1980年代をリードした高級セダン
最近ではトヨタ・クラウンの新型が4つものボディスタイルを伴ってモデルチェンジを果たし、熱い注目を浴びていたが、国産高級車のもう一方の雄である日産セドリック/グロリアは、表舞台から姿を消して久しい。その地位はフーガが受け継ぎ、タクシーなどの営業車としてセダンのみが残ったものの、そのセダンも、そしてフーガまでも、生産・販売を終了してしまった。今なおファンは、セドリック、そしてグロリアの復活を待っているのである。
【画像79枚】低く構えたスタンスがカッコイイ430セダンと、その制作工程を見る!
セドリックは1960年、それまで日産がライセンス生産を行ってきたオースチンA40/A50での蓄積を活かした乗用車としてデビューした。歴代セドリックの中で、特に名車としてあるいは販売的に成功したものとして、いくつかのモデルが挙げられるだろう。日本初の4ドア・ハードトップをデビューさせ販売台数でクラウンに打ち勝った3代目・230型。グランツーリスモで走りのイメージを打ち出しシーマとの連合軍で大いに売った7代目・Y31型。国産初の量産ターボ車を登場させ、1980年代を主導した430型は、その代表格だ。
430型系セドリック/グロリアは1979年にデビュー、1983年まで生産・販売された。ボディ形式は従来の4ドア・セダンと4ドア・ハードトップをそのまま引き継ぐ一方で、2ドア・ハードトップが消滅している。これは、追って登場した新規車種レパードにその地位を譲ったというかたちにもなっている。そして、もうひとつのボディとしてバンが存在、先代では消えていたワゴン仕様も復活している。
先代330型のボディスタイルは、いかにも1970年代的な抑揚が強く丸みのある複雑なものであったのに対し、430型では直線基調のクリーンなものへと一気に変化。これも、来る1980年代を強くイメージさせたポイントであろう。同時期のクラウンと比べるとセドリック/グロリアの方が若干ロングノーズ・ショートデッキ的なプロポーションで、ハードトップでは、ピシッと折れ曲がった形で側面に回り込んだリアウィンドウも特徴であった。ハードトップ、セダンともに、オペラウィンドウを持つ6ライト・スタイルが採用されている。
430型で特筆すべきは、前述のとおり、国産市販車初のターボエンジン搭載車がラインナップされたことである。これはモデルチェンジ翌年の1980年に追加されたもので、お馴染みのL型2Lエンジンにターボチャージャーを装着したL20ETを搭載。日産では高性能よりむしろ省エネ・高効率をアピールしていた。これより後、日産に限らず国内様々なメーカーからターボ車が続々と登場、1980年代はターボの時代となったものである。
グリルなどを自作、テールはパーツ流用で前期化!
さて、430型はプラモデルでもなかなか人気で、いくつかのキット化がある。しかしその大半はやはりハードトップで、セダンはオオタキ1/24が唯一であった。このオオタキ製セダンはタクシー(スタンダード)を真面目にキット化した、ある意味変わり種であるが、それだけに世のセダンマニアにとっては垂涎の的で、非常にプレミア化していたのである。しかし、そんな状況を一変させたのがアオシマであった。なんと21世紀に入って、この430型セダンを新たにキット化したのだ。
このキットの発売は2013年のことで、まず後期型GLとスタンダードが発売され、追ってタクシーやパトカーなどがリリースされた。このキット化の背景には『西部警察』での劇中車としての人気もあるのだろう(オオタキ製キットがプレミア化した理由でもある)ということは、後期GLというチョイスから推察されたが、やはり『西部警察』仕様も遅れて登場。いずれもグレードや仕様によってきちんとパーツを変更した、良心的なキットである。
ただし、このアオシマ製セダンには前期型の一般グレードがない、ということを不満に思う方も少なからずいるであろう。そこで、グリルを自作するなどして前期型への改造を行ったのが、ここでお見せしている作例である。430型セダンは後期型でボンネット形状が変更されているが、これはキットでも元々別パーツとなっているので、スタンダード(タクシー)から流用した。スタンダードの外観は、後期型の年式でも基本的には前期のままである。前期型セドリックのテールレンズも同様にタクシーから流用した(素のスタンダードはグロリアのみの製品化)。
フロントグリルはプラ板から自作して、縦スリットのセドリックのものを自作。ヘッドライト下に前期型では不要なモールが残ってしまったので、同じ改造に挑む方はここに注意されるとよいだろう。さらに細かなところでは、オペラウィンドウのフィニッシャーも異なるので、モールドを作り直している。シートはそのままGLのパーツを使ってもよいのだが、430らしい雰囲気をということで、フロントシートを3人掛けへと改造。これはタクシー用のベンチシートとは異なる”セミセパレートシート”で、実車では左右シートバックが独立して可動、中央部にはアームレストが収納してあるものである。
全体の仕上げは「ちょっとワルそうな感じ」をイメージして、ホイールをキャップレス状態とし、車高を落としている。また、この雰囲気を盛り上げるため、外装のメッキ部分にはダークステンレスシルバーを使用。メッキの軽い感じの輝きではどうしてもつきまとうオモチャっぽい”軽さ”が軽減されているようである。これに合わせてボディカラーのトーンも微妙に調整したとのことだ。さらに、ボディ形状には若干手を加えて、より実車の雰囲気に近づけている。工作の詳細については画像のキャプションで説明しているので、じっくりお読み頂きたい。