ポルシェ911の第一世代が発表されたのは1963年のこと、発売は翌1964年であったが、ホイールベースの延長を含む様々な改良を重ねたのち、1974年には第二世代へと移行している。そんな第一世代、通称”ナロー”の911の中でも、高いパフォーマンスとスタイリッシュなルックスで、コレクターズアイテムとしての地位を確立しているのが、1973年のカレラRS、いわゆる「73(ナナサン)カレラ」だ。
このモデルは、FIAが規定するグループ4GTのホモロゲーションを獲得するために開発されたもので、2.7Lのエンジンは様々なチューニングにより210psを発揮、ワイドなリアフェンダーが特徴のボディは徹底した軽量化が図られていた。
ここでお目にかけているのは、この1973年カレラRSのフジミ製プラモデルを制作したものだが、そのまま組み立てただけの作品ではない。だがそれについて述べる前に、まずフジミ製キットについて説明しておこう。
今なお最高の再現度を誇るフジミの名作キット
フジミのこのキットは、1985年から展開された同社エンスージャストモデル・シリーズの一作だ。このシリーズは後にフェラーリ・デイトナやランボルギーニ・カウンタック、ポルシェ356などをラインナップしたが、シリーズの発端となったのは1985年型ポルシェ911ターボである。この911ターボをベースに、第一/第二世代911の数種類をバリエーション展開することでこのシリーズは開始されたのだ。
シリーズ最大の特徴は、当時としては常識外れなほどの高い再現性で、特にエンジンやシャシーなどに細かいパーツ分割と緻密なモールドを盛り込み、そのリアリティの高さは日本国内だけでなく世界的にも話題を呼んだ。
一方肝心のボディについても、それまでのプラモデルにはなかったほど実車に忠実にそのボディプロポーションを捉えていたのだが、さすがに時代的な制約というものがあったのだろうか、今の目でシビアに評価すると、様々な点で詰めの甘いところが見受けられる。そこで、様々な改修によりボディ形状を見直してみたのが、この作例なのだ。
オーバーハングを延長して全体をアップデート!
フジミ製911のプロポーションについては、顔つきが分厚いように感じられ、リア周りも下に垂れているように見える、という評価が、衆目のほぼ一致したところではないかと思われる。
作例では作者独自の検証により、ボディの前後が短いせいでそのような欠点が生じていると結論づけ、オーバーハングを前後とも1.5~2mm延長、バンパーの取り付け位置を上に移動することで、フロントは顔の厚みを、リアは尻下がり感を、それぞれ解消している。これだけではオーバーハングが間延びしてしまうので、ホイールアーチを拡大し、タイヤもキットより大径のものに変更した。
オーバーハングの延長については、やはりそれぞれ一旦切り離し隙間を空けて再接着、そして隙間を埋めて成形という方法を採ることになったが、割と単純な形であるフロントに対し、リアはくるっと丸まった形を継ぎ接ぎして伸ばすことになるので、その分なかなか苦労させられた。
キャビン周りの絞り込みや丸みにも注目
このほかキャビン周りの形状にも着目し、クオーターウィンドウ部分はリアへの絞り込みを強めた。これは、911は真横から見ると普通にファストバック、しかし斜め前から見るとリアフェンダー上部に“くびれ”があり、そこが格好良いポイントのひとつと思えるのだが、このくびれがフジミ製ボディには不足しているように感じられたからだ。具体的には、クオーターウィンドウ周囲に切れ込みを入れて内側に押し込み、プラ材を挟んで再接着し周囲をパテ埋めの上、削って成形している。
さらにA、Bピラーの湾曲ぐあいも足らないようなので、これも微妙な曲線になるよう手を加えており、これに伴ってフロントウィンドウの形状も丸みを帯びた形に改めている。ボディにモールドされた窓枠は埋めて成形し、丸みを帯びた形にナイフで削り拡げ、プラ棒を貼り込んで窓枠を再生した。フロントウィンドウはキットのパーツを削り込んで密着させることでそのまま使用できた。
しかし、こうしたキャビン周りの改修まで含めるとボディのかなりの部分の形をいじることになるので、これを避けたい方は前後オーバーハングの延長を行うだけでも、かなり印象が変わるだろう。ぜひ参考にして頂きたい。