73カレラの後を受け排気量拡大したホモロゲモデル
1973年、ポルシェはグループ4(少量生産GT)ホモロゲーション取得のために、911の高性能版「カレラRS2.7」を設定した。「カレラ」は1950年代に南米で開催された長距離レース「カレラ・パナメリカーナ」に由来し、「RS」はレンシュポルト(レーシングスポーツ)を意味する。
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この通称73カレラ、当初は規定に則り500台限定生産の予定だったが、大好評につき約1000台が追加生産され、結果的にグループ3(量産GT)ホモロゲーション取得に成功、レースやラリーの出場機会が大きく広がった。そのエボリューション・モデルとして、翌1974年に109台のみ生産されたのが「カレラRS3.0」、通称74カレラである。リアエンドに搭載される水平対向6気筒エンジンは3Lに拡大され、ボッシュ・クーゲルフィッシャー機械式インジェクションを具えて、230psを発揮する。
ボディはGシリーズ(ビッグバンパー初期型)をベースにワイドフェンダー化され、ボディパネルは薄い鉄板やグラスファイバーなどに置き換えられて車重わずか900kg、ブレーキにはレーシングカーである917の部品が流用されている。約半数がカレラRSRに改造されたため、ロードカーの現存数はごく僅かだ。RS、RSRともにレースやラリーで大活躍し、今日まで続くRSシリーズの原点となった。
前後フードにヒンジをプラスして開閉式に
フジミの74カレラは、1980年代後半にエンスージャスト・モデルの一作としてリリースされた1/24スケールのプラモデルだ。ターボと共通のワイドボディに専用の前後バンパーを組み合わせ、インテリアやエンジンなどの部品を差し替えて、実車の特徴を細かく再現している。リリース当時、驚異的な部品点数で多くのモデラーを悶絶させた“エンスー911”だが、カーモデルの精密化が進んだ今日の目には、「案外それほどでもないな」というのが正直な印象だ。部品点数そのものより、成型精度の低さに起因する作りにくさの方がよほど気になるが、接着剤や塗料、工具などが当時より格段に進歩している今なら、畏るるに足らず、である。
ここでお見せしている作例では、キットの本質をストレートに表現することを第一として、ディテールアップは最小限にとどめた。前後フードにヒンジを追加して開閉式とし、足周りのバランスを整え、別売の4点式ハーネスを追加した以外は、ほぼキットのまま。リアシートとロールバーは実車同様にキットでも選択式だが、後者を装備する現存車の多くは熱線無しの軽量リアガラスを装着しているので、ガラス部品内側のモールドを除去し、磨き直して使用した。
パリッとした新金型の空冷911としては、レベルから最近ビッグバンパー/ナローボディ(Gシリーズ)のキットがリリースされたが(カレラ3.2のクーペとタルガ)、同社や他のメーカーに、この74カレラなどの新たなキット化を熱望するモデラーは少なくないだろう。筆者もそのひとりである。と言っても、30余年の時を生き延びてきたこのフジミのオールドキットを、「もはや存在意義無し」と断じる気には到底なれない。3Dスキャン的に凝視すればプロポーションは今ひとつかもしれないし、ディテール表現にも疑問無しとしないが、しかし、設計者の911へのアツい愛は確かに感じられるのだ。十数年ぶりに作ったエンスー911に、あらためて惚れ直した筆者なのである。
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