【国内試乗】ブランドの先進技術を満載した盤石のアッパーミドル。SもCもいいけれどあえて“Eクラス”を推す理由「メルセデス・ベンツ Eクラス」

先ごろ、満を持して日本導入された新型Eクラス。メルセデスといえば、フラッグシップのSクラスがあり、ベストセラーのCクラス、さらにSUVも人気である。さて、渡辺慎太郎氏があえてEクラスをオススメするその理由とは!?

新型Eクラスが開発された理由

メルセデス・ベンツのEクラスは、いつの間にやらちょっと中途半端な存在になってしまっていた。その原因のひとつがCクラスの成熟にある。現行Cクラスのボディサイズはずいぶん立派になって、いまやひと昔前のEクラスとほぼ同じだし、インテリアの質感も向上、動力性能や操縦性や静粛性や乗り心地も飛躍的な進化を遂げた。Cクラスをどんどんよくしていくうちに、Eクラスを喰ってしまうほどに成長してしまったのである。Eクラスに興味を示しても、試しにCクラスに乗ってみたら「これでいいじゃん」となる人が少なくなく、そりゃそうなるよなと個人的にもそう思っていた。

フロントデザインはヘッドライトとグリルを一体化した新しいブラックパネル調のデザインが特徴。Cd値は0.23と、このセグメントとしてきわめて優れたエアロダイナミクス性能を達成する。

そんなことはメルセデスも重々承知していた。いっぽうで、相変わらず売れるのはSUVばかりで、セダンそのものはなかなか厳しい立場に置かれている。ビジネス的観点だけで見れば、セダンはCとSがあればどうにか需要はカバーできるから、Eクラスをお役御免にするという判断があってもおかしくない。それでもどうして新型Eクラスを開発するに至ったのか。以前、メルセデスの開発役員にこの点を直接聞いたことがある。彼は言葉を選びつつも、正直な気持ちを答えてくれた。

Cクラス同様、セダンとステーションワゴンが同時にラインナップ。先代モデルよりも一層スポーティかつダイナミックなデザインを採用した。リアにかけての伸びやかなルーフラインもステーションワゴンの魅力のひとつ。

「おっしゃる通り、Eクラスの存在が以前よりも希薄になっていたのは事実です。でも、だからといって止めるわけにはいきませんでした。おかげさまでメルセデス・ベンツは、国や年齢や性別を問わず、世界中で高い認知度を誇っています。そこでメルセデスを知っているという人に、メルセデスと聞いてのどんな車種が思い浮かびますか? と質問したら、GLAやGLCやGLEでもなく、やっぱりいまでもSやEのセダンと答える方がほとんどでした。メルセデスにとってセダンはブランドのアイコンになっていることをあらためて認識したのです。それならば、メルセデス・ベンツというブランドの存続のためにも、CでもSでもないEをちゃんと作ろう。そういう結論に至りました」

ヘッドライトには日本初の「路面描画機能による車線逸脱警告」機能をオプション設定。

こうして昨年、新型Eクラスが誕生した。このクルマの印象は、初めて国際試乗会で試した時も、日本であらためて試した時もまったく同じだった。それは、「ちゃんと作っている」ということ。ちゃんと作るなんてどこのメーカーのどんなクルマでもやられていることではあるけれど、Eクラスの「ちゃんと」は細部に渡って行き届いている。

二分割されたヘッドライトおよびスリーポインテッドスターをモチーフとしたテールライトを初採用。

あえてEクラスをオススメする理由

例えばボディは前後左右上下方向のすべてにおいて頑強だ。ボンネットを開けると、エンジンの両側にそれぞれ1本ずつのブレースが見える。これはサスタワーの上部とラジエターサポートを繋ぐことにより、操舵時にエンジンコンパートメント部の捻れを軽減し、フロントサスペンションがしっかり前輪を支えて接地面変化を少なくすることで正確な操縦性を担保する効果が見込まれる。いっぽうで、当然のことながらブレースを2本追加すると、コストはかかるし生産現場での作業工程も増える。ここまでやらなくてもそこそこの操縦性は実現できるだろうが、それでもやるという判断を下したところに、自分なんか「ちゃんと作っているな」と感心してしまうのである。

