14年ぶりにエンジンを大幅改良
アメリカが世界に誇る高級車・キャデラック。GMのフラッグシップたるこのブランドは数々の新機構を採り入れ、イージードライビングという面で自動車の発展に大きく貢献してきた。また戦後の一時期は、あのテールフィンの導入により、世界中の自動車にとってのスタイルリーダーであったと言ってもよい。
【画像12枚】ナイスプロポーションな1963年型クーペ・デ・ヴィルを見る!
テールフィンの絶頂期は1959年型であり、その後は徐々に小さくなっていく。1963年型は鋭角的なテールフィンが特徴だが、細部を変更した翌1964年型を最後にフィンは消滅している。あまり劇的なデザイン変化をせず微妙な変更を繰り返すのがキャデラックの常だったが、この1963年型で、1970、1980年代へと引き継がれるスタイリング・アイデンティティが確立されたと言える。四角く大きな格子グリルとそれに続くボンネット中央の盛り上がり、後端を縦型テールランプとしたプレーンな面構成のリアフェンダーがそれだ。
また1963年型で特筆すべきは、1949年の導入から半世紀近く使われ続けることになるOHV V8エンジンが、初の大規模な改良を受けたことである。全体の見直し・多くのパーツの再設計で約23kgの軽量化が図られたが、排気量は390-cid(6.4L)で変わっていない。このエンジンは翌年型で429-cid(7L)へと排気量を拡大することとなる。ホイールベースはリムジン以外の全モデル共通で129.5インチ(3289mm)であった。
1963年型のラインナップは、まずベーシックなモデルとしてシリーズ62があり、これには2ドア・ハードトップ、4ドア・セダン(実際にはハードトップ)、そしてコンバーチブルを用意。このうち4ドアには、4ウィンドウ(リアピラーが太い)と6ウィンドウ(リアピラーが細くオペラウィンドウを持つ、所謂6ライト・スタイル)の2種類があった。
このシリーズ62の豪華版、ラインナップ全体で言うと中間モデルに当たるのがデ・ヴィルで、こちらは2ドア・ハードトップ(クーペ・デ・ヴィル)、4ドア・ハードトップ(セダン・デ・ヴィル、こちらも4ウィンドウと6ウィンドウがある)、そしてコンバーチブルが存在。さらにデ・ヴィルのみに用意されていたのが、トランクを8インチ(20.3mm)短くして取り回しを良くしたパークアベニュー・セダン・デ・ヴィルで、これは4ウィンドウのみであった。
4ドア・ハードトップの最上級モデルはフリートウッド60スペシャルで、これも4ウィンドウであるが、リアピラーが太くリアウィンドウが小さく、シリーズ62/デ・ヴィルとは別の形のボディとなっている。パーソナル・ラグジュアリーカーであるエルドラドは、この年はコンバーチブル(エルドラド・ビアリッツ)のみ。そしてリムジン(および9人乗りセダン)のフリートウッド75が存在するが、このモデルのみは車体の基本構造が変わっていないため、フロントウィンドウが1959/1960年型と同じラップアラウンド・タイプとなっている。また、このほかに救急車などに用いられるコマーシャル・シャシーも用意されていた。
キットの素晴らしさを損ねぬよう極力配慮して制作!
さて、テールフィン華やかなりし頃のキャデラックのプラモデルと言えば、レベル/モノグラムの1959年型エルドラドが思い起こされるが、その他のキットというのは少ない。1/24~25スケールのキットに限定すれば、同じくレベルの1957年型エルドラド・ブロアムが昨年(2021年)アトランティスモデルからリリースされており、またマイクロエースからも1958年型エルドラドが久しぶりに再販されているが、それ以外に現在容易に入手できそうなキットはないだろう。
新車当時のプラモデルはかつてのJO-HAN(ジョーハン)が手掛けており、1959年型から1979年型までのキットがあった。もちろん現在は全て絶版であり、いずれも貴重なレアキットとなっているが、ここでお目にかけているのは、そのうちの1963年型クーペ・デ・ヴィル(No.2363)を制作したものである。同年型のデ・ヴィル コンバーチブルもキット化されており、こちらはNo.4363となる。
いずれも当時らしく3 in 1キットで、カスタムパーツが盛りだくさんの内容となっている。なお、この1963年型は金型改修によって1964年型に改められたため、キットは当時モノ(アニュアル・キット)しか存在しない。1970年代に再販があったため絶版キットとしては見かける機会の多い1964年型と比べると、極端にタマ数が少ないのは、これが理由である。再販の1964年型では、カスタムパーツは一掃されている。
当然制作したのも1963年当時の品であるが、この年からジョーハン製キットのディテールやモールドは格段にシャープさを増し、現在でも充分通用するクオリティとなった。プロポーションは素晴らしいのひと言に尽きる。パーティングラインやヒケの修正以外は、このボディをそのまま最良の状態で仕上げることを作例の目標とした。特にテールフィンのパーティングラインを落とすときは、全体のラインを崩さないように注意が必要だ。
さすがに経年によるものか、プラスチック素材は非常に硬く割れやすくなっており、下地までの段階でテールフィン先端は3回ほど欠けてしまった。ドアノブとボディとの隙間を抜く作業も、このためこの作例では控えている。クレオスのサーフェイサー1000を薄く溶いて1回だけ吹き、下地は終了。車高は4段階にセットできるようになっているが、どれも今ひとつしっくりこない。実車の写真を参考に、トレッドとともに最も自然な位置に調整した。ホイールベースに関しては問題ないようである。
ボディカラーは1963年の純正色「Fawn Metallic」、カラーコード46、いわゆるシャンパンゴールドである。クレオスのC8シルバーをベースに藤倉応用加工のメジャムイエロー(ホワイトを含まない調色用の黄色)、レッド、ブラックで調合した。これを極力厚塗りにならないよう2回程度吹き、クリアーコートも必要最小限に抑える。磨き出しはほとんどペーパーを使わずにコンパウンドのみで仕上げ、研磨中はエッジになるべく触れないようにした。
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