ラリーのために生まれた危険なスーパースポーツ
「WRC制覇のために生まれた……」と形容されるクルマは数多いが、ランチア・ストラトスほどその表現がしっくり来るものもないだろう。全幅1750mmに対してホイールベース2180mmという短さ、「楔型」という言葉をそのまま形にしたようなシルエット。危険ですらありそうなクイックな操縦性を想像させるが、実際その通り、並大抵のドライバーでは扱い切れない1台だったという。
【画像79枚】エンジン搭載でリアルさを増したストラトスと、その工程を見る!
こうした特異なクルマが何もないところから生えてきた訳はなく、元になったショーカーが存在する。1970年にベルトーネが発表したショーカー、「ストラトス・ゼロ」がそれである。ストラトス・ゼロはあのカウンタックにも連なる未来的なデザインのモデルであったが、レイアウトはミッドシップであり、市販化を視野に入れた現実的なものでもあった。これに目をつけたランチアのワークス・ラリーチーム監督チェザーレ・フィオリオがラリー用ベース車としての可能性を読み取り、ここにベルトーネ、ランチア両者の思惑が一致、ランチア・ストラトスの誕生となったのである。
こうして生まれたランチア・ストラトスは、ストラトス・ゼロとはまた違った意味で異様なルックスをまとっていたが、デザインをまとめたのはあのマルチェロ・ガンディーニ。その車体構造は、ボディ中央部分を強固なモノコックとし、その前後にボックス型サブフレームを繋げたもので、エンジンはフェラーリのディーノ用V6 2.4Lを搭載していた。1971年に再びトリノショーでプロトタイプが発表された後、1972、1973年と試験的にWRCに参戦。本格的なWRCへの投入と、市販仕様の製造開始は、それぞれともに1974年からとなった。
1974年のWRC参戦はシリーズ後半からとなったが、この年にもうメイクス・タイトルを獲得。いかにストラトスがずば抜けた性能の持ち主であったか分かる。こうしてストラトスは1974、1975、1976年と3年連続でタイトルを勝ち取ったのだが、1976年には活躍の舞台を他へ移すことになった。世界メーカー選手権(現在の世界耐久選手権)がそれである。これは、フィアットがプロモーション効果を重視し、ラリーの主力を131アバルト・ラリーに移行させたことが理由として大きいようだ。世界メーカー選手権では思うほどの結果を残せずに終わったが、これもやはり、ストラトスがラリーのために生まれたことの証明であるかもしれない。
フジミ製ディーノのエンジンが意外なほどスムーズに載る!
さて、このように特異な個性を発揮したストラトスだけに、プラモデルの世界でも人気は高い。1/12スケールや1/20スケールの名作もあるが、1/24では、やはりハセガワが決定版と言えるものであろう。良好なプロポーション、ストラダーレから各ラリー仕様まで手広い展開、そしてそれぞれに的確なパーツがセットされていることなど、同社らしい良心的な内容が光る名作である。欠点と言えば言えるかもしれないのは、エンジンの再現がないということだ。
もちろんエンジンが載っていなければいけないという法はないのだが、ハセガワの方でも、このキットを改造してエンジンを搭載して欲しいと、モデラーに期待している節がある。カウルのスリットやホイールアーチからチラ見えする部分の再現のため、と言うなら本来不要な、リアセクションのサブフレームがしっかりとパーツ化されているからだ。実車のエンジンはディーノと同じV6、ならば……と、ハセガワのストラトスにディーノからエンジンを移植したのが、ここでお見せしている作例である。
ディーノのエンジンは、当然ながらフジミのキットから流用した。フジミと言えば、やはりディーノのエンジンパーツを流用してストラトスを製品化していたはずだが、長いこと再販がされていないのはどうしたことだろうか? それはさておき、フジミのエンジンは意外なまでにすんなりとハセガワ製ストラトスに載ったようだが、もちろんそれを成功させるための工作はあれこれと必要だ。それについては、工程写真のキャプションをお読み頂きたい。
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