BMWのブランドイメージを牽引するハイパフォーマンスカー、Mモデルの象徴的な存在となっているM5がフルモデルチェンジを遂げて帰ってきた。ここでは、ドイツで行なわれた国際試乗会からその印象をいち早く紹介しよう。
新型M5はダイナミックでかつ快適に仕上がっていた
7代目となる新型BMW M5は、日本にもまもなく到着する予定だが、ひと足早くドイツ・ミュンヘン郊外で試乗することができた。1984年に登場した初代M5(E28S)以来、M5は直6、V8、V10、直噴V8ツインターボ、そして4WDと進化し続け、「G90」と呼ばれる新型M5でついにPHEVとなった。
今や絶対的なパフォーマンスならBEVに分があるが、ICEを積むPHEVとなった点は、往年のM5ファンには嬉しいところだ。
筆者は今春にサーキットでプロトタイプに試乗しているが、カモフラージュなしの車両は今回が初見。台形を強調した専用フロントバンパーやM専用キドニーグリル、左右合わせて70mmもワイド化したフェンダー、4本出しマフラーを強調したディフューザー形状のリアバンパーなどが、圧倒的にグラマラスな、M5に相応しいルックスを実現していた。
大型のキドニーグリルは、LEDのイルミネーションで縁取られ、水平方向のスリットを持つ専用アイテムで、バンパーにはいくつものエアインテークがあるが、実際には開口部はそれほど多くない。エンジニアによれば、「穴が空いているところには、すべて何かしらの機能がある」とのことで、見た目の派手さよりエアロダイナミクスやクーリング性能を緻密に計算してデザインされているという。
一層のパフォーマンスとコンフォート性能の両立を目指して開発されたという走りの方は、抜群にダイナミックかつ快適だ。
パワートレインは、585ps/750Nmの4.4L・V8ツインターボに、197ps/280Nmを発揮する電気モーターを組み合わせ、システムトータルで727ps/1000Nmを発揮。車両重量は2435kgと、先代より約500kgも重いことを感じさせない猛烈な加速を披露する。
0→100km/h加速は3.5秒と先代モデルより0.2秒遅いものの、0→200km/h加速は10.9秒と、先代の標準モデルより0.2秒速く、M5コンペティションに対してわずか0.1秒落ちという俊足を実現。プロトタイプの試乗はサーキットだったので、コーナリング時に重さを感じたが、一般道を走るかぎり、全く意識することがないどころか、低重心による安定感さえ感じた。
ハンドリングはとても俊敏で正確。ステアリングの遊びは少ないが過敏な印象はなく、とても運転しやすい。ワインディングロードではその楽しさに時間を忘れるほどだ。またV8ツインターボエンジンと電気モーターの制御が素晴らしく、車内に人工的なエンジンサウンドを聞かせるMサウンドをオンにした状態では、切り替えやエンジンのオン/オフに全く気づかないほどである。
ボディは剛性感が素晴らしく高く、足回りはダイナミックモードでもしなやかさを失わないので、乗り心地も良好。走りと快適性は非常に高いレベルで両立されている。しかも最大69km、最高140km/hのEV走行も可能となれば、新型M5はハイパフォーマンスセダンの新たなベンチマークとなる可能性を感じさせる、珠玉の一台と言えるだろう。
【SPECIFICATION】BMW M5
■車両本体価格(税込)=19,980,000円
■全長×全幅×全高=5096×1970×1510mm
■ホイールベース=3006mm
■トレッド=前:1684、後:1660mm
■車両重量=2435kg
■エンジン形式/種類=ー/V8DOHC32V+ツインターボ+モーター
■内径×行程=88.3×89.0mm
■総排気量=4395cc
■最高出力=595ps(430kW)/5600-6500rpm
■最大トルク=750Nm(76.6kg-m)/1800-5400rpm
■モーター最高出力=197ps(145kW)/6000rpm
■モーター最大トルク=280Nm(28.6kg-m)/1000-5000rpm
■燃料タンク容量=60L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:5リンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:285/40ZR20、後:295/35ZR21
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