英国製スポーツカーに対峙する歓び
そんなことを考えながらも、ひょっとしたらスポーツカーに対するなんらかの解が得られるかもしれないと、淡い期待をしつつ対峙したのはイギリス製スポーツカーの面々である。中でも、もっとも歴史が浅いのに一躍スポーツカーブランドとして世界に名を馳せたのがマクラーレンで、今回は600LTスパイダーを連れ出した。
600LTスパイダーは570などと同じ〝スポーツシリーズ〟に属し、「LT」はロングテールを意味する。570よりもリアだけで47mm、全長で74mm長いボディは、主にダウンフォースの向上を目的に設計され、パーツの約25%を専用とすることで100kg近い軽量化に成功し、上方排気のエキゾーストシステムも車重の軽減に大きく貢献している。
軽量化とダウンフォースの向上、加えて減衰力とバネレートが高められた専用のサスペンション設定からも想像が付くように、600LTスパイダーは720の〝スーパーシリーズ〟にかなり近い〝スポーツシリーズ〟である。バネ上のピッチやロール方向の動きをほとんど感じさせず、ステアリングの動きにシビアに反応し、曲がるというよりもその場で回転するような旋回特性が特徴的だ。スロットルペダルを踏めば圧倒的加速力が瞬時に得られるし、ブレーキペダルに踏み換えればそれを安定的かつ速やかに抑え込む。こういう一連の〝コール&レスポンス〟は、乗用車開発の延長線上にあるスポーツカーではなく、レーシングカーをスポーツカーにコンバートするという発想だと思った。マクラーレンという若いメーカーの出自が商品に現れている。
マクラーレン・オートモーティブ社の設立は2009年だが、今回もっとも歴史が古いのは1913年創業のアストンマーティンである。DBSスーパーレッジェーラは、GTシリーズ(DB11)とリアルスポーツカーシリーズ(ヴァンテージ)とはまた別のスーパーGTシリーズに所属。今回の5台の中では最強の725psを5.2LのV12ツインターボが発生する。リアトランスアクスル形式を採用し、8速ATのギアボックスを後方配置する後輪駆動である。”スーパーレッジェーラ”はイタリア語で”超軽”〟を意味するがその言葉通り、ルーフをCFRP製に、ドアをアルミ製にするなどの軽量化が図られて、V12を搭載していながら1.6トン台の車両重量を達成している。
700ps強のパワーを後ろ2輪だけでまかなうのだから、トラクションコントロールをはじめとする電子デバイスが積極的に介入してくるのかと思いきやさにあらず。むしろ控え目なくらいで、スロットルペダルを必要以上に踏み込んでしまうと後輪は簡単にスピンする。それでもペダルのコントロール性が高いので、ドライバーが適切な入力をすれば官能的なサウンドを奏でながら胸の空くような加速感が味わえる。旋回時には機械式LSDとブレーキを使ったトルクベクタリングが作用するものの、制御されている感覚には乏しく、ドライバー自らがマルチシリンダーのスポーツカーを支配下に置いていることが実感できるのである。
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