レース用モデル3種を1台に統合、それが911STR
「世界一のポルシェ911コレクター」として知られるマグナス・ウォーカー氏。そのコレクションの1台である911STRが、911Tをベースに911STと911Rのイメージを盛り込んでカスタマイズされた車両であることは、前編ですでに述べた。ここでは、その3つのモデルについて紹介しておこう。
【画像50枚】ポルシェ911STRの制作過程を思いっきり紹介!
その前に、ポルシェ911についてもあらためて触れておきたい。現在もその名が続く911は、ポルシェのフラッグシップにしてスポーツカーの代名詞とも言える存在である。現在の992型で八代目を数える911だが、初代901型のデビューは1964年のこと。ポルシェの基礎をなした356の後継車として開発されたモデルであり、エンジンは同じ空冷水平対向ながら、4気筒OHVではなく6気筒SOHCの新開発ユニット(2L、130ps)を搭載していた。また356との大きな違いは、356が試作1号車からしてオープンボディであったのとは異なり、911は居住性を重視して2+2のクーペとして設計されていたことである。
さて、911STRのベースとなった911Tとは、912(911のボディに356の4気筒エンジンを搭載)に代わって追加された廉価版モデルで、1967年に発売された。エンジンは110psにデチューンされていたが、これはただの廉価版ではなく、レース出場のためのベース車両という含みも持たされていた。また、1968年に911のホイールベースは40mm延長されている(全長は変わらない)ため、911Tにも2種類のホイールベースのモデルが存在することになる。911STRのベースとなった1972年式では、エンジンは2.4L(130ps)を搭載していた。
911Rは、ホイールベース延長前の911における最もレーシーなモデル。様々なチューニングにより210psへとパワーアップされたエンジンを搭載、ボディは徹底的な軽量化が図られ通常の911より300kgも軽く仕上げられている。1967年に発売された911Rは、生産台数23台といわれる希少な存在だ。前後ともバンパーが簡略化されているほか、フロントのホーングリルは省略されコンビランプは独立したものを装着、リアも円形の2連テールに変更されているのが外観の特徴で、これはウォーカー氏の911STRにも反映されている。
911STは1970年から1971年にかけて生産されたモデルで、270psを発揮する2.5Lエンジンを搭載。車重は911Rを上回る軽量化が施されていたが、ここから分かる通りこの911STもレース用に開発されたモデルであり、各地の耐久レースやラリーなどで活躍を見せている。この911STも、生産台数は24台というレアモデルであった。
フジミからプラモ化されたのは911Rのみ!
フジミ製1/24プラモデルの初代911のバリエーションとしては、上記3モデルのうちキット化されたのは911Rのみである。本来はショートホイールベースとなる911Rだが、フジミのキットは製品展開の都合上、そこは目をつぶって設計されているので、仕上がりの雰囲気は実車とかなり異なる。こだわるなら後輪の位置を前にずらす必要があるが、作例で再現した実車は1972年式がベースなので、ここでは特に関係のない話である。
911STRの前後デザインは911Rのイメージを模したものであるので、自然に考えれば911Rのボディをそのまま使用するのが近道のようだが、前編で述べた通り実車はフェンダーがワイド化されているので、ボディは911ターボのものを使用。その前後をナローの形状として改修した上で、911Rのバンパーをフィッティングさせる形で制作されている。このあたりについては前編の工程紹介でも詳述しているので、この後編では、その続きとなる工作について、制作過程写真のキャプションをお読み頂きたい。
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