美しいボディに迫力を付与した継ぎ接ぎパネル
フェラーリが現代的なスポーツカーメーカーとしての地位を確立するに至った契機と言えるのが、308GTBであろう。1975年にデビューした308GTBは、ピニンファリーナの手になる美しいボディに、3L V8 DOHCを搭載。ミッドシップにレイアウトされたこのユニットは2バルブながら255PSを発揮、最高速度は252km/hに達した。10年間で1万5000台を売り、排気量をアップした328、そして348へとV8フェラーリの系譜は連なっていったのである。V12モデルも依然としてフェラーリにとっては重要な存在であり続けたが、「V12でなければ……」という意識は、これによってすでに過去のものとなったと言ってよいだろう。
この308GTBをベースに、ピニンファリーナが1977年のジュネーブショーで発表したモデルがある。308GTB Mille Chiodi(ミッレ・キオディ)と呼ばれるテストカーがそれだ。Mille Chiodiとはイタリア語で「千本の釘」を意味する。308GTBの外装にアルミパネルをリベット留めして、エアロアップ&ワイドボディ化したのがその名の由来である。初期型308GTBの特徴であるFRP製ボディをアロイボディ風に装う視覚的トリックと、空力特性向上を目的とするスタディであった。
モディファイ部分のディテールには後の288GTOに通じるモチーフが見てとれるあたり、このプロポーザルの成立過程が垣間見えて興味深い。前後トレッドが拡大され、エクゾーストが4本出しに改められた以外、メカニズム面の変更は無いようだ。インテリアの一部は前年登場の512BBの部品でアップグレードされている。
ここでお見せしているのは、グンゼ(現GSIクレオス)が1980年代にリリースした328をベースに、このミッレ・キオディを再現した作品である。308GTBはマルイなどいくつかのメーカーからキット化されているが、いずれも絶版で、このキットも例外ではない。長らく再販はされていないが、流通が多かったのか、ネットオークションなどで比較的入手は容易である。
ドアが実車さながらに開閉し、シートはスライドとリクライニングが可能、エンジンも上部のみだが再現される。当時の1/24キットとしては異例にギミックの多い構成だが、シャシーはモーターライズであっさり済まされており、今の目で見ると意外に部品少なめで作りやすいキットだ。
フェンダーの造形と虫ピン大量植え込み!
ミッレ・キオディへの改造は、外装のシルバー部分(塗装なのかアルミ地肌なのかは不明)の追加が中心となる。作例では、フロントのエアダムと前後オーバーフェンダーは0.3mmのプラ板を基礎としてポリエステルパテを盛りつけ、削り出して造形した。実車の車体寸法は公表されていないようだが、仮に288GTOと全幅が同じだとすると308GTBとの差は190ミリ、スケール換算だと約4ミリだから片側あたり2ミリ拡大ということになる。
オーバーフェンダーと地のボディの境界線は彫刻刀で彫り込んで表現した。リアスポイラーはパテを直接盛りつけて造形。硬化不足からヒケや凹みを生じないよう、パテ部分には硬化剤をシンナーで希釈して筆塗りしておく。シルバーのパネルのフチに並ぶリベットは全部で約250本となったが、おそらく実車はもっと多いだろう。0.5mm径のドリルで孔を開け、塗装後に志賀有頭昆虫針(標本展翅針)の00号を植え込んだ。塗装の厚みで孔が小さくなることを見越してのドリル径チョイスだったが、実際はもう少し小さくてよかったようだ。
ルーフエンドのスポイラーはプラ板で自作、フロントグリルとバンパーはキット部品を改造した。また、実車のシート形状は308GTBと異なるようだが、詳細が確認できず、座面中央の溝の一部を埋めるだけに留めた。ダッシュボードはメーターパネルが512BBから流用されているので、フジミの同車キットの部品から切り取って移植。メータークラスター前側のドームはポリエステルパテで自作している。
イタリアンレッドとシルバーのコントラストが目にも鮮やかなミッレ・キオディは、模型映えという点で非常に面白い題材である。改造工作好きの読者の皆さんにも、ぜひトライしていただきたい。
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