【比較試乗】財布のヒモを握っているのは実はオクサマ? キャラ立ちコンパクトSUV。オクサマはどれがお好み!?「ボルボ EX30 vs レクサス LBX vs BMW X1 vs ミニ・カントリーマン」

今回は、姿、形、走り、インテリア、パッケージなど、個性的なキャラクターを持ったコンパクトSUVを集結。見晴らしがよく運転しやすいSUVとして、世のオクサマ方にも人気のコンパクトSUVだか、あえてそのモデルを選ぶ+αの魅力とは? それぞれのキャラクターを探ってみた!

遊び心のあるミニ、ジェントルなX1

近頃国内でもオールインクルーシブの宿泊施設が増えている。滞在中は食事や飲み物はもちろん、スパやエステといったリラクゼーションも、プールやゴルフといったアクティビティも宿泊料金に含まれているから、旅行中くらい節約だの家計管理だのから解放されてのびのび過ごしたいという願いを叶えられるのが魅力だ。たとえチェックアウト後に精査してみたら割高だったとしても、リラックスした時間は金を出してでも買えというのはおばあちゃんの知恵袋である。
人が乗れてモノも積めて運転しやすくしかもファッショナブルなSUVは、オールインクルーシブリゾートにも近しいように思う。中でも日常使いに便利で贅沢な時間も得られるコンパクトなプレミアムSUVは、1泊で行ける近場の高級リゾートのようなものだ。

MINI COUNTRYMAN S ALL4「史上最大のミニ」はこれまでになく広々」

カントリーマンはワイルドなアクティビティが揃ったテーマパークのリゾートを思わせる。大きな体躯のサイドビューはさながら小ぶりのレンジローバーのようで、ミニらしさとはなんぞやと丸目ではないヘッドランプに問いかけてしまったが、ドアを開けて乗り込めば、ミニらしさとは遊び心なりと大きく書いてある。

立体的な織目がおしゃれなグラデーションカラーのトリムに囲まれた室内は、「史上最大のミニ」というだけあって後席も含めてこれまでになく広々している。マルチカラーのステッチが施された目にもリラクシングな革シートはやわらかく居心地がいい。カジュアルなのに質感が高いインテリアは、ミニの真骨頂だ。床下収納も用意された荷室容量はフル乗車時でも505Lとたっぷりで頼りがいもある。大きくなる度に古参ファンから「ミニじゃない」と皮肉られてきたが、家族が増えても我慢せずミニブランドに乗り続けられる幸せを寿ごうじゃないか。

クロスオーバーから名称変更されたMINI COUNTRYMAN S ALL4/は全てにおいて刷新されたエクステリアおよびインテリアデザインとサイズアップに伴い、新型は、よりSUVらしく力強さを飛躍的に向上。素材にはリサイクルポリエステルやリサイクルアルミニウムを利用し、未来を見据えた次世代モデルだ。ラゲッジ容量は505~1530Lを確保。

運転席に座ると、初期クラシックミニのセンターメーターをオマージュした、直径240mmの大きな円型有機ELディスプレイとその下に横一列に並んだトグルスイッチが中央に配されている。そこにエンジンスターターも、ギアセレクターも、パーキングブレーキやエクスペリエンスモードのスイッチも収まっているから、センターコンソールはすっきりだ。
走り出すと、ミニといえばゴーカートフィールという覚悟が肩透かしを食らう。むしろ大きなタイヤとロングストロークを感じさせるおおらかなクロカンっぽい乗り心地で、「さあ冒険に出かけよう」とアドベンチャーランド風のナレーションが聞こえてきそうだ。それでいて、高速になるとシャキッと直進するから手練れである。

BMW X1 M35i xDrive「M35iは、むしろ素のX1より洗練されている」

X1もまた予想外の乗り心地に驚かされた。M35iと聞いて硬くてゴツゴツに突き上げられるかと思いきや、とってもジェントル。むしろ素のX1より洗練されていて、リアタイヤに近い後席でもいたって快適だ。ダークな色調もあってカントリーマンより狭く見えるものの、頭や肩周りはもちろん、前席のシートバックがえぐれていて膝下も十分な余裕がある。
運転席で改めて感心したのはカーブドディスプレイの見やすさだ。首都高では左のパドルシフトを長押しならぬ長引きして、雄々しいエンジンサウンドとともにパワートレインとシャシーシステムをスポーティなセッティングにするMブースト機能を起動し、高速コーナーを楽しんだ。高い視点から必要な情報を的確に把握しながら、思いのままにコーナーをねじ伏せていくのは気持ちがいい。筋トレも食事制限もせず、筋骨隆々の全能感を解放感とともに味わえるなんて魔法のパワードスーツだ。

待望のMパフォーマンスモデルであるBMW X1 M35i xDriveは、最高出力317ps/最大トルク400Nmを発揮する2Lエンジンに、7速DCT、4輪駆動システムxDrive、機械式LSD、Mサスペンション等々を組み合わせることでダイナミックな走りを提供。X1には電気自動車のix1も同時にラインナップ。ラゲッジ容量は540~1600Lを確保。

