ここで登場する3台はラグジャリーとスポーティを融合した各ブランドを代表するトップモデル。エンジンもボディタイプも3車3様だが、各ブランドの最先端技術が惜しみなく投入され、あらゆる面で濃度の高いモデルに仕上がっている。早速、3モデルの走りっぷりを比較してみよう。前回のメルセデスAMG SL43に続き、今回はBMW M850i、アウディe-tron GTを紹介する。
前回『メルセデスAMG SL43』の記事はコチラから読めます!
SLとは対照的な850i、シームレスなe-tron
これに相対するBMW M850iは、いわば対極の存在だ。そのエンジンが530ps/750Nmを発揮する4.4L V8ツインターボという時点で、比べるべきはAMG SL55だとも言えるが、それにも増して乗り味がラグスポのど真ん中。サスペンションの制御はまったりとしなやかで、そこにタイヤはもちろんシートのホールド感に至るまで、すべてのトーンが揃えられている。
【写真13枚】SLとは対照的な850i、シームレスなe-tron。その詳細を写真で見る
エンジンの制御は排気量や出力の割にトルクの立ち上がり方が穏やか。しかしながらつま先の微妙な操作にもリニアに反応し、踏み込めばその分だけクリーミーに回転を上げて行く。それは内燃機関が目指したモーターのような吹け上がりを、地で行なっている。排気音はスポーツモードでもかなり控えめだが、ときおり響くV8の吸気音が心をくすぐる。この優雅な所作はオープントップ時にベストマッチであり、たとえればそれは爽やかなシャンパンのようだ。
ただそれだけで終わらないのがBMWであり、そこから速度域を高めるほどにドライバーとの一体感が増して行く。ステア応答性は軽やかながらも鋭く、しかしトレッドの広さとホイールベースの長さ、そしてxDriveのスタビリティが高い安定感を与える。
それはまるでガソリン時代の末期に許される最後の贅沢のような味わいで、AMG SL43の若さとは、本当に対称的であった。
2台が”今”を楽しみ尽くそうとするラグスポなら、e-tron GTは未来を先取りするラグスポだ。床下に敷き詰めた93.4kWhのバッテリーはフロア剛性と低重心化による運動性能の向上をもたらし、その分だけしなやかにできる足周りはさらに電子制御のエアサスと可変ダンパーの組み合わせによって、吸い付くようなロードホールディングを呈する。
その前後アクスルには350kWと440kWのモーターが配置され、ガソリンエンジン組では太刀打ちできないほどのレスポンスでパワーを解き放つのだが、機械式に対して5倍の速さで4輪を制御する電子クワトロの制御が、一切バネ下を暴れさせることなくトルクを効率的に路面へと伝える。
そんな冷静さがベースとなるラグスポテイストを面白いと捉えるか否かが、e-tron GTを選ぶ上での分かれ目となる。若々しく機敏なAMG SL43、ガソリンエンジン車としてエモさの王道を行くM850iに対し、どこまでも静かにシームレスなパフォーマンスを示すe-tron GT。実質400km弱の航続距離もアバンチュール先の宿に高出力チャージャーさえあればなんとかなるだろうと楽観視したくなるほど、その走りは魅力的だ。完璧を求めず未来のラグスポを今楽しみ尽くすのも、きわめて贅沢な一手である。
【SPECIFICATION】BMW M850i xDriveカブリオレ
■全長×全幅×全高=4855×1900×1345mm
■ホイールベース=2820mm
■車両重量=2120kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+ツインターボ/4394cc
■最高出力=530ps(390kW)/5500rpm
■最大トルク=750Nm(76.5kg-m)/1800-4600rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=245/35R20:275/30R20
■車両本体価格(税込)=19,070,000円
【SPECIFICATION】アウディe-tron GTクワトロ
■全長×全幅×全高=4990×1965×1415mm
■ホイールベース=2900mm
■車両重量=2280kg
■総電力量=93.4kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=534km
■モーター最高出力=530ps(390kW)
■モーター最大トルク=640Nm(65.3kg-m)
■トランスミッション=1速固定式
■サスペンション(F:R)=ウイッシュボーン:ウイッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=ディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/55R19:275/45R19
■車両本体価格(税込)=14,650,000円
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