ナイトシーンで映えるよう白くリペイントされていた
フェラーリ・テスタロッサ(1984-1992年)とその1/24スケール・プラモデル、そして『特捜刑事マイアミ・バイス』仕様で制作した作例については、前編の記事(下の「関連記事」参照)ですでに触れたが、ここでは作者・Ken-1氏による文章(作例発表時の「モデルカーズ」誌238号に掲載されたもの)をお読みいただきたい。
【画像39枚】アメリカ製キットのフェラーリを美しく仕上げたその工程を見る!
「ネオンあふれる夜の雑踏の中をクルーズするフェラーリ……それが今回の刑事車(デカシャ)特集のお話を頂いた際、一番に思い出したシーン、『特捜刑事マイアミ・バイス』の白いテスタロッサでした。そのテスタロッサ以前、主人公2人の愛車であったデイトナは、コルベットがベースのレプリカで、それを見たフェラーリ社は撮影用に本物の「フェラーリ」を使ってくれと、テスタロッサと贈呈したんだそうです。
さらに今回制作するにあたって知ったのですが、そのテスタロッサのボディカラーはブラック。しかし「夜のシーンに映えない」ということで白にリペイントされたのだとか。なるほどその判断のおかげか、確かに僕の印象も、夜陰にひときわ存在感を放つ白いテスタロッサでした。
さて、モデルキットの世界ではテスタロッサと言えばタミヤが真っ先に思い出されます。今回もタミヤをベースに白いテスタロッサを……となるかと思ったのですが、そこはさすがモデル・カーズと言うべきか、モノグラム/レベルのテスタロッサを使うことに。こちらからは都合よく『マイアミ・バイス』仕様のキットが出ていますので、ストレートなチョイスとも言えますが……とはいえ、劇中ナンバーのデカールが入っているだけですけどね(笑)。そんなわけで、模型誌作例としてはあまり見かけないモノグラム/レベル版テスタロッサの制作です。
単体では違和感のあったボディ……しかし完成すると実に格好良い!
第一印象は、これ、似てなくない……? タミヤ、そしてフジミ(後継車の512TR)と比べてずいぶんアクの強いアレンジを加えられたボティに戸惑います。あるいは逆で、こちらの方がむしろディフォルメなしなのでしょうか? いつもなら実車画像とにらめっこして検証していくのですが、今回はあくまでレベモノの個性を生かしたまま仕上げようという事で、まったくの素組みです。
しかし、そこはやはり海外キット。素組みと言えども徹底した仮組みとパーツの面出し、擦り合わせの確認は必要です。プラの材質自体も全体的にしなやかで柔らかく、固めの素材に慣れている日本のモデラー(僕)にとっては違和感が。ボディとシャシーの合わせは素材の弾性でくるむような独特なもの。全体の組み上がり感もかっちりとはしておらず、ただ組むだけではダルな仕上がりとなりますので、仮組みの際、接着固定ポイントの割り出しと確実な固定を意識していきましょう。
しかし逆に言えば、姿勢決めなどはモデラー側に決定権があるので、上記の点を意識すれば見違えるほど締まった仕上がりとなります。そして柔らかめの材質のせいか、表面モールドが豊かで、ウェザリングなどのアクセントを少し加えるだけで素晴らしい表情となります。
今回のキーとなるボディカラーは、真っ白ではなく、ほんの少し極微量の青と黄を混ぜています。おかげでボンと浮いたようなホワイトではなく、どこか夜の闇を感じさせるボディカラーとなった気がしますが、いかがでしょう? モールド類のブラックも真っ黒ではなく黒に近いグレーにすることで、チカチカと玩具っぽくなりがちな白と黒のコントラストが押さえられ、落ち着いた仕上がりとなります。
こうして出来上がったテスタロッサを眺めると、これがなんともかっこいい! 最初は違和感のあったボディが、出来上がるにつれだんだんと、そして仕上がるとこれ以上なく格好良く見えてくる不思議。実車と比べてちょっとつり上がったようなお目々と、広がりの足りなさを感じたリアまわりでしたが、しかしこれらをひとつのモノとして捉えると、むしろよりバランスが取れ、似ている以上の存在感となって現れるんですよね。
まるでマジックのような驚きをもって、模型にとっての『似てる』とは何かを教えてくれたテスタロッサ。地味に苦労させられましたが、それは模型好きにとって面白く、プラモデルの楽しさを再発見させてくれるキットでした」
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