GLEはコテコテのアメリカンSUV風味
好きか嫌いかと聞かれたら答えに困る。というのは、GLEクーペの乗り味は、昔流行ったフレーム構造のSUVを思い出すほどゆったりとしているからだ。一見オヤジ世代に向いているモデルかと思うが、外観やエンジンなどはスポーツを意識している。つまりGLEクーペが採用する4ドアクーペのデザインとAMG風味のV6ターボは、いかにもホットなSUVを示すコンテンツではあるが、実際のハンドリング性能とは似合わない。ステアリングを切るとキャデラック・エスカレードを思い出し、スロットルを踏むとBMWのX6のように鋭く加速する。どうみてもマーケットリサーチから生まれたモデルだと思った。
それでも安全性には細心の配慮を行っている。例えば高速でステアリングを切ると、手応えがズシッと重く感じる。あえて重くすることでステアリングを切りすぎないように工夫しているのだ。しかし、同じ2.3トン級のSUV、たとえばポルシェ・カイエンやBMW X6と比べると、ダイナミック性能に不満は残るので、ハードウエアの基本性能を高めてもらいたい。だが、新型Eクラスの比類なき完成度を考えると、次期GLEは爽快感溢れるハンドリング性能が提供されるはずだ。
対するジャガーFペイスは、当初BMWのX3をベンチマークとして開発されていた。しかしその後、ポルシェ・マカンが登場した。開発陣はこのままではマカンの後塵を拝する恐れがあると、急遽ターゲットを変更。マカンを超える運動性能を実現することに専念したという。その甲斐があって、ガソリンエンジンを積むFペイスは、驚くほど完璧なダイナミクスだ。
ジャガーもSUVを作る時代になったと思うか、ジャガーにSUVを作らせたらどんなSUVになるのかと期待するか。両方の考えがあると思うが、私は後者だった。ポルシェ、BMW、ジャガーと走りを得意とするブランドが作るSUVのポテンシャルは、期待を超えてくる。近い将来はアルファ・ロメオのSUVも登場しそうなので、このセグメントの競争はより激しいものになるだろう。
Fペイスは、実用性と走行性能を高いバランスで維持した、SUVの新しいスタンダードを作ったと言えるかもしれない。高級車メーカーとスポーツカーメーカーのDNAを持っているし、新世代に移行したジャガーの一貫性を十分に感じることができた。そうした意味で、このFペイスは現ジャガーの集大成と言ってもいいだろう。
ところがGLEもFペイスも、このままで良いとはいえない時代がやって来ている。私の感覚では電動駆動(ハイブリッド)やオートパイロット(高度な運転支援システム)が備わっていないクルマは、携帯電話のガラケーになってしまう懸念もある。スマホのようなトレンディなSUVだと思わせるには、これらの機能は不可欠。ユーザーは時代の変化に敏感だということを忘れてはいけない。
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