試乗車はオプションとなる、助手席までディスプレイが広がるMBUXスーパースクリーンを装着。サードパーティ製アプリをインストールし利用可能なほか、最新世代のMBUXにより音声認識機能も向上。

実際、Eクラスの操縦性はドライバーの入力に対して極めて正確だ。ステアリングを動かしてから車体が向きを変えるまでの過渡領域で無駄な動きや不穏な動きは一切なく、スムーズかつ安定的な動作に終始する。この一連の所作は、ステアリングをゆっくり回しても素早く回しても変わらない。操舵応答遅れがないから、ドライバーはクルマが自分の意志通りに動いてくれていると実感できるようになっているのである。

オプションのレザーシートはダイヤモンドステッチが上質な風合いと心地よい快適性を提供する。

静粛性の高さもEクラスの特徴のひとつだが、遮音/吸音はもとより、エアロダイナミクスの改良が徹底されている。室内外に計500個もの音響用マイクを装着し、走行中の風切り音由来のノイズの発生源や流路を特定し、それらを改善する手立てを講じたという。結果として、室内の静粛性はCクラスよりも明らかに高く、Sクラスに迫るレベルに達している。同時に、Cd値は0.23を達成。これはクラストップの数値である。EクラスにはPHEV仕様もあり、EVモードで走行する場面でも静粛性が保たれる必要性も考慮したのだろう。当然のことながら、空力性能の高さは燃費の向上にも大きく貢献する。

メルセデス・ベンツ E200ステーションワゴン・アバンギャルド

今回は現行Cクラスの登場時と同様に、セダンとワゴンが同時に発表された。3ボックスのセダンよりも室内空間の広い2ボックスのワゴンは、ボディ剛性やこもり音などの面で不利とされているものの、そうしたネガはほぼ払拭されている。ワゴンはリアのみに空気ばねのエアサスを標準装備。一般的にワゴンは、荷物を積んで後輪に荷重が多くかかった場合を想定してリアサスをセッティングするため、空荷と満載時で乗り心地に差が生じる傾向にある。これをエアサスで解消した。満載時でもリア側が下がらず車高が保たれるというメリットもある。

ガソリン、クリーンディーゼルエンジンにはISGを組み合わせ、そのほかにプラグインハイブリッドが用意され、全車電動化された高効率なパワートレインをセレクトできる。

ここまで紹介した「ちゃんと作っている」部分はほんの一部に過ぎない。そして何より個人的には、Cクラスよりも明らかに動的・静的質感が上回っていながら、Sクラスよりもカジュアルな乗り味にしたという絶妙な塩梅にいたく感銘を受けた。CとSの間という、いまではかなりピンポイントになってしまったポジションをよくぞ探り当て、それを商品として実現したからだ。これはおそらく、お客や市場よりも「Eクラスとはこうあるべき」という具体的なイメージが、メルセデス社内でしっかり共有されているからだろう。

新型Eクラスであれば、もはや「Cクラスでいいじゃん」という判断はほぼなくなり、「やっぱりEのほうがいいな」と感じる人がほとんどだろうと思っている。

フラットで使い勝手のよいラゲッジルーム容量は、セダンが通常370L〜最大で540Lを確保。ステーションワゴンは通常が615L〜最大で
1830Lを確保する。

【渡辺慎太郎の推しポイント】乗り心地も静粛性もすべて……。

渡辺慎太郎/真っ当なセダン/ワゴンとして一切の妥協なく、ちゃんと作られているという点。メルセデスのエンジニアの「セダンがちゃんと作れないとSUVをちゃんと作ることもできません」という言葉は、まさしくその通りだと思った。

【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツ E200ステーションワゴン・アバンギャルド
■車両本体価格(税込)=9,280,000円
■全長×全幅×全高=4960×1880×1470mm
■ホイールベース=2690mm
■トレッド=前:1630、後:1645mm
■車両重量=1910kg
■エンジン形式/種類=254M20/直4DOHC16V+ターボ
■内径×行程=83.0×92.3mm
■総排気量=1997cc
■最高出力=204ps(150kW)/5800rpm
■最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/1600-4000rpm
■燃料タンク容量=66L(プレミアム)
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:4リンク/コイル、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/55R18

問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610

フォト=郡 大二郎 ルボラン2024年6月号より転載

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