人気のコンパクトクーペSUVであるX2が、2代目へとフルモデルチェンジを果たした。X1と同様にBEVも同時にリリース。気になる走りの仕上がりはいかがなものか? ポルトガルで行なわれた国際試乗会からの第一報をお届けする。
美しさに磨きをかけたクーペスタイルSUV
BMWはSUVを独自にSAVかSACと呼んでいる。前者は一般的なSUVで車名にはXの後に奇数が、後者はクーペスタイルとなってXの後は偶数になる、というのはご存じの通りだ。
SACが初登場したのは2008年のX6からで、その後、よりコンパクトなモデルも追加された。クーペスタイルは、ルーフが後端に向けてなだらかに下がっていくので後席のヘッドルームを確保しづらい。大きなX6では問題なかったが、X4では後席の座面を薄くするなどで対応していたが、2018年登場の初代X2は、X1に比べれば低くてスポーティなもののルーフラインはSACに近く、X6とX4とは明らかに異質だった。
ところが、初のフルモデルチェンジを受けて2代目となった新型X2は美しいルーフラインを得て、はっきりとSACになった。初代と比べると全長が194mm長く、全高は64mm高くしたことで実現した。全長4555×全幅1845×全高1575mmのボディサイズは、初代に比べてそれほど取り回しが悪くなった気はしないが、日本にとっては立体駐車場対応の1550mmを超えてしまったことは少々残念ではある。
振り返ればX1も初代は1550mm以下で都市部ではウリになっていたが、今ではSAV、SACともに全高1550mm以上しかない。欧州ではコンパクトなクーペスタイルSUVが流行中で、ルノー・アルカナなども大人気。ライバルに対抗するには、最大の魅力である美しさに磨きをかける必要があったことは理解できる。また、後席に座ってみれば居住性は満足度が高いことは歓迎すべきだろう。ヘッドルームに余裕があるだけではなく、対X1比でホイールベースが22mm長いのでレッグルームも広い。SAVよりもSACのほうが後席も快適で、美しさと両立されているのだ。ラゲッジルームも先代に比べて90L増となっている。
インテリアは10.25インチのコクピットディスプレイと10.7インチのセンターディスプレイを一体化したカーブドディスプレイをはじめX1と共通している。
プラットフォームはBMWグループのFWD系に使われるUKLをベースに進化させたFAARで、X1とハードウエアの多くを共有。日本仕様はガソリン2Lターボで204psのxDrive20iと、同じくガソリン2Lターボながら317psとハイパワーなM35ixDrive、そしてBEV(電気自動車)のiX2 xDrive30の3車が導入される。本国には3気筒1.5LガソリンやFWDなども用意されるが、比較的に高性能なモデルが取り揃えられた。
新型X2の国際試乗会はポルトガルで行なわれた。そういえば先代モデルも同じ地で試乗したのだが、乗り心地はちょっと硬めだったことを思い出した。チーフエンジニアがスポーティな乗り味が大好きだったこと、それゆえX1と差別化するため思い切ってハードに締め上げたこと、ランフラットタイヤが標準だったことなどが相まって、日本よりも路面状況が悪い彼の地ではゴツゴツ感があった。その後、時間とともに乗り心地のカドがとれていって快適性とのバランスが良くなっていったのだが、新型は果たしてどうなのだろう? と、試乗を始めることとなった。
トピックスは新OS搭載と洗練された乗り心地
ところが、そんな心配をよそに、新型X2は大きな凸凹が続く道をスムーズに走り始めた。大入力があってもガツンとした突き上げはなく、上質な足捌きを見せるのだ。引き締まったスポーティなフィーリングはあるものの、短いなかでもしなやかにストロークしていて不快さがない。高速道路でも快適そのものだった。乗り味はX1に似ているが、ホイールベースが長いので前後に揺れるピッチングが抑えられているのだろう。コンパクトカーとは思えない落ち着きのある動きだ。ランフラットタイヤではないことにくわえ、電子制御のアダプティブダンパーが標準装備されていることも快適性には有利に働いている。ドライビングモードを切り替えてもダンパーの硬さはかわらず、路面状況等に対応して一定の可変をするという。
