中国の販売減や開発費用増加が利益に影響。ダイムラーは利益が3割減に
2017年の好業績に対し、やや曇り空に変わりつつあった2018年の欧州メーカー業績だが、予想通り明暗が分かれる結果になった。世界販売台数は各メーカーグループともに前年比プラスを維持したが、伸び率は明らかに鈍化。台数がひとケタ小さいボルボは初の60万台超えで勢いを保っているが、巨大メーカーグループで5%を超えたのはオペル/ボクスホールを傘下に収めたPSAグループのみ。中国市場での台数減などが影響したものと思われる。
その販売台数増を受けて売上高は各社とも伸びているが、ルノー・グループは唯一のマイナスとなっている。カルロス・ゴーン元会長の逮捕は直接関係ないだろうが、売上高減は6年ぶりのことで、欧州でのディーゼル車の販売減、モデル切り替え時期を迎えたインドや中国での減少が響いた模様。利益に関しても日産の減益が株価に影響し、さらにアルゼンチンの金融悪化などがマイナス要因となったとしている。
ドイツメーカーは販売台数世界一の座を守ったフォルクスワーゲン・グループは、売上高が2358億4900万ユーロ(約29兆9500億円)と、昨年度のトヨタの売上高をちょっと上回るレベル。為替レートの違いがあるので単純には比べられないが、売上高においても熾烈なトップ争いを繰り広げていると見ていいだろう。営業利益はほぼ横ばいと厳しい状況を物語るが、純利益はプラスを保ち、中国での販売減など逆風が強まるなかでもトップメーカーの強さを示した形だ。
一方でダイムラー・グループは売上高はプラスを保ったものの、利益は大幅に減少。米中貿易摩擦による中国市場の減速に加え、欧州でもディーゼル対策や新排ガス・燃費基準WLTPへの対応、電動化などの費用がかさみ、純利益は3割近く減少。2019年はどこまで取り戻してくるのか、興味深いところだ。
フランスメーカーはルノーに関しては前述の通りだが、PSAグループはオペル/ボクスホールの買収効果が続いており販売台数だけでなく売上高、利益ともに大幅増。ドイツ勢やルノーとは対照的な結果となった。金額ではドイツのプレミアムメーカーにおよばないものの、SUVブームを受けた欧州では販売台数が30%以上上乗せとなり、中国や南米、アフリカの販売減をカバー。新排ガス・燃費基準WLTPへいち早く対応したこともプラス要因だったと分析している。
FCAは欧州に本拠を置きながらジープなど北米ブランドも持つ特殊な企業だが、欧州ではフィアットやアルファ・ロメオが苦戦する一方でジープが大幅に増加。さらに北米ではラムトラックが車名別ランキングで3位になるなど人気が高く、北米ブランドが後押しして売上高、利益ともに増加。グローバルメーカーとしての存在感を高めている。
そして販売台数、売上高は小さいが高い伸び率が注目されてきたボルボは、ここにきて利益が減少。販売台数は過去最高ながら価格競争の激化や中国の関税アップなどの影響を受けたと思われる。世界的に人気が上昇しているボルボだが、2019年は利益確保に向けてどういう施策をとってくるのか注目したい。
米中貿易摩擦や英国のEU離脱など、世界経済の不安定要素が消えないなか、2019年は、欧州メーカーはどういうロードマップを描いて進んでいくのか。目が離せない状況が続きそうだ。