F40のプロトタイプともなったモディファイドGTO
1984年にデビューしたフェラーリ288GTOは、当時のグループBでの活動を想定して開発されたものと言われており、実際にホモロゲーションも得ていたが、WRCはすでに四輪駆動が主流となっていたこともあり、モータースポーツでの活躍はないままに終わった。それでもフェラーリは、実戦への投入を念頭に様々なモディファイを行い、テストを繰り返した。そうした活動の結果として6台が生産されたとされるのが、288GTOエボルツィオーネである。
このエボルツィオーネでは様々な部分にコンペティションモデルとしての見直しがなされ、結果として、後のF40のプロトタイプ的な役割を担ったとも言われている。「288」の名が示す通りの2.8L V8エンジンを縦置きミッドシップに搭載、このエンジンはDOHC32バルブにターボを2基組み合わせたもの――というのはベースのGTOと同様だが、ターボチャージャーを大径化するなどの変更が加えられ、最高出力は406psから650psにまでアップしていた。
ベースの288GTOよりさらに迫力のある外観を持つが、実際にフェンダーの張り出し幅は増え、逆に全長は65mm短縮されている。このボディは軽量なカーボン樹脂製で、前後のデザインはGTOとは全く異なるほか、リアには角度調節可能なウィングを装着。ボディ各部、特にリアはスリットだらけだが、さらにNACAダクトがあちこちに設けられているのも特徴だ。
この288GTOエボルツィオーネ、「異形」と言っても良い凄味の利いた外観からミニチュアの世界でも人気であるが、プラモデルは存在しないようだ。ならば、とばかりに、フジミ1/24の288GTOをベースに制作してしまったのが、ここでお見せしている作品である。288GTOだけでなく、実車の性格からヒントを得てF40(こちらはタミヤ製)も使用し、このふたつの”ニコイチ”での制作となったのだが、かなり大掛かりな作業となり、実際にはセミスクラッチに近い改造であったようだ。
288とF40のボディを合体、不足部分はパテで造形
前述の通り使用したのはフジミ製288(赤のボディ)とタミヤ製F40(白のボディ)。ボディサイドの形状はF40に近いので、画像のように288のボディを切り抜き、F40から当該部をハメ込んだ。リアオーバーハング下部は切除し、F40のシャシーも後端を切り詰めておく。
フロント部分はフードこそF40から移植したものの、その他はほぼ自作。ノーズ先端を切り落としてからプラ材で基礎を作り、エポキシパテを盛って形を削り出した。ドライビングランプの枠やスリットの類はプラ板を箱状に組んだものをハメ込み、グリルは金属板のハンダ付けで自作。
リアフェンダーもフロント同様プラ材で基礎を作り、エポキシパテを盛りつけて成形。リアカウル上面のダクトはF40から切り出し、側面のスリットはプラ材で自作したものをハメ込む。リア周りは図面を元に制作、プラ棒を組み合わせる形で作っていった。ダクトの丸いコーナー部は、瞬間接着剤のノズルを用いて造形(瞬着がくっ付かないので)。なお、この図面ほか、作例の制作にはレジンキットメーカーSMP24のN氏の協力を多々戴いたとのこと。
角度調整式のリアウィングはプラ板を使った自作品、エンジンフードのプレクシグラスは透明プラ板から切り出したものだ。移植したF40部分もそのままではなく、ドアのふくらみ方などに手を加えている。なお、モンテシェル仕様のF40を使ったのはドアミラーが流用できるから(ノーマルとは形状が違う)とのことだ。