【国内試乗】ホンダイズムここにあり! 走りが楽しめる旗艦車「ホンダ・アコード」

いまや北米が主戦場のグローバルモデルとして展開されている、アコード。全長5mクラスにまで成長した11代目を数える新型は、ホンダらしさ溢れる魅力が詰まった個性的なモデルだった!

フォーマル一辺倒のセダンではあらず

「あれ? いま何に乗ってるんだっけ? あ、アコードだ。あれ? 後輪駆動になったんだっけ?」試乗中、コーナーを曲がるたびに何度も何度も自問自答。軽い混乱のなか、試乗コースの芦ノ湖スカイラインを走りきるころにようやくその異常なまでのハンドリング性能に気づいた。11代目のアコードは、言ってしまえばFRのように気持ちよく曲がるクルマ。あまりにコーナリングが楽しくて、夢中でドライブを楽しんでしまった。

いい意味で気持ち悪いくらいと表現したくなるほど、どんどんコーナー内側に頭を向けていく。まるで後輪駆動のクルマのようだ。ワインディングが楽しい!

アコードと聞いて、ハンドリングが楽しいクルマだと表現する人は、過去にユーロRに乗っていたなど一部の人だけかもしれない。ましてや今回投入された11代目のアコードは、フォーマルな雰囲気も持ち合わせる、どちらかといえばプレミアム志向のセダン。しかし、全長5mクラスにまで拡大した端正で立派な体躯からは想像できないほど、走りをしっかりと楽しめるモデルに仕上がっている。

エンジンよりもモーターの方が出力もトルクも高いプラグインハイブリッド。パワフルさを持ち合わせてはいるものの、エンジンの存在を主張するのはスポーツモード時くらい。

このゴキゲンなハンドリングの秘密は、従来型から踏襲されたトルクベクタリング機能「アジャイルハンドリングシステム」に加えられた「モーションマネジメントシステム」という新技術。この技術は、3Dモーションセンサーを使った前荷重制御で、走行用モーターとブレーキを統合制御して前輪のグリップ力を高めてくれる。

タイヤサイズは235/45R18だが、乗り心地は抜群にいい。

コーナー進入前にきっちりと減速をしコーナリング中はアクセル操作で向きを変えていく、まるでFRのような走り方ができてしまうから、これがおもしろい。5mクラスの大型セダンに乗っているということを完全に忘れるほど、機敏な走りを披露してくれた。

水平基調デザインのコクピットは、質感の高い仕上がり。ADASには国内初のホンダセンシング360が採用されている。

特筆すべき点はほかにもあったが、特に印象的だったのは乗り心地だ。とにかくしなやかで、頭が揺すられないフラットライド感。多少荒れた舗装を通過しても、不快な突き上げなどは感じられなかった。電子制御可変ダンパーの恩恵ももちろんあるが、これだけ乗り心地がよければ後席から不満が出ることも少ないだろう。

パーキングアシストの精度も驚くほど高かった。

質感の高さは、内外装のデザインや素材からも感じられる。外装では薄型化した灯火類が水平方向へ広がり、従来モデルから踏襲された水平のベルトラインとともに、ワイド&ローの伸びやかなボディフォルムを強調。エレガントな雰囲気を作り出している。

ホンダ独自のM・M思想(マンマキシマム・メカミニマム)が生かされ広々としたインテリア。

インテリアは、ほかのホンダ車にも使用されている水平基調のデザインを採用しながらも、フラッグシップモデルらしく質感高い仕上がり。コクピット周りのアクセントにもなっている、センタークラスター真ん中のダイヤルセレクター「エクスペリエンスセレクションダイヤル」には、スマートウォッチのようにベゼルデザインを変えられる時計機能を装備。エアコンやアンビエント照明が操作できる機能も兼ね備えている。

これらのほかに、新開発のモーター内蔵CVTが組み合わせられた2Lのプラグインハイブリッドや、国内モデル初搭載の最新型ADAS「ホンダセンシング360」、Google完備のインフォテインメントシステムなど、ここには紹介しきれない魅力が多く詰まった、新型11代目アコード。気になるのは545万円というプライスタグだろう。しかし、そこは気にせずぜひ一度試乗してみてほしい。コスパ抜群な1台ということは走り出してすぐにわかるだろう。

ラゲッジルームはハッチゲートではなく独立トランクで、奥行きが深いタイプだ。

もうこの大きさとクオリティならアコードよりももっとプレミアム性の高い、例えばビガーやインスパイアのような名前のほうがしっくりくると感じたぐらいの完成度の高さ。現在のモノグレード展開のまま終わるのは、あまりにもったいない。今後はもっと個性を前面に打ち出した、例えばタイプSやRSなどのグレード展開も十分に考えられる。そのくらい可能性とポテンシャルがあるモデルだ。

オーソドックスな3ボックスではなく5ドア風のクーペフォルム。流麗で端正なフォルムが特徴的だ。テールランプは横方向に広がりのあるデザインを採用している。

【Specification】ホンダ・アコードe:HEV
■車両本体価格(税込)=5,449,400円
■全長x全幅x全高=4975x1860x1450mm
■ホイールベース=2830mm
■トレッド=前:1590、後:1615mm
■車両重量=1580mm
■エンジン型式/種類=LFD/直4DOHC16V
■内径×行程=81.0×96.7mm
■総排気量=1993cc
■最高出力=147ps(108kW)/6100rpm
■最大トルク=182Nm(18.6kg-m)/4500rpm
■モーター形式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力=184ps(135kW)/5000-8000rpm
■モーター最大トルク=335Nm(24.2kg-m)/0-2000rpm
■燃料タンク容量=48L(レギュラー)
■燃費(WLTC)=23.8km/L
■トランスミッション形式=CVT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:ストラット/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ=前後:235/45R18
問い合わせ先=本田技研工業 TEL0120-112-010

リポート=青山朋弘 フォト=山内潤也 ルボラン2024年6月号より転載

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