【比較試乗】ICEでもBEVでも“らしさ”は健在なのか?アウディが誘う“RS”ワールド「アウディRS 4アバント vs RS e-tron GT vs R8クーペ vs RS Q3」

アウディのハイパフォーマンスモデルである「RS」。その歴史の中でBEVのRS e-tron GTが加わったのは2021年のことだ。ここでは、ICEを搭載する既存モデルと、RS e-tron GTの4台を俎上に挙げ、“RSらしさ”を改めて検証してみたい。

確固たる歴史を築いてきたアウディのRSモデル

アウディの超高性能モデルを表す「RS」グレード。それはドイツ語でいうところの“Renn Sport”であり、1993年に登場したアウディ80ベースのハイパフォーマンスカー「RS2アバント」に由来している。ちなみにこれをアウディと共に手がけたのは、ポルシェだ。
それ以来アウディは各レンジのトップモデルに「RS」バッジを与えてきたわけだが、果たしてそのコンセプトとはいかなるものか?

ひと言で言えばそれは、「ウルトラハイパフォーマンスカーを、日常使いすること」だ。いまでこそこうした二律背反を楽しむ贅沢はプレミアムブランドの常識となったが、アウディはそれを30年以上前から実践していたわけである。
そして今回はこうしたアウディの哲学が現代にどう受け継がれているのかを、4台の代表的な現行モデルを集めて確かめてみた。
2016年に登場した二代目R8は、いまだその魅力が衰えない、まさにレンシュポルトの魂といえるスーパースポーツだった。

AUDI RS 4 AVANT vs AUDI RS Q3

走らせた途端に体感するのは、地面との近さだ。ワイドなスクリーンと低い着座位置が織りなすフロントビューは、圧巻のリアリティ。囲まれ感の高い、しかし決して窮屈さを感じさせないコクピットの中で小さなステアリングを握ってアクセルを踏み込むと、子供のように気持ちが盛り上がる。
その乗り心地は、同じDNAを持つウラカンよりもダイレクト。タイヤからの入力が手の平や腰に小刻みに伝わってくるから、R8にレクサスのような優しい乗り味を期待するなら、少し違う。

しかしその分ステア時の反応は抜群で、ここにアクセルを合わせて行くと夢のような一時が訪れる。
620psのハイパワーを自然吸気で紡ぎ出す5L・V型10気筒は、もはや文化遺産だ。ロングストロークゆえに金切り声こそ上げないが、低回転で不揃いだった脈動が回すほどに音色を揃え吹け上がる様には、素直に脱帽できる。
そしてこの速さとミッドシップの回頭性の鋭さを、クワトロ4WDが影ながらに支えてくれる。最高水準のアクセル追従性をもって自在に駆けぬけるワインディングでは、自分だけの「ル・マンごっこ」を心ゆくまで楽しめる。もしR8にこれ以上何かを望むとしたら、空力性能くらいだ。次期型の電動化が避けられないとすれば、現行R8の存在は余りにも尊い。

AUDI RS e-tron GT vs AUDI R8 COUPE V10 PERFORMANCE 5.2 FSI QUATTRO

姿形は平べったくても、R8とはまるで違う。アウディの電動フラグシップ「RS eーtron GT」の走りはどこまでもクールで、これこそアウディのレギュラーモデルたちが、ずっと追い求めてきた乗り味なのだと感じた。
その見た目に反して、床下にバッテリー(93.4kWh)を搭載する関係から着座位置は適度に高めだ。電子制御エアサスの恩恵で、20インチタイヤでも乗り心地は極めて上質。2320kg(!!)の車重も平時は適度な抑えとなって、その身のこなしに品格を与えている。Wウイッシュボーンの応答性は素晴らしく、さらにEVのボディバランスで、コーナーも狙い通りだ。

