あらかじめ失敗を約束された高級車
オーストラリアのホールデン・プレミアーをベースに、ロータリーエンジンを載せた高級車マツダ・ロードペーサー(正しくはロードペーサーAP)と、それを1/24スケールで再現したフルスクラッチ・モデルについては、前編でもお伝えした。ここでは、その制作法についてもさらにお伝えしていこう。
【画像98枚】寸分の隙もない1/24ロードペーサーと、その制作工程を見る!
このロードペーサーを手掛けたマツダだけでなく、同様に豪州製セダンを輸入して高級車として販売した三菱やいすゞにとって、そのメリットは、開発費を抑えることができることだった。当時、ショーファー付き3ナンバー高級車の市場はトヨタ(センチュリー)と日産(プレジデント)のみが占めており、メーカーとしての規模を拡大するにはここに打って出ることが不可欠、しかし体力に欠ける会社にはそれが難しかったのである。高級車市場はそもそもの販売数が多くはないため、市場が拡大傾向にあるとしても、負担が大きいのだ。
ロードペーサーの場合、マツダとしてはこのクラスの高級車が、通常の1/30の予算で開発できてしまう計算であったという。とはいえ、ロードペーサーがデビューした1975年には、そこに吹く逆風もすでに明らかであった。高級車市場の拡大が見込まれのは高度経済成長に乗ってのことであったが、1971年のニクソンショック(単一為替レートの終焉)と、1973年のオイルショックによって、その経済成長も終局を迎えていたからである。それでもロードペーサーがデビューしたのは、すでに計画を止められる状態ではなかったためであろうか。
すでに三菱クライスラー318といすゞステーツマン・デ・ビルは販売不振を極め、特に前者は1974年で販売を終了していた。ロードペーサーは月販100台を目標としたものの、前編で述べたようなパワー不足・燃費の問題も相俟って、発売当初から実績は80台、20台と、ジリ貧にも程がある状態であった。こうしてロードペーサーは発売後4年少々の1979年に販売を終了している。
そのフルスクラッチ・1/24モデル化は大成功!
さて、すでに述べたように、ここでお目にかけている作品はフルスクラッチモデルである。自動車の模型を完全に自作しようという場合、そのボディを作るにはいくつかの方法が考えられよう。形の似た別のクルマのキットを使い、それをベースに切ったり伸ばしたり、パテを盛ったり削ったりで造形していく方法。また、木型を削って原型を作り、これを元にプラ板でヒートプレス、できたものをパートごとに分けてつなぎ合わせて成形する方法。あるいは単純にプラ板で側面や上面など面ごとに作り起こし、それを箱状に組み立てる方法。
この作例で採った手法は、いま最後に挙げた方法が一番近いが、それでも一風変わっており単純なものではない。それは内側の骨格を作り、その外側にプラ板でボディを構築していくという方法である。まず実車図面を元に内側の骨格(内骨格)を組むのだが、と言ってそれほど複雑なものではなく、実車図面の上面図と側面図を利用し、それぞれの形にプラ板を切り出して、工作のガイドとなるように接着したものだ。これによって歪みや破損を防止でき強度を稼げるのだが、ボディが出来上がったらこの内骨格は切除してしまう。詳しくは、前編と併せて工程写真とキャプションを御覧頂くとより分かりやすいだろう。
最後に作者からひと言。「プラモで育ち40数年、モデラーを名乗るからにはボディも自作できるようになりたいと近年考えていました。初の自作がロードペーサーとはなかなか無謀でしたが、完成した今では、多少ムリ目な目標設定の方がその後の血肉となる気がしています。主要諸元の数値とはデザインを数字に置き換えたものでもあるので、それさえ守れば自然と実車に似た模型になるはずと思います。今は、プラモで存在しない車種を色々作ってみたいという考えに、シフトしつつあります」
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