今回はM35i xDriveとiX2 xDrive30の2台に試乗したのだが、乗り心地を比較すると、M35iは全般的にバランスが良く、iX2は350kgほど車両重量が重い分の善し悪しがあった。重いことは悪いことばかりではなく、上下動などがゆったりとして落ち着いた乗り味になる。iX2はまさにそれが心地良く、高速巡航などはM35i以上に快適だ。ただし、凹凸が連続する場面などで、上下動を抑えようとすると、重さを押さえつけるためにボディが伸び上がるのを規制しようとする動きが、やや不快に感じることもあった。とはいえ、些細なもので、全般的には快適といえる。
快適性が高いとはいえ、ワインディングロードではBMWの本領を発揮する。X1もそうなのだが、ステアリング周りの剛性感が圧倒的に高く、操作に対しての正確性、フィードバックの良さなどが他のFWDにはないレベルなのだ。高速道路を直進しているときには路面や横風で進路を乱されそうになっても自然な感覚で修正できるので疲れ知らずでロングドライブが可能。コーナーでは切り始めからタイヤと路面のコンタクト状況がきっちりと伝わってきて、思い通りのラインを描いていける。M35iはわかりやすいスポーティさがあるが、iX2のほうが前後重量バランスに優れているので旋回性では負けていない。
M35iは、BMWのエンジンは4気筒でも十分にスポーティであることを再認識させてくれた。アクセルを踏み込めば嬉々として回転をあげていき、レブリミットまで一直線。その生き物的な感覚はやはり捨てがたい。iX2はトルクが図太く、重さがあっても0→100km/h加速でM35iに0.2秒しかひけをとらず、初速がいかに速いのかがわかる。ドライバビリティの良さやシームレスな加速感などはエンジン車に真似できないところだが、心躍るフィーリングではM35iにはかなわない。ただし、iX2はコンパクトなBEVとしてはナンバーワンのスポーティさを持っているのは確かだ。
X2のトピックスとしてオペレーションシステム9.0が初搭載された。サードパーティのアプリが使用可能でTverやNHKオンラインなどが採用されるようなので出先で充電するときなどは重宝するだろう。iDriveのダイヤル式コントローラーがX1同様になくなったのが残念だが、将来的には全車でなくなるようで、その分、タッチパネルや音声入力などの使い勝手は進化している。
あまりにスポーティすぎると乗る人を選んでしまうが、新型X2はいい走りを堪能したいが普段は快適に過ごしたいというユーザーにマッチするモデルだ。先代以上に人気者になることは必至だろう。
デュアルエキゾーストテールパイプ、Mエアロダイナミクスパッケージ、一体型ヘッドレストを備えたMスポーツシート、Mスポーツサスペンション等を採用したM35i。キドニーグリルが光るアイコニックグローは全車に標準装備。
【SPECIFICATION】BMW・X2 M35i xDrive
■車両本体価格(税込)=8,100,000円
■全長×全幅×全高=4555×1845×1575mm
■ホイールベース=2690mm
■車両重量=1770kg
■エンジン形式/種類=直4DOHC16Vターボ
■総排気量=1998c
■最高出力=317ps(233kW)/5750-6500rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/2000-4500rpm
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:245/40R20
【SPECIFICATION】BMW・iX2 xDrive30 Mスポーツ
■車両本体価格(税込)=7,420,000円
■全長×全幅×全高=4555×1845×1560mm
■ホイールベース=2690mm
■車両重量=2095kg
■モーター形式/種類=交流同期電動機
■モーター最高出力=272ps(200kW)※システムトータル
■モーター最大トルク=494Nm(50.4kg-m)※システムトータル
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=66.5kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=417-449km
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:245/45R19
問い合わせ先=BMWジャパン 0120-269-437
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