しかしペースが上がるほどに、隠しきれない弱点が見えてくるのも事実。絶対的なバッテリーの重さは段差に弱く、垂直方向の乗り心地を悪化させる。素性のいい回頭性に対して、ダイナミックモードのハンドリングも、やや過敏になりすぎる。646ps/830Nmのシステム出力は数字こそ強烈だが、パワーウエイトレシオ的にはスーパースポーツ一歩手前で、加速感もエモーショナルさに欠ける。少なくともスクランブル時にはサウンド等の演出も含め、もっとパンチを効かせた方がいい。
そのカギを握るのは、バッテリーの進化だ。ピュアEVであるeーtronが“RS”を名乗るには、まだ少し長い道のりが必要だが、しかしそれができた暁には、我々の想像を超えたレンシュポルトになってくれるはずである。

RS4アバントの乗り味は好みが分かれるところ

RS4アバントの走りには、きっと賛否がハッキリ分かれると思う。450psの最高出力と600Nmの最大トルクを発揮する2.9L・V6ツインターボは、確かにパワフル。回すほどに力が漲り、その回転上昇感もウルトラスムーズだ。しかしキャビンから聞こえるサウンドは現代の基準に合わせてやや遠鳴りで、エモーショナルさに欠ける。
足周りは通常圧縮側の減衰力をソフトにして、20インチタイヤの入力を少しでも和らげようとしている。しかし不整地でペースが上がるとバンプタッチする傾向があり、かつリバウンド側を強めて安定性を得ようとしている分、その揺り戻しが大きい。路面によっては4輪がバラバラに動く感じだ。

AUDI R8 COUPE V10 PERFORMANCE 5.2 FSI QUATTRO/2006年に初代がデビューしたR8もいよいよ、販売が終了に近づいてきた。搭載される5.2L・V10ユニットは、最高出力620ps、最大トルク580Nmを発生。ダイヤモンドステッチが施されたシートは、スポーティな装いだ。フロント部の荷室容量は112Lを確保、タイヤはミシュランのパイロットスポーツ4Sが装着される。

だからスイートスポットはダイナミックモード一択。当然路面からの突き上げは厳しくなるが、車体は驚くほどに安定し、前輪にガッツリ荷重を与えれば、呆れるほどの旋回力でコーナーを曲がる。高いロール剛性とクワトロ4WDの安心感で、体感的にはR8より速く曲がれる感じすらある。
とはいえシビック・タイプRでさえ、乗り心地を謳う時代だ。普段の快適性を得るために、AUTO/コンフォートモードのドライバビリティはもっと高めるべきだ。
よって高性能と日常を両立させたいなら現状はS4、それではもの足りないというならRS6のアバントを狙うべきだ。しかしだからこそ、RS4アバントの狂気に惹かれる者はいるだろう。だから賛否は、ハッキリと分かれる。
最後を締め括「RSQ3」の特徴をひと言で表せば、「恐ろしく速い」だ。直線加速もさることながら、コーナリングパフォーマンスがSUVとは思えないほど異様に高いことに驚かされる。

AUDI RS e-tron GT/RSモデル初のBEVとなるRS e-tron GTは2021年に登場。前後輪にモーターを搭載するクワトロ4WDシステムで、最高出力は646ps、最大トルク830Nmを発生する。試乗車にはレッドのアクセントが施されたRSデザインパッケージが装着。荷室容量は405Lで、タイヤはグッドイヤーのイーグルF1を履く。

RSモデルの最大の魅力はその硬派な走りっぷりだ

その要となっているのは、RSシリーズの定石である引き締められた足周りと、クワトロ4WDの組み合わせだ。この高重心なSUVボディを超高速域レンジで走らせるために20インチタイヤを履かせ、躊躇なく剛性を高めている。
400ps/480Nmを発揮する2.5L直列5気筒ターボは、サウンドこそ不揃いだがパンチが効いている。当然ながら2Lの直4よりもトルキーで、しかも高回転まで、きっちり吹け上がる。いまや世界で唯一の存在となった直列5気筒は、そもそもアウディが最初に作ったユニット。初代クワトロの歴史も含めこのエンジンを搭載することは、速さ以上にレンシュポルトの証だと言える。

AUDI RS 4 AVANT/RS4アバントは2019年に現行の4代目へとフルモデルチェンジ、2023年9月には限定モデルのコンペティションがリリースされている。エンジンは最高出力450ps、最大トルク600Nmを発生する2.9LV6ツインターボを搭載。コクピットのデザインは一世代前のものとなるが、シートのホールド性は良好だ。

