あえて特別なことはしない
その作業時間は、実際、とても短いものだった。降ろすといっていたエンジンは、ラジエターグリルやラジエターそのもの、ホース関連やケーブル関連をエンジンから切り離すと、チェーンブロックをガラガラと操作して、アッという間に降ろしてしまう。そのままクラッチのオーバーホールに入って、それが終われば、ヘッドカバー・ガスケットとカムシールの交換、ウォーターホース交換、ディストリビューターの交換とサッサカ進んでいったのである。
一方では、梅原メカがブレーキ関連、サスペンション関連の交換作業を展開する。ふたりの手にかかったなら、ゴルフを復活させる作業はいうほど難しくもなく、時間がかかるものでもない。
コックススピード神戸が、ゴルフに造詣の深い整備工場であることを改めて認識したのは、例のヒーターボックス・空調フラップの修正作業だ。それは、ヤナセがフォルクスワーゲンの輸入元であった頃のやり方そのものだそう。
ダッシュボードは外すことなく、しかし、ヒーターボックスは取り出して空調フラップにウレタンを貼り直すというものだった。それは、作業時間の少なさ、その完成度からいっても、まったく文句のない、いかにもヤナセ時代からの伝統的な修正方法と思えた。
さて、残る外観を整えるという作業は、アッサリと終わった。小林さんがいつかそんな時がくると信じて(?)、長くストックしていたものが陽の目を見たのである。ABTマーク付き2灯グリルは、GTI用の赤枠付き4灯グリルに交換され、欠品があったテールのエンブレムも補充される。塗装面の小さな傷は別にして、外観はなんということもなしに整ってしまった。最後の最後、ホイールがBBSの15インチに換装されると、そこには見事に蘇ったGTIがあった。
小林さんの、GTIをさりげなく乗るための、あえてなにも特別なことはしない“リフレッシュ大作戦”は、ここに無事終了。
「クルマを速くするチューニングもボクらの仕事やから、もちろんやらしてもらいますけど、ゴルフのGTIやったら、ノーマルのままでも十分楽しめるんとちゃいます? キチンと整備しとったら、それはもう、気持ちよう走れますから」
小林さんのこんな言葉が耳に残った……。
取材協力=コックススピード神戸 TEL 078-843-2900
ポート:小倉正樹/フォト:柴田幸治
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