後継者の憂鬱を全身で体現!通好みではあった「二代目シーマ」【魅惑の自動車カタログ・レミニセンス】第47回

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後期型では3Lツインカムターボが復活

日産シーマ……と言えば、近頃ではバブル期を懐かしむという文脈で話題に上ることが再び多くなってきたようであるが、ここでは「現象」を巻き起こした初代ではなく、二代目シーマのカタログをご覧いただくことにしよう。

【画像22枚】初代のようなインパクトには欠けるが懐かしい二代目シーマを見る!

オーナードライバー向けの3ナンバー専用ボディ高級車として1988年に誕生したのが、初代シーマ(正確にはセドリック・シーマ/グロリア・シーマ)であった。好景気ばかりでなく税制面で有利になったこともあり(物品税引き下げ・自動車税率の細分化)、500万円を超える価格設定がもたらす特別感も功を奏して、ヒット車種となったのは有名なエピソードである。この椿事はテレビの一般ニュースなどでも驚きをもって伝えられるほどであった。

そんなシーマがどんなモデルチェンジを行うか、その注目度はかなりのものであったと思われる。初代シーマは、ベースとなったセドリック/グロリアよりも遅れて発売されたため、一般的なライフサイクルである4年を待たずして世代交代された点も、その注目度を増す要因となったのではないだろうか。

そんな状況で1991年8月に登場した二代目シーマは、車名からセドリック/グロリアの冠が取れて、シーマという独立した車種となったのも小さくない変化であったが、様々な意味で初代よりも上品さを増していたのが特徴であった。まず、ボディは4ドア・ピラーレスハードトップから、Bピラーとプレスドアを持つ4ドア・セダンへ。スタイリングという意味では、フロント周りなどに初代の面影を残してはいるが、強く絞り込まれたリアと、さらに小さくなったテールランプに、英国製高級サルーンを思わせる趣があった。

暴力的な加速でシーマを印象づけたVG30DETエンジンは二代目では身を引くことになり、代わりにセールスポイントとなったのが「V8」である。これは、先にインフィニティQ45で登場していたVH45DEのストロークを短縮し、排気量を4.5Lから4.1Lへと縮小したもので、最高出力は270ps。エンジンはこの1種類のみであった。

ベースとなったY32セドリック/グロリア同様、レイアウトはFRで、サスペンションは先代の前ストラット/後ろセミトレから、前ストラット/後ろマルチリンクへと進化。また、先代で用意されていたエアサスの代わりに、二代目シーマでは油圧アクティブサスペンション車を設定。さらに、T-TCS(ビスカス付きトラクションコントロール)が新技術として採用されていた。

インテリアはもちろん贅を尽くしたもので、ダッシュボードのデザインなどはセドグロに似てはいるものの、全くの専用形状。オレンジ味の強いタンの本革なども用意され、コンセプトである「4座すべてを重視したサルーン」を体現していた。また、これもセドグロと共通のギミックとして、21ヶ所に小型ランプ(間接照明となる位置も含む)を仕込んだトータルコーディネート室内照明が全グレードに標準装備となっている。

こうして登場した二代目シーマであったが、全体の仕上がりが「通好み」な方向に寄ってしまったためか、いささかインパクトに欠け、初代のようなカリスマ性を持つには至らなかった。登場翌年の9月には4WDのS-Fourを追加、1993年9月にはマイナーチェンジを行い、この時新たに3Lモデルもラインナップに加えている。これは初代と同じくVG30DETを搭載したものであった。そして1996年6月には三代目へと移行している。

表紙をめくって最初の見開きは、シリーズ全体の構成を俯瞰して述べる部分。当初は4.1Lのみで、3Lモデルはマイチェンによって加わったのだが、3Lが廉価版ということではなく、あくまで個性の異なるふたつの対等なシリーズであるとされている(もちろんこれは建前だ)。

細かく見るとコストダウン事情も読み取れる後期型カタログ
さて、ここでご覧いただいているカタログは、この二代目シーマの後期型のものである。前述の通りマイナーチェンジは1993年9月に行われているが、このカタログには表4(裏表紙)に「内容は1993年11月現在のもの」と但し書きがついているため、マイチェンの2ヶ月後のものと考えてよいだろう。11月の時点で何か改訂すべき小変更があったのかどうかは不明である。寸法は301×247mm(縦×横)、ページ数は表紙を含めて全36ページ。

カタログ自体は特に奇をてらった部分もない、常識的な作りであるが、イメージ写真の背景が合成であるのがまるわかりなのはいかにも日本車らしく、少々残念なところ。初代シーマの暴力的な加速のことなどを思えば、高級車らしく性能面のアピールは控えめで、代わりに安全性がまず主張されているあたりには、大きな違いが感じられる。もっとも初代でも、カタログ上ではさほど走りを主張してはいなかったと思うが……。

二代目シーマといえば個人的に思い起こされるのは、筆者の通った高校の教頭先生である。筆者が3年へと進級した時点で着任した新たな教頭が乗っていたのが、当時新車の二代目シーマ前期型だったのだ。鼻下に口髭を蓄えたこの教頭先生は絵に描いたようなダンディな紳士で、シーマの似合いっぷりと併せて、女子生徒がざわめいたことをよく覚えている。学校へ何をしに来たんだこの人は、という感じであったが、しかしこのシーマは新車だというのに、すでにボディとバンパーで色味が合っておらず(色はシルキースノーパールだった)、少々興覚めな思いがしたことであった。

カタログ協力:宇佐美健太郎

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2024/05/22 17:40

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