同時に6気筒ディーゼルも発売
この記事の公開日は2023年10月31日。今から44年前の今日――すなわち1979年10月31日に発表された、国産車の歴史上非常に重要な名車をご存じであろうか? 答は、430型系・日産セドリック/グロリアのターボ搭載車である。
セドリックとしては五代目、グロリアとしては六代目となる430型は、1979年6月に発売されていた。直線的に生まれ変わったボディは、来るべき1980年代を予感させるものであったが、搭載されるエンジンは従来と変わらずL28EやL20Eであった。そこへ、L20Eにターボチャージャーを組み合わせたL20ETを搭載したモデルが1979年10月31日に発表されたのである(発売は同年12月から)。L型ターボといえば、スカイライン(ジャパン)のイメージも強いが、L20ET搭載車として最初に発売されたのはセドリック/グロリアだったのだ。そしてそれは、国産市販車としては初めてのターボ車でもあった。
ターボ・エンジンの市販車への採用は、スカイラインやフェアレディZへの搭載からも分かる通り、スポーティカーにおける性能向上を意識したものであった。しかし大っぴらにそれを主張すると認可を受けるのが難しかったため、まずセドリック/グロリアに搭載したものと言われている。ターボの目的として、低燃費や低騒音、排出ガス清浄化などを謳うというのが、当時の日産が採った戦略である。
燃費については、アイドル回転の改良、トランスミッションおよびファイナルのギア比変更により、10モード燃費8.6km/Lという良好な数字を得られたと主張。低騒音については、「ターボチャージャーを吸・排気系に装着したことにより、吸・排気の脈動音を低減し、ファイナルギア比のハイギヤ化や、種々の遮音対策により、騒音を低減した」としている。L20ETの最高出力は145㎰/5600rpm、最大トルクは21.0kgm/3200rpmであった。
このL20ET搭載車としてまず用意されたのは、セダンとハードトップのターボSGLエクストラ、そしてハードトップのターボSという3種のモデルである。SGLエクストラはいずれもL20E搭載の同グレードと同じ仕様、装備レベル。そしてターボ専用に新設定されたS(ターボS)というグレードはスポーティな性格づけをされたもので、4輪ディスクブレーキやアルミロードホイール、強化型フロントスタビライザーなどを装着していた。トランスミッションは3モデルとも5速フロアMTのみ。
当時の価格はハードトップのターボSGLエクストラで264.2万円、ターボSで226.3万円、セダンのターボSGLエクストラで246.5万円であった(いずれも東京地区)。なお、翌1980年4月には、これら3モデルに3速AT車を追加するとともに、セダン/ハードトップともにターボ車最高級モデルとなるターボ・ブロアムを追加している。
価値ある自動車=Vシリーズ
さらに同日、430型系セドリック/グロリアにはもうひとつの新たなエンジン搭載モデルが追加され、こちらは即日発売となっている。L型6気筒のディーゼル版、LD28を積んだモデルである。初代以降、セドリックのディーゼル車にはSD型が搭載されており、グロリアも230型系から同じ道を歩んできていた。430型系もデビュー当初からSD20/SD22搭載車が主にセダン下位グレードのディーゼル車としてラインナップされていたのだが、それから5ヶ月近く後に、中・上級モデル用のディーゼルエンジンとして、LD28が加わった形となる。
日産ではLD28について、「日本初の乗用車専用6気筒OHCディーゼルエンジンで、渦流室式燃焼室、ボッシュ式分配型噴射ポンプおよび噴射ポンプ駆動の歯付きベルトなどを採用するとともに、シリンダーブロック、シリンダーヘッドなどエンジン構成部品の軽量化を実現したもの」と説明していた。その性能は最高出力91ps/4600rpm、最大トルク17.3kgm/2400rpm、60km低地走行燃費15.0km/Lというものである。
このLD28搭載モデルは、グレード名に「V」が付いて区別される。これは「Valuable Vehicle(価値ある自動車)」の頭文字とされた。VシリーズにはVX-6、VL-6、VS-6(ハードトップのみ)、VO-6(セダンのみ)の4グレードがあり、豪華モデルからスポーティ仕様までを揃えた形だが、さらにワゴンも加えて全部で7モデル。トランスミッションは3速フロアATのみであった。
当時の価格はハードトップVX-6で258.2万円、同VS-6で190.3万円、セダンVX-6で240.5万円、同VO-6で163.5万円、ワゴンは194.3万円であった(いずれも東京地区)。
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