ルックスもまた都心にそびえ立つラグジュアリーホテルみたいに、有無を言わせぬ強さがある。艶消しグレーのゴツっと精悍なボディと、メタリックのドアハンドルやスピーカーカバーがキリっと効いた赤と黒の革内装に、中3の愚息はひと目見て心を撃ち抜かれたようで、「オレ将来このクルマ買う」と宣言していた。そう言われてみれば彼が欲しがっているゲーミングチェアもこんな色と形だったから、強さを求める者が惹かれるデザインなのだろう。

異世界のEX30とおもてなしのLBX

EX30に乗り込んだらすっきりしすぎてなんだか落ち着かない。ここはドラゴンボールの精神と時の部屋だろうか。ステアリングホイールの奥にはなにもなく、ダッシュボード中央に縦型ディスプレイがひとつ置かれているだけだ。
薄型なのに体に柔らかくフィットするシートはじめ、クールな色調にもかかわらず寒々しくないのはさすがのスカンジナビアンデザインだが、ミラーの調整すらセンターディスプレイをタッチして車両コントロールの階層までいかねばならないのは面倒で、シート位置を調整してしのいでしまった。

VOLVO EX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGE「爽やかで濁りのない操舵感はEX30の魅力」

走り出そうとスタートスイッチを探しても、ない。ブレーキを踏んでステアリングコラムから伸びるシフトレバーでDを選ぶだけでいいという。徐行すると車外に向けて発されている車両接近警報音が、車内ではファの音程だけが残って響くのが気になる。紛らわせようと音楽をかけたら、フロントウインドーの付け根に配されたハーマンカードン製サウンドバーがよく鳴り、定位もいいので驚いた。これでドアからスピーカーを廃してドアパネルを薄くし、室内空間を広げているとはすごい発明だ。
勝手の違いに戸惑うたびに、「あなた昔の人ね」と言われているようで凹むが、アクセルペダルを踏んで走り出すと途端に気分が上がる。およそ1.8トンの車重をものともしない爽やかで濁りのない操舵感に、BEVならではの無段階の加速がよく似合う。剛性の高い後輪駆動車ならではのすっきりした走りはプリミティブな運転の楽しさで、エシカルでミニマムでデザインコンシャスなおしゃれリゾートで、焼鳥と芋焼酎にありつけた気分だ。

ボルボ史上最も小さなBEV SUVである、VOLVO EX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGE。標準的な機械式立体駐車場に対応するサイズに、ボルボ車に期待される安全性、サステナビリティ、最先端のテクノロジーとこだわりのスカンジナビアンデザイン、そして、新しいユーザー体験のすべてが凝縮。電池容量69kWhのバッテリーを搭載し、一充電航続距離は560kmを実現。

その点LBXは圧倒的に気がラクで、とことんストレスがない。筋肉質なリアフェンダーの膨らみを持つ力強いSUVルックだけれど、乗り降りはごく自然にできるし、視界は広いけど腰高な印象はない。主張の少ない室内は物足りない気もするけが、やっぱり物理スイッチが残されているのは快適だし安全に使えてホッとする。扱いやすいコンパクトなボディは見切りもよく、回転半径5.2mと小回りも利き、全高1545mmと立体駐車場もクリアするから街での日常使いにぴったりだ。
しかもゼロ発進からの加速も、ステアリングもリニアで身体感覚にフィットするから、思いのままに動けるのがいい。やや突き上げは感じるが収まりはよく、タイヤサイズがカントリーマンと同じ225/55R18だと後から確認して驚いたほど乗り心地は上質だ。後部座席の空間はちょっと狭いから基本は2人乗り以下で使いたいが、乗り心地が前席より大きく劣ることはないから、ママ友を乗せても嫌な顔はされないと思う。

LEXUS LBX COOL「LBXなら大きい高級車から乗り換えの方にもオススメ」

肉厚なモーターの後押しを得た加速は息つくことなく余裕があって、高速道路の合流もすんなり。高速での安定感はディメンションからしたらちょっと訳が分からないくらいの安定ぶりで、ロングドライブもリラックスしていられる。意地悪く3気筒エンジンのダサい振動や音を探ろうとしても見つからないし、不思議になるほど仕上がっている。これなら大きな高級車から乗り換えようというシニアにも安心してすすめられる。
リラックスするなら源泉かけ流しの湯船に浸かって畳に素足が最高だよねと言いながら、極上のベッドで眠りたい。そんな日本の高級宿がさらっと提供する贅沢は、世界的にはとても貴重な存在だ。

クラスレスなコンパクトクロスオーバーのLEXUS LBX COOL。コンパクトながらも走りやデザインも上質であるサイズのヒエラルキーを超えたクルマ作りを目指し、レクサス専用開発を施したTNGA プラットフォーム(GA-B)を初採用。さらに新開発ハイブリッドシステムを搭載し、ドライバーとクルマとの一体感を徹底的に追求し高い運動性能を実現。

