【プロトタイプ試乗】「アウディ RS eトロンGT」最高出力はR8をも上回る! ピュアEVでも頑と主張する“RS”らしさ

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アウディのBEV第3弾として登場したe-tron GTに、ピュアEV初となるRSモデルのRS e-tron GTが加わった。約600psの最高出力に800Nmの最大トルクと、R8にも勝るパフォーマンスを発揮する超高性能EVであると同時に、最新のRSでもあるGTは、どんな走りの新次元を披露してくれたのか。

アウディのBEVのなかで最もホットなモデル

アウディのピュアEVとしては初のRSモデルとなる、RS e-tron GTのプロトタイプの試乗は、ドイツにおけるコロナ第2次感染拡大によるロックダウンが勃発する直前、ギリシャのロードス島で行われた。

今回はプロトタイプモデルということもあり、ボディにはカモフラージュが施されていたが、空力面ではRS専用デザインが与えられている。

このモデルにはもうひとつ、「RS」が付かないe-tron GTが存在し、こちらは間もなく生産がスタートするが、いずれにしても気になるのはプラットフォームを共有するポルシェ・タイカンとの違いである。
しかし、関係者によるとこのふたつのブランドの違いを明確にするために、あえて密な共同開発を避けた結果、その内容の40%は異なっているという。

パワートレインは、フロントに175kW、リアに335kWを発生する2個のモーターを搭載。システム出力440kW/598ps(オーバーブースト時は646ps)と830Nmのパフォーマンスを誇る。また車高を4段階、減衰力を3段階に調整できる3チャンバー・エアサスペンションを採用。

残念ながらカムフラージュのため、エクステリアとインテリアのデザインについての詳細は不明だが、ロングノーズショートデッキのシルエットは、すでに2年前にLAショーで公開されたコンセプトに非常に近いものだ。

800Vのバッテリーが装備されているe-tronGTは、容量の80%を充電するのにおよそ20分、320km以上の航続距離を実現している。

一方、駆動エネルギーの源となるリチウムイオン電池は、計396個のセルによって、容量はネットで85.9kWh、グロスで93.4kWhとタイカン・ターボとほぼ同じ数字が見られる。

午後遅くロードス空港に到着すると、近くの軍用空港へ向かった。ここでは滑走路を使ってローンチスタートを体験できた。ブレーキとアクセルペダルの両方を踏み込んでおき、シグナルがグリーンに変わった瞬間にブレーキペダルをリリース。するとフロントの175kW、そしてリアの335kW、システム出力440kW(598ps)と830Nmのトルクによって、重量約2.5トンの4シーターGTは、立ち上がりから意表をつくような大パワーによって、まさにワープのような異次元の加速力を発揮する。正確な数字は発表されていないが、0→100km/h加速は3.5秒以下といわれ、11.8秒後には220km/hに到達。そして250km/hでリミッターが介入する。

翌日は、ロードス島の一般道路を、およそ2.5時間かけて走るスケジュールだった。ここを数km走って感じたのは、タイカンと比べるとサスペンションのセッティングが快適志向であること。さらにコンフォート・モードでは車高が20mm上昇し、アタリが柔らかくなると同時に、アダプティブダンパーがふわふわ感をしっかりと抑えてフラットな乗り心地を提供してくれるのだ。一方ドライブモードをダイナミックに設定すると、車高は10mmローダウンしスポーティなハンドリングを提供する。クワトロ4WDシステムの前後のトルク配分は0~100%までで、しかも状況に応じて従来のメカニカルシステムの5倍のスピードで作動し、コーナーでは最適なトラクションを与える。さらに最大で2.8度の舵角を持つ後輪ステアは、高速域でのレーンチェンジで素晴らしい安定感を披露してくれた。

またRS e-tron GTには、アウディが独自に開発した人工デジタル・ドライブ・サウンド「eサウンド」が採用されている。これは街中や走行状況によって、それに相応しいサウンドを車両の周辺やドライバーに聞かせ、エモーションを喚起させると同時にブランド・アイデンティティの確立にも繋げる意図である。これらからも想像できるように、e-tron GTは、その名の通りオールラウンドなグランドツーリングカーを目指しているのだと思う。

スタイリッシュな4ドアクーペボディが与えられたRS e-tron GTのサイドビューは、低い車高になだらかなルーフラインが目を引く。

しかし今回試乗した「RS」は最もホットなモデルで、ひょっとするとポルシェ・タイカン・ターボSと競合するかも知れないほどの存在感を披露してくれた。ここは13回ものル・マン優勝記録を持つアウディ・スポーツの譲れない意地なのかも知れない。

リポート=キムラ・オフィス/Kimura Office ルボラン2021年1月号より転載

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