不思議なスタイリングにも理由はあった
”クジラ”クラウンの愛称で知られる4代目クラウン(S60/70型系)は1971年2月にデビューしたが、同年登場のセドリック/グロリア連合軍にセールス面で惨敗を喫したことでよく知られている。その失敗は、モデルサイクルの4年を待たず3年半ほどで次世代へとモデルチェンジしてしまうほどの痛手であった。その理由が、“スピンドルシェイプ”と呼ばれた独特のボディフォルムにあったことも、広く知られた話であろう。
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保守的な高級車ユーザーには容易には受容しにくい、先進的すぎたスタイリング”スピンドルシェイプ”だが、当時のトヨタの弁によれば、これは何よりも「安全」をイメージしたものであったという。つまり、カドのない丸みを帯びた形=人を傷つける尖った部分を持たない、ということである。とはいえ、当時のスタウトやハイラックスにも通じてしまうイメージの二段グリルや、まだ一般的でなかったカラードバンパーなど、別の意味で”尖った”スタイリングになってしまったようだ。
またこれには、クラウンのもうひとつ大事なお得意先である、タクシー業界からの反発も強かったという。スタンダードまでカラードバンパーを採用していたため、事故・損傷時の修理コストが嵩むから、というのがその理由だ。独特のスタイルによる車両感覚の掴みにくさもまた理由のひとつだという。反面、スタンダードですら砲弾型フェンダーミラーやリアガーニッシュも装備されるなど、全モデルがゴージャスな外観となっていたのは特筆すべき部分だ。
この4代目クラウンは、ブランド名がトヨペットからトヨタに変わったのもポイントであった。型式名はS60だが、トヨタは型式の頭を搭載エンジンを示す文字とするので、例えばスタンダードでは4気筒の5R型エンジンを搭載しているため、RS60となる。中級・上級のモデルでは6気筒のM型エンジン(M-C型/M-D型)のため、MS60だ。一般的にはこの世代のクラウンのことをMS60として認識している人が多いだろう。2ドア・ハードトップはS70、バン/ワゴンはS66となる。
機構面では先代S50型系を継承し、ペリメーターフレームのシャシーに前ダブルウィッシュボーン/後ろ4リンク+コイルのサスペンションを持つ。前述のエンジンはすべて2Lだが、1971年5月には2.6Lの4M型搭載車を3ナンバー・モデルとして追加。1973年10月にはマイナーチェンジを行い、前後バンパーをメッキとし、Cピラー根元にプレスラインを入れるなど(セダンのみ)、スタイリングをいくらかでもシャープに見せようという努力が行われている。そして1974年10月にはフルモデルチェンジで5代目へと生まれ変わったのである。
共通シャシーの弊害でちょっと小さいボディを拡大!
クジラクラウンについては、ミニカーの数こそ多いものの、プラモデルについてはおそらく旧ヤマダのものが唯一と思われる。金型を引き継いだ童友社からこのキットはリリースされていたが、長らく絶版であった。だが2022年、久しぶりの再販が童友社からアナウンスされているので、ぜひとも入手しておきたいところ。このキットは2ドア・ハードトップのSLを再現したもので、上げ底内装を持つ、いかにも古いキットと思わせる内容が特徴である。
キットのボディは実車の特徴をなかなか上手く捉えたもので、非常に好感が持てるもの。ただし、シリーズで共通のシャシーに合わせて設計されているので、ボディが小さいのが、人によっては難点であろう。スケール的にはおよそ1/25~26というところである。ここでお見せしている作品は、このヤマダ/童友社のキットをベースに、大きさを正確な1/24に拡大し、さらに左右ドアを開閉式としたものだ。
作者・森山氏の分析によれば、ヤマダによるキット設計はおそらく、まず初めにきちんと1/24スケールで行われ、そのあとで、共通シャシーに合わせるためにあちこちの寸法を詰めて、辻褄を合わせたのではないか、とのことだ。そのため、縦方向の寸法などまで拡大する必要はなかったという。この分析に基づく激しい工作内容については、制作中の写真にキャプションとして付しておいたので、参考にしていただければ幸いだ。
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