RR・四独サス、軽商用車のパイオニア
軽ワンボックスバン/軽トラックの代表的車種であるスバル・サンバーと言えば、現在ではダイハツ・ハイゼットのOEM車種となってしまったが、かつてはその独特の存在感でファンを魅了したものであった。サンバーの登場時には、軽自動車におけるキャブオーバー・タイプのバン/トラックの存在はまだ黎明期であり、くろがねなどの前例はあったものの、ジャンル自体を確立したのがサンバーであると言っても間違いではないだろう。
【画像49枚】小回りの利きそうな赤帽サンバーとその制作過程を見る!
スバル・サンバーの発売は1961年2月のこと。その3年前に登場していたスバル360のコンポーネンツを利用して生まれたのがサンバーであり、この関係性はフォルクスワーゲンのタイプ1(ビートル)とタイプ2のそれとよく似たものである。スバル360のリアエンジン・レイアウトやサスペンション(前:トレーリングアーム/後ろ:スイングアクスル)をそのまま用いている訳だが、この設計の利点は、荷重バランスや乗り心地の良さ・積み荷へのショックの少なさを実現できることにあった。
当初はトラックのみであったサンバーだが、7ヶ月後にはライトバンを追加、1966年1月にはモデルチェンジで2代目へと生まれ変わる。以後のモデルチェンジでも、RR、四輪独立懸架、キャブオーバー・スタイルという特徴が連綿と受け継がれていったのはご存じの通りだ。本題の三代目サンバーは1973年2月に登場、当初は「剛力サンバー」の通称で親しまれた。この三代目は1982年まで9年の長きに渡って生産されたが、それだけに変更点も数多い。そしてそれは、軽自動車規格の変化にも応じたものであった。
剛力サンバーは、それまでのスバル360/R-2と共通である空冷タイプから、前年デビューのレックスと共通である水冷ユニットへと、エンジンを変更したことが最大の特徴である。サスペンションは先代から前後セミトレーリングアーム式を継承。「剛力」の名の通り、そのスタイリングはタフさをイメージさせるものとなっていた。
1976年1月には、軽自動車規格の改定が施行され、全長・全幅などが拡大されたほか、エンジン排気量の上限も550ccへと改められたが、サンバーもこれに応じて同年5月、エンジンを拡大したサンバー5へと進化。エンジンは2サイクルから4サイクルに変更され、排気量も490ccにアップしたEK22型(最高出力28ps)を搭載した。これはボディ自体は従来通りだったため、さらに1977年5月、車体を寸法枠いっぱいまで拡大したサンバー550を発売。エンジンも排気量を544ccに拡大したEK23型となったが、出力は28psのままである。
サンバー550は1979年にマイナーチェンジを実施、外観ではフロントグリルが変更されたのが大きな特徴で、それまでは左右ライトグリルを細いバーでつなぐ形状だったのが、新グリルでは中央部を太くがっしりさせた形となた。またこのとき、ハイルーフ仕様もラインナップに加わっている。さらに1980年11月には4WDモデルも登場、このように数々の変更を受けるとともに新機軸を打ち出してきた三代目サンバーは、1982年に四代目へとモデルチェンジされた。
サンバーと言えば赤帽!アオシマの心遣いがニクいキット
プラモデルの世界において、この三代目サンバーといえば、かつてのイマイによる1/24スケール・キットが有名な存在であろう。これはハイルーフの4WDモデルを再現したものであるが、イマイなき後はアオシマが金型を引き継ぎ発売している。元のキットは軽くバニング風(当時の意味での)にカスタマイズされた状態であったが、アオシマではノーマル風のスチールホイールのパーツを新規に組み合わせ、郵便車仕様などもリリース。
ここで採り上げたのは、このサンバーのバリエーションとして、アオシマが2012年に発売した赤帽仕様のキットを制作したものである。赤帽(全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会)と言えば、サンバーとは縁が深く、赤帽専用のサンバーをスバルが特別に用意していることでも知られる。スバルの保存車両にも、このイマイのキットと同じフロントマスクの、三代目後期型ベースの赤帽サンバー(トラック)があるようだ。
作例は、このアオシマの赤帽サンバー・バンを特に大きな改造はせず制作したものだが、各部に若干手を加えている。その最たるものはホイールで、これはそもそも同スケールのキャリィ用に起こされたパーツなのだが、イマイによるサンバーの金型は、実は1/24よりも少々大きめにできているため、サンバーには少々小さいのである。これを大径化するなど、作例に施された加工については、工程写真のキャプションや、追って公開する後編の記事をご参照いただきたい。
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