ビッグサルーン市場においては、すっかり知名度も定着した感のある4ドアクーペモデル。その中でもパナメーラは、ポルシェらしいハンドリング性能が最大の魅力だ。ここではアルピナB8を対抗馬に挙げつつ、その実力に迫ってみることにしたい。
完全無欠のパナメーラ、一方B8には華がある
パナメーラを走らせてまず圧倒されるのは、剛性感の高さだ。どっしりと構えた岩のような低重心ボディに驚きながらハンドルを切れば、ダブルウィッシュボーンのフロントサスが車体の重みをしっかりと支え、リアアクスルステアリングがその巨体を小回りさせる。
こうしたアジリティの高さに対して、フロントタイヤには常に微弱なトルクを掛けておくことで、操舵感に心地よい重みと正確性、そして直進安定性を与えている。
ボディだけでなくシャシー全体で有無を言わせぬ剛性感、即ち“ポルシェ感”を生み出す様は、エンジンこそフロント搭載だがカレラ4の乗り味とよく似ている。
2.9L V6ツインターボにモーターを組み合わせたハイブリッドユニットも、実にポルシェらしい精密な仕上がり具合だ。そのシステム最高出力は462psとこの手のスペシャリティとしては控え目だが、いっぽうシステム最大トルクは700Nmもあるから、街中で力不足を感じることはまずない。ハイブリッドモードを選べばほぼモーターで街中を静かに走りきり、いざアクセルを踏み込めばタコメーターが瞬時に反応して、その強大なトルクを下敷きにV6エンジンが吹け上がる。ターンインでのノーズの軽さも合わせ、もはや日本の環境下ならV8いらずと思わせるほど、それは完成されたパワーユニットだった。
そんなパナメーラはご存じの通り、2950mmのホイールベースによって大人をも満足させるだけの居住ペースをリアに備え、さらにはエアサスとホールド性だけでなく座り心地も抜群なシートでその乗り心地をも整えた、本当に隙の無いサルーンでもある。もしパナメーラに何か問題があるとしたらそれは、「いつかは911」と夢見た志しすらも忘れ、これで満足してしまうことかもしれない。
パナメーラのあまりに完璧な走りを味わったあと、8シリーズベースのB8グランクーペがどこまでその印象を覆せるのか正直不安だったが、それはとんだ杞憂だった。なぜならアルピナが腕を振るったその乗り味には、ポルシェとは全く対照的なエレガントさと、野性味が凝縮されていたからだ。
B(ベンジン)のイニシャルが示す通り、B8の4.4L V型8気筒ツインターボは純然たるガソリン仕様だ。しかしその躾けはみごとに行き届いており、アイドリング付近から常用域にかけての静けさはモーターいらずと言えるほど。また大排気量ツインターボの過給圧制御は驚くほど滑らかで、わずか2000rpmから発揮される800Nmの最大トルクを、つま先の軽いタッチでイージーに操ることができる。
そしてアクセルを踏み込むほどに、カムに乗る機械的な高揚感と、微かに甲高いサウンドが盛り上がって行く。
対するシャシーは“アルピナ・マジック”と評されるダンパーの制御とエアサスのマッチングが抜群で、その走りは羽が生えたかのように軽やかだ。しかもその滑らかな減衰力制御は621psのパワーをしなやかに受け止めながら、BMWらしさ溢れるコーナリングフォームを作り出す。ターンインからターンアウトまでの一連の動きは極めて上質。かつ本気で攻められるほど高次元で、とてもフロントにV8ユニットを積んだビッグサルーンとは思えない。
パナメーラの完全無欠ぶりに対してB8グランクーペの走りには華がある。2台は同じ4ドアクーペというジャンルにいながら全く違うテイストの持ち主で、それは正にポルシェを愛するドライバーと、BMWを愛するドライバーの違いだ。だからこの2台を興味本位で乗り比べても、本質的に迷うことはないと私は思う。
【SPECIFICATION】PORSCHE PANAMERA 4 E-HYBRID PLATINUM EDITION
■車両本体価格(税込)=17,210,000円
■全長×全幅×全高=5049×1937×1423mm
■ホイールベース=2950mm
■車両重量=2310kg
■エンジン種類=V6DOHC24V+ツインターボ
■排気量=2894cc
■最高出力=330ps(242kW)/5400-6400rpm
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)/1800-5000rpm
■トランスミッション=8速DCT
■モーター最高出力=136ps(100kW)
■モーター最大トルク=400Nm(40.8kg-m)
■システム最高出力=462ps(340kW)
■システム最大トルク=700Nm(71.4kg-m)
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前275/35R21、後:315/30ZR21
問い合わせ先=ポルシェジャパン TEL0120-846-911
【SPECIFICATION】BMW ALPINA B8 GRANCOUPE
■車両本体価格(税込)=27,650,000円
■全長×全幅×全高=5090×1930×1430mm
■ホイールベース=3025mm
■車両重量=2170kg
■エンジン種類=V8DOHC32V+ツインターボ
■排気量=4394cc
■最高出力=621ps(457kW)/5500-6500rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/2000-5000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=前:245/35ZR21、後:285/30ZR21
問い合わせ先=ニコル・オートモビルズ TEL0120-866250
■関連記事
- ポルシェのデザインスタジオの舞台裏を独占取材! ポルシェの”クルマづくり”のインスピレーションの源。
- 「911ダカール」の生産終了記念、特別なデザインで輝く「ポルシェ911ダカール・ゾンダーヴンシュ」を製作
関連記事
新たに2バージョンが加わり、11のファミリーが完成! 新型ポルシェ「タイカン4」「タイカンGTS」の予約受注開始
ニューモデル
2024.11.13
「ポルシェ963」のサクセスストーリー! 「ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ」が7つのタイトルを獲得
ポルシェ
2024.11.11
ポルシェ専門誌『ORIGINALE』が10周年に。記念号は、伝説の名車とそのオリジナルパーツの物語を100P以上で特集
ニュース&トピックス
2024.11.11
「マカン」が東京マラソン2025を先導!ポルシェジャパン、東京マラソンとのオフィシャルパートナー3年契約を締結
ニュース&トピックス
2024.11.07
愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?
複数社を比較して、最高値で売却しよう!
車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。
手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!
一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業不特定多数の業者からの大量電話をなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!
【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>