秘密はコネクティングロッドに繋がる「マルチリンク」
8月14日に発表したVC-Tエンジンについて、日産は新たに作動メカニズムを示した画像を追加公開した。それによると、ピストンとクランクシャフトを繋ぐコネクティングロッドの間に、クランクシャフトを回転軸とするマルチリンクを挟み、そのマルチリンクの角度を変えることで実質的なコネクティングロッド長を変更し、ピストンの上昇位置を制御するようだ。
マルチリンクの角度を変更するのはハーモニックドライブと呼ばれるメカニズム。これがアクチュエーターアームを介し、クランクシャフトを回転軸とするマルチリンクの一端に連結されている。ハーモニックドライブは出力重視の位置と効率重視の位置の間で回転することでマルチリンクの角度を変え、これにより回転軸を挟んで反対側に接続されているコンロッドとクランクシャフトの位置関係を変更。結果、コンロッドの実質的な長さが変更され、圧縮比も変わるという仕組みだ。
作動原理としてはアトキンソンサイクルに似ているが、アトキンソンサイクルはピストンの上昇位置は変えずに燃焼室サイズは一定のまま、下降位置を変えて膨張比を変更するのに対し、VC-Tはピストンの下降位置はそのままに、上昇位置の方を変えることで可変圧縮比としている。アトキンソンサイクルほど複雑な機構を使わずに同様の効果を実現したのが、吸気バルブを遅閉じして吸気を逃がし、排気量よりも吸気量を減らすミラーサイクルだが、それらに対して吸気量が変わらない、つまり高出力化にも適するというのがVC-Tエンジンの特徴だ。
画像では、パワー重視の場合は8:1まで圧縮比を下げ、効率重視の場合は14:1まで圧縮比を上げるとされているので、おそらく圧縮比に連動してターボの過給圧制御も行なわれているのだろう。8:1といえば超パワー重視の過給エンジン向け圧縮比で、過給圧の設定によってはすさまじい最高出力を期待できる。また、ガソリンエンジンでの14:1の圧縮比はマツダのSKYAKTIVで実現されており、燃費性能はそれに近い水準が期待できるとみてよさそうだ。実際の運用上の制御に関する詳細については、9月のパリ・モーターショーにて公開されるはずだ。
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