ステアリングが必要以上に重いのは、重心の高いSUVボディへ、不用意なソーイングを入れさせないためだろう。足周りは短いストロークの中で着実にストロークして、アクセルを入れれば直列5気筒ターボの加速を、4輪が確実にさばいてくれる。そのハンドリングは極めて安定した弱アンダーステアで、誰もがその速さを特別な技量なしに、安全に楽しめるようになっている。だから、硬いのだ。
正直コンパクトSUVにここまで必要か!? と思う。しかしRS4同様、これこそがRSなのだ。

AUDI RS Q3/いまや、希少といえる2.5L直5ターボを搭載するRS Q3。試乗車のインテリアにはレッドの装飾が施されたRSデザインパッケージが装着されており、スポーティな印象だ。荷室はSUVらしく530Lもの容量を誇る。タイヤはコンチネンタルのスポーツコンタクト6が装着されていた。

総じてRSモデルは、RS eーtron GTを除き、超硬派だった。確かに普段遣いは可能だが、それが快適かといえば決してそうではないというのが、偽らざる感想である。しかしそれはアウディが求めるスピードのレベルが極めて高いからで、その姿勢に何より魅力が感じられるなら、迷わず行くべき。レンシュポルトは、いまもって本気のグレードだと締め括りたい。

【SPECIFICATION】AUDI R8 COUPE V10 PERFORMANCE 5.2 FSI QUATTRO
■車両本体価格(税込)=31,850,000円
■全長×全幅×全高=4430×1940×1240mm
■ホイールベース=2650mm
■車両重量=1670kg
■エンジン種類=V10DOHC40V
■排気量=5204cc
■最高出力=620ps(456kW)/8000rpm
■最大トルク=580Nm(59.1kgm)/6600rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション形式=前後:Wウイッシュボーン
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:245/30ZR20、後:305/30ZR20

【SPECIFICATION】AUDI RS e-tron GT
■車両本体価格(税込)=18,990,000円
■全長×全幅×全高=4990×1965×1395mm
■ホイールベース=2900mm
■車両重量=2320kg
■モーター最高出力=646ps(475kW)
■モーター最大トルク=830Nm(84.6kg-m)/6600rpm
■トランスミッション=フロント1速/リア2速
■サスペンション形式=前後:Wウイッシュボーン
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:245/45R20、後:285/40R20

【SPECIFICATION】AUDI RS 4 AVANT
RS4アバントは2019年に現行の4代目へとフルモデルチェンジ、2023年9月には限定モデルのコンペティションがリリースされている。エンジンは最高出力450ps、最大トルク600Nmを発生する2.9LV6ツインターボを搭載。コクピットのデザインは一世代前のものとなるが、シートのホールド性は良好だ。
■車両本体価格(税込)=13,160,000円
■全長×全幅×全高=4780×1865×1435mm
■ホイールベース=2825mm
■車両重量=1810kg
■エンジン種類=V6DOHC24V+ツインターボ
■排気量=2893cc
■最高出力=450ps(331kW)/5700-6700rpm
■最大トルク=600Nm(61.2kg-m)/1900-5000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション形式=前後:Wウイッシュボーン
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:275/30R20

【SPECIFICATION】AUDI RS Q3
いまや、希少といえる2.5L直5ターボを搭載するRS Q3。試乗車のインテリアにはレッドの装飾が施されたRSデザインパッケージが装着されており、スポーティな印象だ。荷室はSUVらしく530Lもの容量を誇る。タイヤはコンチネンタルのスポーツコンタクト6が装着されていた。
■車両本体価格(税込)=8,970,000円
■全長×全幅×全高=4505×1855×1605mm
■ホイールベース=2680mm
■車両重量=1740kg
■エンジン種類=直5DOHC20V+ターボ
■排気量=2480cc
■最高出力=400ps(294kW)/5800-7000rpm
■最大トルク=480Nm(48.9kg-m)/1950-5850rpm
■トランスミッション=7速AT
■サスペンション形式=前:ストラット、後:ウィッシュボーン
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:255/40R20

問い合わせ先=アウディジャパン  0120-598-106

フォト=山本佳吾 ルボラン2024年3月号より転載

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2024/02/19 11:30

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