BMW X1 M35i xDrive

BMWカーブド・ディスプレイの採用や、iDriveコントローラーの廃止など、インターフェイスにおいても大幅なデジタル化が行なわれている。身体にしっくりと馴染むMスポーツシートとMシートベルトを装備する。

【SPECIFICATION】BMW X1 M35i xDrive
■車両本体価格(税込)=7,860,000円
■全長×全幅×全高=4500×1845×1625mm
■ホイールベース=2690mm
■車両重量=1680kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1998cc
■最高出力=317ps(233kw)/5750rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/2000-4500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:245/45R19
問い合わせ先=BMWジャパン 0120-269-437

【AKIRA’s お気に入りPOINT】BMW X1 M35i xDriveの乗り心地のよさ

Mなんてビュンビュン駆けぬけちゃう人の専用機だと思って食わず嫌いしてたらもったいないくらい、ジェントルで高級な乗り心地。特に後席はSUV特有の揺さぶられるような不快感がないので、車酔いもしにくそう。

MINI COUNTRYMAN S ALL4

温かく広々とした印象を与えるインテリア。ひときわ目を引くのが、円形有機ELタッチスクリーンセンターディスプレイ。インパネとして機能するだけではなく、車載インフォテインメントおよびアシスタンスハブとしても活躍。

【SPECIFICATION】MINI COUNTRYMAN S ALL4
■車両本体価格(税込)=5,660,000円
■全長×全幅×全高=4445×1845×1660mm
■ホイールベース=2690mm
■車両重量=1640kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1998cc
■最高出力=204ps(150kw)/5000rpm
■最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1450-4500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:225/55R18
問い合わせ先=BMWジャパン 0120-3298-14

【AKIRA’s お気に入りPOINT】MINI COUNTRYMAN S ALL4の楽しいインテリア

トグルスイッチでエクスペリエンスモードを選ぶと、効果音と共にインテリアの雰囲気が変えられるのが楽しい。インテリアトリムと共通の織地にくるまれたフタつきの小物入れも宝箱みたいでかわいくて、いい匂いのリップとハンドクリームを入れたい。

LEXUS LBX COOL

リラックスしてクルマとの一体感を楽しめる室内空間目指し、インテリアは「Cool」「Relax」といった2つの世界観のパッケージを用意。Coolは、本革とウルトラスウェードとステッチ&刺繍で、シンプルで洗練されたモダンな空間を表現。

【SPECIFICATION】LEXUS LBX COOL
■車両本体価格(税込)=4,600,000円
■全長×全幅×全高=4190×1825×1545mm
■ホイールベース=2580mm
■車両重量=1320kg
■エンジン種類/排気量=直3DOHC12V+モーター/1490cc
■最高出力=91ps(67kw)/5500rpm
■最大トルク=120Nm(12.2kg-m)/3800-4800rpm
■モーター最高出力=94ps(69kw)
■モーター最大トルク=185Nm(18.9kg-m)
■トランスミッション=電気式無段変速機
■サスペンション=前:ストラット、後:トーションビーム
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤサイズ=前後:225/55R18
問い合わせ先=レクサスインターナショナル TEL0800-500-5577

【AKIRA’s お気に入りPOINT】LEXUS LBX COOLはこのスベスベの手触り(笑)

試乗した「Cool」は、ウルトラスウェードがふんだんに使われていてスウェード好きにはたまらないインテリア。特に乗り降りの度に触れるドアハンドルがスウェードタッチなのは、毎回上質感が体感できて満足度が高い。

VOLVO EX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGE

北欧の自然をイメージした2種類のインテリアを設定。いずれもシート素材とデコラティブ・パネルには再生可能な素材やリサイクル素材を使用し、テーマに合わせて美しくカラーコーディネートされる。写真は爽やかな涼しさを表現した「ブリーズ」。

【SPECIFICATION】VOLVO EX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGE
■車両本体価格(税込)=5,590,000円
■全長×全幅×全高=4235×1835×1550mm
■ホイールベース=2650mm
■車両重量=1790kg
■モーター最高出力=272ps(200kw)/6500-8000rpm
■モーター最大トルク=343Nm(35.0kg-m)/5345rpm
■バッテリー容量:69kWh
■トランスミッション=1速固定式
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:ディスク
■タイヤサイズ=前後:245/45R19
問い合わせ先=ボルボ・カー・ジャパン TEL0120-922-662

【AKIRA’s お気に入りPOINT】気持ちいい後席の解放感

後席の乗り心地は正直なところゴトゴト感が否めないが、大きなパノラマガラスルーフからのとびきり解放感のある眺めは最高だ。前席のシートバックを蹴って汚さないように靴を脱がせた上で、子供に体験させてあげたい。

【AKIRA’S パーソナルチョイス】VOLVO EX30

爽やかで濁りのない操舵感が気持ちよくて、こんなSUVがあるんだ⁉といううれしい驚き。自動車の未来は簡単には見通せないけれど、自分が運転してるっていう肉体感覚と楽しさは手放さずいられそうな希望を感じた。

 
フォト=郡 大二郎 ル・ボラン2024年7月号より転載

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