sphereシリーズの堂々たる3作目
アウディはコンセプトカー「Audi urbansphere concept(アーバンスフィア コンセプト)」を発表した。このコンセプトカーのデザインは、インテリアから始め、それに引き続きエクステリアを設計するという手法が体系的に採用されているという。また、主に中国のメガシティを走行することを想定して製作したとのこと。
このアーバンスフィアは、「skysphere(スカイスフィア)」「grandsphere(グランドスフィア)」(どちらも2021年発表)に続く、sphereシリーズの3作目。このシリーズはアウディが未来のプレミアムモビリティを示すためのものだが、アーバンスフィアはその中で(ひいては過去のアウディのコンセプトカー全ての中で)最大のもの。全長5.51m/全幅2.01m/全高1.78m、ホイールベース3.40mというそのサイズは、前述のように乗員を中心に据え、デザインをインテリアからスタートさせたことによるという。これにより従来の常識(限られたスペースにできるだけ多くのシート、収納スペース、機能を詰め込む)に捉われずデザインできたとしている。
また、このアーバンスフィアは、ドライバーを可能な限り運転操作から解放し、すべての乗員に独自の体験の選択肢――コミュニケーション、リラクゼーション、仕事、プライベート――を提供する、単なる自動車でなく画期的な体験のためのプラットフォームであるという。
独自のオプションと他のプロバイダーからのデジタルサービスを統合した機能により、その可能性はほぼ無限大――ディナーの予約やオンラインショッピングなど日常のタスクも処理、自動運転にも対応、自動的に駐車スペースを検索して、バッテリーを充電したりすることも可能だとのこと。普段利用している音楽や動画配信サービスと車載ストリーミングサービスをリンクさせるなど、カスタマイズされたインフォテインメント機能も利用でき、さらに次の段階として、コンサートや各種イベントなど、ラグジュアリーカーユーザーに特化した専用のオプションを提供することも、将来的に視野に入れているという。
sphereシリーズでは、アウディは乗員を取り巻く空間を「sphere」(スフィア=球)と呼び、インテリアをデザインの中心的要素に据えている。この新世代のクルマでは、開発要件リストの上位に来るのはパワートレインではなくインテリアで、これがデザインとテクノロジーの基盤になるという。このような価値観の移行の結果として、デザインプロセス自体も変化。インテリアを基盤として、パッケージ、エクステリアのライン、プロポーションが設計され、技術仕様が決定された。
空間、形態、機能――インテリア
アーバンスフィアにBピラーはなく、ドアは観音開きで乗り降りが容易。外側に回転するシートと、地面に投影されるレッドカーペットが、クルマに乗るという単純な行為を快適かつ魅力的に演出するという。インテリアは最高品質の素材で構成された居心地の良い空間で、パネル、シートカバー、フロアカーペットには、高品質な感触と手触りの良さを備えたウッドやウール、合成ファブリックなどを採用。ソフトなベージュとグレーの色調が全体を構成、シートシェルは控えめなダークグリーンで落ち着いた雰囲気だ。
1.78mのヘッドルームと大きなガラス面積を持つ広大な室内空間には2列・4座のセパレートシートを配置、乗員に「豪華なファーストクラスの快適性」を提供する。リヤシートには特に余裕があり、リラックスモードとエンターテインモードでは、背もたれを最大60度まで寝かせ、レッグレストを伸ばすことも可能だ。
シートを回転させて向き合わせ会話を楽しむことができる一方、乗員がプライベートな空間を欲する場合は、ヘッドレスト後方に取り付けられたプライバシースクリーンで頭部エリアを隠すことができるとのこと。各シートにはヘッドレストにスピーカーを備えた独自のサウンドゾーンが設定され、フロントシートの背もたれにはディスプレイも内蔵。乗員が一緒に楽しむ場合には、1列目と2列目シートの間に大型の透明OLEDスクリーンを設置できる。インテリア全幅を占めるこの「シネマスクリーン」を利用して、リヤシートの2名が一緒にビデオ会議に参加したり映画などを鑑賞することが可能。画面を分割することもできる。このスクリーンは透明なため、使用していないときはそのまま前方を通して見ることが可能。ルーフに折りたたんでもガラスルーフを通して空を見上げることができるという。
リヤシートの間には、上向きに回転するセンターコンソール(通常は低い所定の位置にロック)を設置、ウォーターディスペンサーとグラスが装備されている。中国のユーザーとの共同製作で生み出されたデジタルオプションにより、車内はリラックスして過ごすことができるウェルネスゾーンとしても機能、ストレス検知機能はその代表的な例だ。フェイス スキャン(表情の読み取り)と音声分析で乗員の気分を判断し、個人用スクリーンとヘッドレスト組み込みのプライベートサウンドによる瞑想アプリを使用するなどで個別のリラクゼーション機能を提供するという。
レス・イズ・モア――ディスプレイと操作系
