牙を抜かれたマッスルカーに、頽廃の甘い香りを嗅げ!MPC/AMT製プラモ「1972年型ポンティアックGTO」【モデルカーズ】

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パワー競争の終わりを告げる二代目GTO最終型

ポンティアックのスポーティなイメージの確立に貢献したのが、1960年代に人気を集めたGTOである。「マッスルカーの先駆け」ともいわれるGTOは1964年、インターミディエイトのテンペストをベースにして誕生。小さなボディにフルサイズ用の大きなエンジン――389-cid(6.4L)――を搭載した高性能モデルであった。

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1965年型までのGTOは、テンペストの中でも上級スポーツグレードであるル・マンに用意されたスペシャルパッケージという位置づけだったが、1966年型からは独立したモデルとして扱われるようになった(ベースがル・マンであることは変わらない)。この第一世代は1967年型までで、翌年型ではテンペスト・シリーズ全体がフルモデルチェンジを行い、第二世代へと移行している。

この第二世代では、それまでのアイデンティティであった縦配置のヘッドライト(1965年型以降)を止め、ボディ全体もよりグラマラスになるなど、そのスタイリングは大きな変化を遂げた。ホイールベースはそれまでの115インチ(2921mm)から112インチ(2845mm)へと縮小、全体的にもボディはすこし長く、そして低くなっている。1968年型GTOの特徴は、カラードウレタンバンパーを装備していることだが、これは通常のクロームのバンパーに替えることもできた。コンシールドタイプのヘッドライトもオプションで用意されている。

続けて1969年型ではスペシャル・オプションパッケージのザ・ジャッジ(ハイパフォーマンスかつ装備も重視した派手なルックスのモデル)を追加、1970年型ではコンシールドライトが廃止されてファイアーバードに近い顔つきとなり、1971年型ではそこにバンパーバー(ボディ同色ではある)が加わるという変遷を辿っている。1972年型はこの細部に小さな変更を加えたものと思ってよいが、大きな変化がひとつあった。独立したモデルではなく、ル・マンのスペシャルパッケージという扱いに戻されてしまったことである。また、ザ・ジャッジも前年限りで廃止されている。

こうした動きは、この頃強まってきた排ガス規制の影響などを受けたものと思ってよいが、カタログなどでは「GTOがよりお求めやすくなりました」と、少々無理な印象のあるアピールをしていたようだ。当然ながらエンジンもパワーダウンを余儀なくされ、1969-1970年型のザ・ジャッジ用400-cid(6.6L)で370hpに達していた最高出力は、300hpにまで低下、しかもこれはより大排気量である455-cid(7.5L)の数値である。ただしこの数値低下は、エンジンの出力表記がグロスからネットに変更されたことによるものも大きい。

1972年型GTOのエンジンは3種類あり、まず標準となるのが400-cid、最高出力250hp。オプションとなるのが455-cidだが、これには通常のユニットとH.O.(円形の吸気ポートやアルミ製のインテークマニホールドを持つ)の2種類あり、前者は250hp、後者は300hp。トランスミッションは3速あるいは4速のMT、およびターボ・ハイドラマチック(AT)が組み合わされるが、H.O.でない455にはATのみ、3速MTは400-cidでのみ選択可能となるなど、少々複雑なマッチングとなる。

ボディは2ドアのクーペとハードトップのみとなり、前年まであったコンバーチブルは廃止された。ただし、ル・マン・スポーツとの違いはわずかであり、GTOというネーミングこそないもののほぼ同等の装備・エンジンを持つコンバーチブルを購入することは可能であった。

没落するマッスルカー、そのオヤジ臭さを強調する
第二世代GTOには、モノグラム/レベルの1/24スケール・プラモデルもあるが、それは1968‐1969年型であり、1970年型以降のキットはMPC 1/25、およびその最終年度である1972年型をAMTが引き継いでリリースしたもののみとなる。この1972年型は2000年代に再販されており、ここでお見せしている作例は、その2005年版(38162)を制作したものだ。以下、具体的なことについては、作者のダッズ松本氏の解説をお読みいただこう。

「大きすぎるバンパーをはじめ、各部の摺り合わせ作業は必須だ。各ピラーのモールやフロントフードのヒンジ、サイドミラーなど、省略されている部分も散見されるのは気になるところ。しかし仮組みを終えた時点でそれ以上に目に留まったのが、その精悍なボディデザインである。机上に現れたそれは、前方にせり出したインテークや、ボディ同色にまとめられたバンパー/グリルなど、実に新鮮でスタイリッシュ。マッスルカーと呼ぶにはなんとも大人びたカッコよさではないか!

そこで、一旦はADRIATIC BLUE POLYという澄んだブルーに塗ったボディではあったが、SPRINGFIELD GREEN POLY(#2345)に塗り替えた。「オヤジ臭いマッスルカー」に爽やかなブルーは似合わない。この調色については、日産マーチ用メタリックグリーンのタッチアップカラーを基本にクレオスのC8シルバーなどを加えつつ、カラーガイド通りの色を再現した。このような淡いメタリックの場合、近似色の実車塗料の活用は、仕上がりの色がイメージしやすいなどの意味で、有効な手法と言える。

オヤジ度を加速させるアイテムとして、バイナルルーフはぜひとも再現したいところだ。名糖ホームランバーアイスの銀紙のテクスチャーが、誂えたようにピッタリだったので、よく洗ってロウ引きした薄紙をはがした後アイロンがけを施し、スプレー糊で馴染ませながら貼り付けた。これで紳士度2割アップ。さらに若干の車高調整で、チョイワル度とボディのワイド感を強調した。実車はこの時代のアメ車には珍しくリアスポイラーも用意されるが、オヤジ度がスポイルされるので省略。

最終仕上げにおいて金属パーツの質感表現には毎回頭を悩まされる。今回は、上質のオヤジ感の演出として、ホイールとバンパーを除き、全て洋白線と帯板に置き換えた。質感としてはこれに勝るものはないわけだが、いかに曲面になじませるかが問題になる。ただし、これは焼き鈍し効果と治具を併用することである程度は対応できるようだ。瞬間接着剤による接着には細心の注意が必要だが、少量のはみだしは金属の硬度を活かし、研ぎ出しの過程で削り落とすことが可能だし、塗装後に爪楊枝で引っ搔けば容易に金属が露出してくれるなど、利点も多い」

作例制作=ダッズ松本/フォト=羽田 洋 modelcars vol.126より再構成のうえ転載

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2022/12/27 17:40

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