことによるブレーキ性能の差も誤差の範囲といっていいレベル。ただ、ブレーキを残しながらタイトコーナーのカーブに入っていくときの安定感で、GTIがやや勝るようだ。

さすがというべきか、感心したのは、そのターボの巧みなセッティングだ。TSIのアクセルレスポンスはNAエンジン並に優れていると思ったが、GTIのレスポンスも負けていないのだ。

GTIはターボなので、タイトコーナーから立ち上がるときのターボラグに、TSIの付け入る隙があるのではと思っていたが、圧縮比10.3対1の高圧縮比ターボを可能にする直噴エンジンのおかげで、低中回転域のアクセルレスポンス、パワーの付きが素晴らしくいいのだ。しかも、高回転域のターボの伸びは排気量差を実感させるだけの迫力があり、この点でもGTIが勝っていた。

ただし、当初はTSIとGTIのタイム差は0.6秒ほどだった。それは旋回スピードを高めにしてコーナーを立ち上がっていたからだ。といっても、タイヤがスキール音を発するほど激しく攻め立てたわけではなく、気持ち高めにしていたという程度。だが、その走り方だと、コーナー立ち上がりでアクセルを開け、ターボが効き出したときにホイールスピンしやすくなってしまうし、パワーコントロールも難しい。

そこで走り方を変え、アペックスポイントでの旋回スピードをTSIよりも抑え気味にして、極端な立ち上がり重視の走り方にしてみた。すると、旋回に使っていたタイヤのグリップ力をそのままトラクションに生かせるようになって、あっさりと48秒870をマーク。GTIの性能を見せつける形となった。

もちろん、ゴルフのスポーツモデルであるGTIが、そんなに簡単に攻略されてしまっては立場がないわけで、価格差以上の速さをGTIは持っているし、またそういった走りの性能に、より重心を置いたクルマであるということだ。

ただひとつ、比較的大きな意味を持つだろうと思うのは、最初のタイム差。TSIはパッと乗ってベストタイムが出るほど乗り易いということ。逆にGTIは速さを引き出すためにはそれなりのテクニックや工夫が必要。ゴルフにスポーツ性を求めるなら迷わずGTIだが、どんな場面でもコンスタントに速く走れる懐の深さが、TSIはあるということだ。

GTI BEST LAP 48’870

今回は3周ほどのタイムアタックを、時間を置いて計4回ほど行なったが、走るたびにタイムが上がったのがGTI。逆にGT TSIは最初のアタックで出したベストからタイムは伸びなかった。つまり、斎藤リポーターも本文中で結論しているように、 GTIは走らせ方やテクニックによって、その性能をどんどん引き出すことができるのだ。

【specifications】VOLKSWAGENGOLF GTI(6速DSG)
■全長×全幅×全高=4225×1760×1495mm
■ホイールベース=2575mm
■トレッド(前/後)=1530/1505mm
■車両重量=1460kg
■最小回転半径=5.0m
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=AXX/直4DOHC16Vターボ
■内径×行程=82.5×92.8mm
■総排気量=1984cc
■圧縮比=10.3
■最高出力=200ps(147kW)/5100〜6000rpm
■最大トルク=28.6kg-m(280Nm)/1800〜5000rpm
■燃料タンク容量=55L(プレミアム)
■10・15モード燃費=12.6km/L
■ミッション形式=6速DSG
■変速比=(1)3.461(2)2.150(3)1.464(4)1.078(5)1.093(6)0.921(R)3.989(F)4.058((5)(6)(R)3.136)
■サスペンション形式=前ストラット&コイル、後4リンク/コイル
■ブレーキ=前Vディスク/後ディスク
■タイヤ(ホイール)=225/45R17(7.5J)
■東京標準現金価格=3,440,000円

GT TSI BEST LAP 50’352

GTIと同じような方法でタイムアタックを行なったGT TSIだが、GTIほどタイムは伸びていかなかった。これは斎藤リポーター曰く「ポンと乗ってもタイムが出るセッティング」だからという。GTIほど限界域が高くないこともあるのだろうが、逆に解釈すれば限界がわかりやすい、つまり良い意味でGT TSIは限界を引き出しやすいクルマといえる。

【specifications】VOLKSWAGEN GOLF GT TSI
■全長×全幅×全高=4225×1760×1500mm
■ホイールベース=2575mm
■トレッド(前/後)=1525/1500mm
■車両重量=1410kg
■最小回転半径=5.0m
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=BLG/直4DOHC+ターボ+スーパーチャージャー
■内径×行程=76.5×75.6mm
■総排気量=1389cc
■圧縮比=9.7
■最高出力=170ps(125kW)/6000rpm
■最大トルク=24.5kg-m(240Nm)/1500〜4750rpm
■燃料タンク容量=55L(プレミアム)
■10・15モード燃費=14km/L
■ミッション形式=6速DSG
■変速比=(1)3.461(2)2.150(3)1.464(4)1.078(5)1.093(6)0.921(R)3.989(F)4.117((5)(6)(R)3.043)
■サスペンション形式=前ストラット&コイル、後4リンク/コイル
■ブレーキ=前Vディスク/後ディスク
■タイヤ(ホイール)=225/45R17(7J)
■東京標準現金価格=3,050,000円

サーキットやワインディングなどでは気になる鼻先(ノーズ)の重さ感だが、斎藤氏曰く「TSIは1.4Lといってもツインチャージャーだし、2LのT-FSIを積むGTIとさほど変わらないかな。少なくてもタイムに影響するほどの違いは感じなかった」という。

リポート:斎藤 聡/フォト:郡大二郎

VW GOLF FAN Vol.12から転載

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2021/01/19 08:00

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