北京モーターショーでのEQGワールドプレミアを前に、メルセデス・ベンツのグラーツ工場にて新型Gクラスのワークショップが開催された。歴代Gクラスの試乗や工場見学も行なわれたが、ここではなにはさておき、気になる新型のポイントについてお届けしよう。
ついにGクラスのBEV版が正式発表
メルセデス・ベンツのGクラスがマイナーチェンジを受け、北京モーターショーでワールドプレミアとなった。現行モデルが2018年に登場して以来、初めての改良となる。
そもそも現行モデルと先代モデルは同じ開発記号“W463”を共有しているので、これに従えば2018年誕生の現行モデルは“マイナーチェンジ版”とも言える。しかしその実態は事実上のフルモデルチェンジであり、従来モデルからの流用部品はわずか数点に過ぎなかった。とてもそんなふうに見えないのは、もちろんあえてそうしているからだ。Gクラスはそのシルエットからディテールに至るまでがもはや不動のアイコンとなっており、それをイジるのはモナリザの髪型を変えてしまうようなものなのである。
従って、今回の改良型もパッと見ただけではどこが変更されたのかよくわからない。それでもエクステリアは明確な目的を持って手が加えられている。フロントグリルが立体的造形になったり、Aピラーに被さる黒いスポイラーの形状が改良されたのは、いずれも空力の向上を目的としている。フロントウインドーが立っているGクラスは空力的には不利なスタイリングで、Cd値は0.53もあった。ところが新型ではこれが0.44まで改善されている。同じメルセデスのEQSが0.20を達成しているご時世に、「まだ0.44か」とも言えるけれど、改善の手を止めない姿勢は評価したい。
今回はむしろ見えない部分の変更点のほうが大きい。パワートレインは刷新され、すべてISG仕様の電動ユニットとなった。「G450d」が積む2989ccの直列6気筒ディーゼルターボ、「G500」の2999cc直列6気筒ガソリンターボ、そして「G63」の3982cc V8ツインターボの3種類となり、最高出力/最大トルクはG450dが367ps/750Nm、G500が449ps/560Nm、G63が585ps/850Nmと公表されている。
そして何よりも最大のトピックは、ついにGクラスのBEV版が正式発表された点だ。これまで「EQG」を名乗りコンセプトカーとして登場していたモデルは「G580 with EQテクノロジー」という少々長い車名に落ち着いた。
モーターは各車輪にひとつずつ、計4個を搭載。既存のラダーフレームの隙間にバッテリーを敷き詰めて、最大航続距離は432km、車両重量はついに3トンを超える3085kgとなった。最高出力587ps、最大トルク1164Nmを誇る。最高速は180km/hに制限されている。
4つのモーターを個別に制御できるので、機械式デフロックは必要なく、“Gターン”と呼ばれる曲芸ができる。デフロックのスイッチの代わりに設けられたボタンを押し、右のパドルを引くと右に、左を引くと左にその場で回転を始める。1周は約4秒で、最大2周までだが、パドルを離した時点でも止めることができるから、45度や90度のターンも可能とのこと。もちろん、Gクラスとしてのオフロード走破性も備えていて、例えば渡河水深は850mm。フロア下を完全防水、かつバッテリーを衝撃から守る対策が施されている。
1979年に初代が誕生したGクラスはG580の登場により、新たな歴史をまたひとつ刻むことになりそうだ。
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