実戦参加せずに終ったレースのためのスカイライン
「愛のスカイライン」のキャッチコピーで人気を博したC10系・日産スカイラインがモデルチェンジし、4代目・C110系となったのは1972年のことである。この世代はCMキャラクター「ケンとメリー」から、「ケンメリ」の愛称で親しまれた。機構的には先代C10系からほぼ変わりなく、L型6気筒エンジンに前ストラット/後セミトレのサスペンションという基本コンポーネンツ(GT系の場合)を受け継いだが、ボディは若干大柄に生まれ変わった。前述の広告戦略も功を奏して更なる人気モデルとなり、1975年のマイナーチェンジで後期型へ進化したあと、1977年まで生産されている。
現在でも高い人気を誇るケンメリ・スカイラインだが、中でも特に伝説的存在として崇められているのが、わずか197台のみが生産され、うち195台が市販されたと言われる2000GT-Rであろう。今さら説明するまでもないが、GT-Rは先代C10系にて登場したモデルで、当時はまだ高度なメカニズムであったDOHC4バルブのS20型エンジンを搭載した、レースのためのスカイラインである。ケンメリGT-Rが発売されたのはモデルチェンジの翌年1973年のことであるが、当時の世情から、このGT-Rがサーキットに姿を現すことはなかった。
そんな悲運のケンメリGT-Rにあって、ひときわ華やかな個体がある。市販に先立ち1972年の東京モーターショーに展示されたプロトタイプがそれだ。これはまさに「幻」に終わったレース仕様のプロトタイプなのだが、ダークブルーメタリックのボディにゴールドの塗り分けが実に格好良い。この個体は高橋国光氏とともに写っているポスターでも有名だが、嬉しいことに今も大事に保存されていて、各種展示などで目にすることもできる。もっとも、2007年に行われたレストアの際に、ボディカラーがダークグリーンメタリックに変更されているのだが。
なお、この車両はモーターショー出展時にはGT-Rを名乗っておらず、「スカイライン・ハードトップ2000GTレーシング」という名称であった。ここでお目にかけているのは、この2000GTレーシングを、フジミ製のノーマルGT-Rの1/24スケール・プラモデルを使って再現した作品である。
フジミのGT-Rにアオシマ製レーシングのパーツを移植
このレーシングについては、アオシマからその物ズバリのキットが発売されているが、あくまでそれ風の内容であるため、リアリティを追求していくと大改修になる。そこで作者は、「旧車特有のスリム感があり、エンジンも付属するフジミのケンメリGT-Rをベースにレーシング化する」という方向を決定。まず元となるボディ形状を確認するとホイールベースが短いようなので、写真のようにボディを切断してノーズを2mm延長。リアピラーのバッジの位置も異なるようなので、一旦切り抜いて別パーツ化した。
フロントマスクはアオシマのパーツから特徴的な部分を切り取って移植、スポイラーもアオシマのパーツを利用した。リアはガーニッシュを切り抜き別体化、バックパネルのリブを伸ばしランナーで自作。パネル自体も下に短いのでプラ板で延長した。オーバーフェンダーもアオシマのパーツを利用、全体に瞬着を盛り、そこから形を削り出している。ボンネットは切り離し、ボディに合わせて延長加工。裏側のリブ形状はプラ板で作った。ボディカラーは「色ノ源」3色とフィニッシャーズのブラック、シルバーで調色。タイヤ/ホイールはフジミのハコスカレーシングのものに変更、タイヤをサンドペーパーで削ってスリック化した。
シャシーもノーズに合わせて2mm延長。フジミのキットはエンジンこそ付いているがエンジンルームはまるで再現されていないので、プラ板でインナーフェンダーやファイアウォールを作り、エンジンベイを構成した。補器類は主にタミヤのハコスカから流用。コクピットはキットパーツのリアシート部分を切り取り、プラ板でバネルを再現している。フロントシートはキットパーツからヘッドレストを削除、センターコンソールもレス仕様に変更。シートベルトはモデラーズ製を使って2点式を再現している。
こうして完成するとやはり格好良いケンメリ・レーシングだが、実車がオリジナルカラーでなくなってしまったこともあり、実際のボディカラーがどのような色であったのかは、やや謎が残る。あるいは、現在のダークグリーンメタリックで制作するのもまた良いかもしれない。
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