フランス政府の介入にFCAが不快感。世界生産1500万台の巨大メーカーグループ誕生は幻に
世界の自動車業界を揺るがした提携劇が、わずか10日で幕切れとなった。FCA(フィアット・クライスラー・オートモビル)とルノー・グループの経営統合に向けた提携は5月27日に両社から公表され、両社の協議により話は前向きに進んでいるように見えた。新たに持ち株会社を設立し、その傘下にFCAとルノーが並ぶ形を想定し、出資比率は50対50を前提とするなど具体的なプランも示され、実現に向けて動いているというのが大方の見方だった。
ところが6月7日(欧州時間6月6日)にいきなり「FCAが統合案を撤回」というニュースが流れ、その後両社は統合協議が物別れに終わったことを発表。その理由としてFCAは、統合に際してフランス政府が取締役ポストの確保やフランス国内の雇用維持など、過剰に介入したきたことをあげている。
一方でルノーと提携関係にある日産自動車は、当初は統合を前向きに受けとめる姿勢を見せていたが、6月3日時点でやや風向きが変化。統合によるシナジー効果は期待できる半面、実現した場合はルノーの会社形態が大きく変わるため、日産とルノーの関係を見直していく必要があると明言。ある程度時間をかけて、分析と検討を慎重に進めていく考えを明らかにしていた。
そんな状況のなかでしびれを切らしたFCAは自ら申し入れた統合案を撤回。世界生産台数が1500万台におよぶ巨大自動車メーカーグループの誕生は幻に終わった。ただ、今までの日産とルノーのアライアンスの経緯を見ても、ルノーの経営に筆頭株主のフランス政府が口を出してくることはある程度分かっていたはず。そのあたりをFCAが読み違えたというか、見通しが甘かったという見方もできそうだ。
日米やドイツの巨大自動車メーカーに比べ、FCAやルノーは次世代電動化やコネクティビティなどでやや遅れをとっていることは否めない。FCAとしては電動化で一歩先を行く日産とアライアンスを組むルノーとの統合で、そのあたりを補完する考えもあったのだろう。しかし、競争が激化するなかで生き残りを図るにはそうした次世代技術は必須であり、協業を必要とする自動車メーカーは少なくない。次の提携、統合の火の手はどこで上がるのか。見極めていきたいところだ。
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