ディスプレイはフロントウィンドウ下のウッドパネルに表示。ステアリングホイールを使用する手動モードと、レベル4の自動運転とを選ぶことができるが、どちらの場合もディスプレイは、インテリア全幅いっぱい、あるいは運転席および助手席間で分割表示される。自動運転時にはステアリングホイール、ペダル、ダッシュボードが格納され、広々とした雰囲気に。走行中に必要なすべての情報を超高解像度で表示、投影面の下にはセンサーバーが一体化され、音楽再生やナビゲーションなどコンテンツを素早く切り替えられるという。
ドアトリムにはMMIタッチレスレスポンスを装備、回転するリングとボタンを介してメニューを選択しクリックすることで、各種機能を簡単に操作できる。背もたれを倒した状態ではアイトラッキングおよびジェスチャーコントロール機能を組み合わせて使用。眼に向けられたセンサーが乗員の視線を検知してコントロールユニットを作動、乗員はそのままの姿勢でジェスチャーするだけで、手で触れずにシステムを操作することが可能だとのこと。
さらにアイトラッキング、ジェスチャーまたはボイスコントロール、タッチ機能など、すべての操作モードで各ユーザーに適応し、ユーザーの好みや頻繁に使用する機能を学習、その内容に基づいて基本的な機能を効果的に補うだけでなく、各ユーザーに個別の提案が行われる。コントロールパネルはドアのアームレストにも組み込まれており、タッチサーフェスが常に提供される。VRメガネも収納されており、ホロライドシステム等のインフォテインメントデバイスと組み合わせて使用することができるという。
インテリアは持続可能性にも配慮。シデや竹といった自然素材、エコニール(リサイクルポリアミド)などが使われている。
エクステリアデザインのコンセプト
アーバンスフィアの流れるようなボディシルエットは、伝統的なアウディの形状と要素に、アジェイセントライティングユニット(デジタルライト)を備えたシングルフレームグリルなど、新しい要素を組み込んだもの。大きな弧を描くルーフライン、バッテリーユニットが収納された巨大なシルエリア、大径24インチのホイールといった要素は、1990年代に発表されたAudi Avus quattro(アヴス クワトロ)コンセプトカーからヒントを得たという。フロントおよびリヤには大型のデジタルライトを装着、これはコミュニケーションエレメントとしても機能する。
フロントエンドの特徴はアウディのアイデンティティであるシングルフレームグリルだが、ライト前面の広い領域をカバーするわずかに着色された透明なバイザーの後方には、デジタルライトを設置。シングルフレームの縦方向のラインはライト面の一部として、LEDによって形成。シングルフレーム表面全体がキャンバスとなり(「アウディライトキャンバス」)、さまざまなコミュニケーションに使用できるという。ロービームとハイビームはシングルフレームの外側セクションのライトセグメントで機能する。
非常に薄いヘッドライトユニットは「アウディアイズ」と呼ばれるもの。路面を照らす光は交通状況、周囲の環境、さらに乗員の気分に合わせることが可能。光軸は一か所に集中したり、開いたりすることが可能で、その輪郭も狭めたり広めたりできる。デジタルで作成された眉毛は必要に応じてターンシグナルとしても機能。その優れた視認性により安全性を大幅に向上させるという。
駆動・充電システムやサスペンション
アーバンスフィアが採用するテクノロジープラットフォーム、PPE(プレミアムプラットフォームエレクトリック)は、電気自動車専用に設計されたもので、前後アクスル間にバッテリー(容量約120kWh)を搭載。ギアボックスカバーやセンタートンネルが存在しないため、電気自動車特有の空間快適性が生み出せたという。モーターは295kWの合計出力と690Nmの最大トルクを発生する、2基の電気モーターを搭載。アウディのハイパフォーマンスモデルに不可欠なquattro 4輪駆動システムも採用されている。
駆動システムの中心的要素は800Vの充電テクノロジーで、急速充電ステーションを利用すれば、最大270kWの出力でバッテリーを短時間で充電することが可能。300km以上を走行可能なレベルまでバッテリーを充電する時間はわずか10分だという。120kWh以上の容量を備えたバッテリーは、25分未満で5〜80%まで充電可能で、1回のフル充電で最大700km(WLTP基準)の航続距離を実現。これにより、エネルギーを大量に消費する都市や短距離の走行に使用する場合でも、予期しない充電を回避することが可能だとしている。
フロントサスペンションは電気自動車専用に最適化された5リンク、リヤは同じく軽量アルミニウム製のマルチリンクを採用。4輪操舵システムにより、ロングホイールベースにもかかわらず優れた取り回し性を実現したとのこと。さらにグランドスフィア同様、アウディ アダプティブエアサスペンション(セミアクティブダンパーコントロールを備えたシングルチャンバーエアサスペンション)を搭載している。
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