フォルクスワーゲン・ゴルフといえば、輸入車のなかでは飛び抜けて知名度が高く、記号性すらあるビッグネーム。今回は最新の8世代目を走らせて、ゴルフの凄さ、強さはどこにあるのかをあらためて考えてみた。
ゴルフをゴルフたらしめているものとは?
学生時代に運転免許をとって、はじめて手に入れたクルマが中古のゴルフⅡだった。3ドアのマニュアルで、あちこちがまあまあくたびれてはいたけれど、仲間を乗せてのスキーやキャンプ、彼女とのデート(いまの奥さん)などなど、いつでもどこへでも一緒に出かける気の置けない相棒だった。
あれから約35年。
すでに日本導入から2年以上が経過した、現行のゴルフⅧヴァリアントに乗る機会を得た。初代誕生以来、時代や嗜好、社会環境の変化に合わせてサイズとクオリティをアップ、文字どおり世界のコンパクトカーのベンチマーク、メートル原器であり続けてきたーーというのは、ゴルフを語るときに使われる常套句だが、個人的にはゴルフはゴルフ、あるいはゴルフという乗り物であって、コンパクトカーだとかCセグメントというカテゴリーを超えた存在だと思っている。もちろん、ゴルフに追いつけ追い越せと世界中の自動車メーカーが高水準のコンパクトカーを送り出してきたのは事実だが、結果的にそのどれもがゴルフの後塵を拝してきたというのもまた事実だ。ほかに量産モデルでこうした突き抜けた存在は、メルセデス・ベンツSクラスとポルシェ911、レンジローバーくらいだろうか。
では、ゴルフをゴルフたらしめているものとはいったいなにか。それは、わかりやすくいうと、「走る」「曲がる」「止まる」というクルマの基本性能を、実直に磨き込んできたがゆえの懐の深さに尽きる。さっと乗り込んですっと走り出せる扱いやすさ。どんなときにも過不足のないエンジンパワー。路面の様子は正直に伝えてくるものの、なんら気分を損なうことなく余裕綽々のシャシー。ステアリングを大きく切り込んでも、ごく自然で無駄のないボディの動き。ポンコツのゴルフⅡからすれば、高品質な内装は隔世の感すらあるし、8世代目で一気にデジタル化が加速したインターフェイスには戸惑う部分も少なくないが、まあそこはドライバーがアップデートすればいいわけで、モダンにはなったが、居住まいのよさは相変わらずゴルフだ。
今回の試乗車は2L TDI、直噴ディーゼルターボを積むヴァリアントということで、さらなる快適性までも手にしていた。アクセルペダルをちょんと踏み込むだけで力が漲っているのは伝わってくるし、スムーズで息の長い加速フィールは、どこまでも走っていきたくなる衝動にかられるほど。ゴルフのステーションワゴンとしては、はじめてホイールベースを延ばした専用ボディにより、身のこなしはどこか落ち着いていて、乗り心地もしなやか。ハッチバックに比べて後席スペースにゆとりを増しているから、コーナーの連続でも家族や仲間に過大な気遣いはしなくていい。
ゴルフを手にしたら、きっと毎日乗りたくなる。懐の深さとは、つまりそういうことだ。
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