売るほど赤字の超ド級スポーツカー
1964年10月に開催された東京オリンピックは、その19年前の敗戦以来、日本が初めて経験した世界規模のイベントだった。戦後からの脱却と国際世界への復帰を真に果たした喜びを、国中の人たちが噛み締めたのである。そして、それと同じ頃に開発がスタートした一台のスポーツカーがあった。その3年足らず後、1967年に発売されたトヨタ2000GTだ。
【画像45枚】見事に再現された速度記録車レプリカとその制作工程を見る!
トヨタ2000GTは、我が国が戦後初めて世に問うことが出来た本格的なGTカーである。ロングノーズ・ショートデッキの古典的なプロポーションのボディには、美しい曲線と張りのある曲面が息づいている。ジャガーEタイプなど当時の名車に、あるいはシボレー・コルベア・モンツァGTといった試作車に近いイメージもあるが、独特な形状のサイドおよびリア・ウィンドウに、日本的な感性をも見出すことが出来るだろう。
その内側には、ロータス・エランもかくやと思われるバックボーンフレーム・シャシーがあり、エンジンはフロントの車軸よりも後ろ寄りに搭載されている(フロントミッドシップ)。サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーンで四輪独立懸架を構成、ブレーキは前後ともディスク、ステアリング機構にはラック&ピニオン式を採用するなど、そこに盛り込まれた技術はまさに当時最新のスポーツカーのものであった。
搭載されるエンジンは、車名の通り2L(排気量1988cc)のDOHC、3M型。これはクラウンに搭載されていた6気筒SOHCのM型をベースにヘッド周りをツインカムへと改めたユニットであった。ソレックス製キャブレターを3連装し、最高出力150ps、最大トルク18.0kg-mを発揮。これにより、重さ1.1トン少々のボディを最高速度215km/hで走らせた。現在では当たり前の技術であるDOHCも、当時は限られたスポーツカーだけのものであったが、このエンジンの設計にあたっては、開発協力にあたったヤマハによる部分が非常に大きかったともいう。
もうひとつ、ヤマハの協力ならではのものがゴージャスなインテリアだ。ウォールナット(後期型ではローズウッド)を使用した本木目のダッシュボード/ステアリングには、同社が楽器の製造で培ったノウハウが活かされていた。2000GTは、1969年8月のマイナーチェンジを経て1970年まで販売されたが、非常にコストのかかる車両であったため、何台売れても赤字であったと言われている。
このように、存在そのものがトヨタの技術力アピールであったと言ってもよい2000GTだが、その成果をさらに強調したとも言えるのが、発売前に行われたスピードトライアルだ。これは1966年10月1日から4日にかけて谷田部の高速自動車試験場で行われたもので、78時間・1万マイルの連続走行において最高速度を競うチャレンジである。途中、台風の影響に襲われるなどの試練を乗り越え、2000GTは3つの世界記録と13の国際記録を樹立している。
市販バージョンのキットをベースに各部を改修して再現!
こうして日本中から熱い視線を浴びたトヨタ2000GTだけに、そのプラモデル化は多い。最近でも、アオシマが新規に1/24スケールで後期型をリリースしたばかりである。前期型については、1990年代にハセガワが発売したキットが決定版と言ってよいものであろう。基本的にはエンジンの付かないプロポーションモデルであるが、ボディ形状は実車の美しさそのままに、組み立てやすく、またメタルインレットのエンブレム類も付くという豪華さである。さらにホワイトメタルのエンジンを付属させたスーパーディテール版もあり、これは何度か再販もされている。
ここでお目にかけているのは、このハセガワの2000GTをベースに、スピードトライアル挑戦車両を再現した作品だ。実車はいちおう現存しているのだが、実はこれはレプリカである。速度記録に用いられた車両は試作1号車そのものだったと言われており、残されている写真からもフロントフェンダーの盛り上がりなどが市販バージョンとは異なるのが確認できる。しかしその個体は行方不明となっており、現在トヨタ博物館が所蔵しているのは、レース出場車両をベースにしたレプリカなのだ。
限られた資料から、当時の実車の様子を想像をまじえて再現する――というのもロマンを掻き立てられる話ではあるが、この作品は思い切って割り切り、このレプリカ車両を模型として制作してみたものである。完成してみるとなかなかどうして、そのスパルタンな姿は実に魅力的だ。その工作の詳細は、工程の写真に付したキャプション、そして追って公開する後編の記事でじっくりとお読みいただきたい。
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