完熟試乗で見えてきたセダンの高い完成度に圧倒
E200のエンジンは当初は2Lターボだったが、2019年に1.5Lターボ+BSGへ換装。Cクラスでは高評価だった同ユニットは、ひと回り大きなEクラスでも役不足ではないだろうか?
街中に郊外路、高速道路などの一般的なシーンでは低・中回転域のトルクが充実していて扱いやすく、力感も十分。いまどきの直噴ターボとしては最大トルク発生値が3000~4000rpmと比較的に高いが、BSGのモーターが低回転域をアシストするからこの設定が成立するのだ。ストロングハイブリッドのようにグイッとくるモーター感こそないものの、メーター内のEQと描かれた表示では頻繁にPOWER側に振れてアシストしているのがわかる。モーターの最大トルクは38Nmにすぎないが、クランクシャフトに作用するのは最大160Nmなのだという。
だから1.5Lでも低回転域から頼もしいのだ。実用的な直噴ターボは、低・中回転は充実しているものの相対的に高回転は頭打ち感があるのが一般的だが、E200にそれは当てはまらない。アクセルをいっぱいに踏み込めば4500rpmあたりから活気づいてシュンシュンと軽快に吹け上がっていくのだ。1気筒あたりの排気量が小さいからマルチシリンダー風のフィーリングで環境ソリューションユニットとは思えないほど元気。ワインディングロードを駆け巡るのも楽しい。最高出力は184psに過ぎないので絶対的には速くはないが、日常域では十分以上といったところだ。
2世代前あたりまではセダンとステーションワゴンには明確な差があった。後者はテールの開口部が大きいから剛性面では不利で、重量バランスは後ろ寄りとなり、リアサスペンションのセッティングも随分とかわってくる。その違いが乗り比べればすぐにわかるほどだったのだが、現行モデルでは一般的な走行だったらほとんどわからないレベルになっている。
だが、神経を尖らせながら比較してみると、それなりに違いはあった。昨年のビッグマイナーチェンジによってEクラスは全体的に上質な乗り味となり、コンベンショナルなサスペンションのE200スポーツでも驚くほど乗り心地は良くなっている。それがより顕著に感じられるのはセダンのほうだ。ランフラットタイヤの縦バネの硬さや重さをほとんど感知させない見事な足さばき。資料を見てもシャシー面での改良情報はないが、メルセデスらしい熟成・進化を思わせる。ステーションワゴンもたいていのシーンではほぼ同等の乗り心地だが、凹凸が連続する荒れた路面ではほんの少しだけ尖った入力感を感じられた。
ハンドリングはもう少し開きが大きい。セダンはノーズの入り方がスムーズで、いかにもバランスのいいFRを走らせている気持ち良さがある。スポーツカーを何台も乗り継いで腕に覚えがある人でも、さすがはメルセデスと感心するだろう。ステーションワゴンに乗り換えるとアンダーステア傾向が少し強くなり、軽快感が薄れる。ノーズの入りが悪いというよりも、リアがグッと粘っている感覚だ。
前後重量配分はステーションワゴンのほうが後ろ寄りでほぼ50:50と良好なので、積載量の増減が多いことを考慮し、剛性などに合わせて最適なセッティングを施した結果だろう。軽快感の違いは車両重量によるものもある。ハンドリングだけではなく、加速力でもそれは感じられた。
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