「HYDROTEC水素燃料電池」技術の新たな用途を計画
ゼネラルモーターズは、プラットフォーム・イノベーターとしての成長を加速させる「HYDROTEC水素燃料電池」技術の新しい商業用途について発表した。現在開発中のHYDROTEC水素燃料電池プロジェクトでは、大型トラックから航空宇宙、機関車まで、自動車以外への発電事業の展開が計画されているという。自社が開発した第2世代HYDROTEC水素燃料電池である「パワーキューブ」を搭載した、以下のHYDROTEC水素燃料電池をベースとした発電機も計画中だ。
・常設の充電ポイントを設置せずに、EVに急速充電機能を提供する「モバイルパワージェネレーター(MPG)」
・ガソリンスタンドが送電網を拡張することなく、手頃な価格のDC急速充電設備を導入できるよう支援する急速充電器「EMPOWER」
・軍用キャンプや施設に、静かで効率的な電力を供給する「パレット型 モバイルパワージェネレーター(MPG)」
これらの燃料電池発電機はCO2排出量が少ないため、作業現場、ビル、映画のセット、データセンター、野外コンサートやフェスティバル会場などで、ゆくゆくはガスやディーゼルの発電機に取って代わる可能性があるという。また、停電時には住宅や中小企業向けに送電網経由の電力のバックアップや、一時的な代替としても利用することができる。
HYDROTEC水素燃料電池をベースとするこれらの発電機は、出力60~600キロワットのゼロエミッション発電と低騒音※1、低発熱※2を特徴としている。
※1 ディーゼル車両で50フィートの距離を、時速40マイルで走行した場合との比較
※2 ディーゼル車両の排気熱と、ハイドロテック水素燃料電池パワーキューブの熱を比較
モバイルパワージェネレーター(Mobile Power Generator:MPG)
GMはMPGの生産に向けて、米ユタ州の「リニューアブル・イノベーションズ社」にHYDROTEC水素燃料電池・パワーキューブを供給する。自社の燃料電池のハードウェアおよびソフトウェアと、リニューアブル・イノベーションズ社の電力統合・管理システムを組み合わせ、一時的に電力が必要な場所に送電網の拡張や、常設の充電設備の設置をすることなく急速充電機能を提供できる発電機を作る計画だという。
また、ミシガン州経済開発公社と米国陸軍の戦闘能力開発コマンド地上車両システムセンター(GVSC)から一部資金提供を受け、モバイル充電ステーションとしての技術実証実験を行うなど、MPGを含む複数の開発プロジェクトがすでに進行中だ。このMPGの取り組みは、2022年半ばに初めて実証される予定となっている。
さらにGMとリニューアブル・イノベーションズ社は、モバイルEV充電に加えて、急速充電器の「EMPOWER」でも協力している。EMPOWERは、ガソリンスタンドがより手頃な価格でDC急速充電設備を導入できるようにすることを目的としており、より大きな給電線や変圧器、時には変電設備の新設など、投資の回収が不可能な電力インフラの拡充に多額の投資をせずに、必要な急速充電設備を導入できるようにしており、既存のガソリンスタンド、国立公園や行楽地の近くなど、1年のうち限られた時期にだけ旅行者が訪れる地域に設置することが可能となっている。
リニューアブル・イノベーションズ社は、2025年末までに全米に500基のEMPOWERを設置する予定だという。
パレット型モバイルパワージェネレーター(Mobile Power Generator)システム
GMは独立式のパレット型MPGの設計も進めており、「GMディフェンス社」とも連携して、現在技術評価を行っている米国陸軍の戦闘能力開発コマンド地上車両システムセンター(GVSC)をはじめとする、防衛分野などの顧客にこの製品とEVソリューションを提供する予定だという。
このプロトタイプは60kWの発電機と同等のサイズで、従来のディーゼル発電機に比べて約70%高い電力を発生させることができる。またこのパレット型MPGは、バッテリーバックアップや出力調整など、通常のディーゼル発電機にはない機能を備えている。
大量に貯蔵された水素を電力に変換し、稼働中は排出ガスを一切発生しないので、フルロード運転時の騒音も従来型のディーゼルエンジンより小さく、排出される水を回収して現場で再利用することができる。
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