【比較試乗】ライフスタイルに合わせてセダン、SUV、スポーツカーetc. アナタならどのボディタイプを選ぶ?「BMW 2シリーズ グランクーペ vs M2クーペ vs iX2」

2シリーズには現在、セダンタイプのグランクーペ、クーペ、MPVのアクティブツアラー、SUVのX2、電気自動車のiX2、スポーツカーのM2と、さまざまなボディタイプやパワートレインが用意されている。その中から今回は、グランクーペ、M2、ix2をピックアップし、それぞれの魅力を探るべくロングツーリングを敢行。長野県に美味しいぶどう農家があると聞きつけて訪れてみた!

長野・熊谷農園にM2クーペで出発!

「凄いぶどうがある」と、親しくさせていただいているシェフがまるでよくない取引みたいにこっそり教えてくれた。こだわりまくった農法のため数が取れず、限られたレストランやホテル、あとは個人的に繋がりのある人にだけ販売しているという。9月の最盛期に長野県東御市の生産者を訪ねると聞いて、ドイツ車好きのシェフをM2クーペで釣ってドライブに誘った。一方、旨いもの好きの編集者も凄いぶどうであっさり釣れた。せっかくならキャラの立った2シリーズ3台を味わいながらツーリングを楽しもうと、長野へのぶどうの旅が整った。

BMW M2 COUPE/インパネには最新のカーブドディスプレイを採用し、トランスミッションは6速MTまたは8速ATが選択可能。Mアダプティブサスペンションの標準装備により、スポーツドライビングのみならず長距離移動での快適性も向上。

その日の早朝、M2クーペでシェフを迎えに行く。夜明け前の街灯に照らされたその姿は震えるほどに筋骨隆々。左右にブリスターフェンダーを大きく張り出して、フロント275/35ZR19、リア285/30ZR20という恐ろしく太くて薄いタイヤを収めたそのフォルムは、走る機能を求めた果ての異形だ。そのビザールな魅力に、低く構えたフロントバンパーの大きなダクトに吸い込まれそうになる。

BMW M2 COUPE

運転席に乗り込んでスタートスイッチを押すと、まだ眠りの中の住宅街ではひやひやするくらいに太く低い音を伴って3Lストレート6が目覚めた。昨晩停める際にエンジンサウンドを調整する「Mスポーツエキゾーストシステム」をサウンド控えめな「コンフォート」にしておかず、4本出しのテールパイプがナイスなサウンドを奏でる「スポーツ」のままにしてしまったのは失敗だったが、気分が盛り上がったのは事実だ。

BMW M2 COUPE

この迫力からすると意外なほどMTでも街中での扱いにストレスがないことは、運転技量のない下手の横好きライターの仕事として書いておきたい。いつもなら限界までサイドブレーキのレバーを引いてアクセルを吹かした坂道発進を強いられる、歩道に面した急勾配の地下駐車場の出口もヒルスタートアシストのおかげでさらっとクリア。低回転域からトルクたっぷりのおかげで、歩行者の多い狭い道を徐行するのもラクラクだ。

BMW M2 COUPE

極太タイヤのせいもあって街中の段差ではやや強い突き上げも食らうが、その角は丸められ、しかもその衝撃が瞬時にどこかへ吸い取られていく。これが首都高に乗ろうものならビターッと路面に張り付き続けるタイヤの密着感、フラットな姿勢を保ったまま完全に切った通りぴったり切れていくステアリングの正確さたるや圧巻。そしてDSCとシフトアシストのお世話になる前提でいえば、一般道で破綻の気配を感じるのは難しいほどの安定感がある。

BMW M2 COUPE

アクセルやブレーキの入力に対する反応もドライバーの意志にぴったりと忠実で、なおかつインフォメーションがたっぷり体感できる濃密なドライビング体験がもたらされる。特に5000rpmからのクルマと肉体の密着感は狂おしいほど。特筆すべきは、まるで手練れの武術者のように行くべきところに正しくパワーが流れていく心地よさがあることだ。濃密なのに重たくない、乗っていると心が清らかになってくる。この感覚はFRの直6というバランスのいい骨格があってこそだと思う。

BMW M2 COUPE

元ゴルフR乗りのシェフも満足気にドライブを楽しんでいる。2000rpmほどのクルージングでも低く唸って存在感を示すエンジン音を好ましく聴きながら、おしゃべりしているうちに集合場所の関越道上里PAに着いた。

iX2らしいエシカルなインテリアに魅了

上里PAには、編集部の浅石青年がM235iグランクーペで、また京谷女史は30分ほど早く来てiX2を充電しながら待っていてくれた。満充電の都内から147km走ってバッテリー残量59%、走行可能距離が238kmだったそうで、90kWの急速充電器に繋いで20分ほどで95%、387kmまで回復したという。

BMW M235i xDrive GRAN COUPE/2L直4エンジンを搭載した2シリーズのMパフォーマンスモデル。クーペのような流麗なルーフラインと後席も大人が座るに十分なスペースを確保し、実用的に使える4ドアボディを融合したスタイルが魅力。

万全の充電状態で引き渡されたブランニューな白いiX2は、先代X2よりぐっとクーペらしいルーフラインを描き、遊び心あるスタイリッシュな商品群としての偶数シリーズにふさわしい。乗り込むとアップライトなポジションにパノラマガラスサンルーフも付いて、広々と明るい。グレーとホワイトのコンビのシートは「ヴェガンザ」というヴィーガンレザーで、エシカルな今どき感がある。

BMW M235i xDrive GRAN COUPE

前後アクスルにそれぞれ1基ずつ高出力のモーターを搭載したその明るく爽やかな走りっぷりは軽快で、遅いクルマを追い越して流れの速い追い越し車線に合流するにも全く何の気負いもいらない。てっきりM2クーペよりずっと軽いのかと思ったらまさかの2トン越えで驚いた。体格のしっかり感は、M2クーペの複雑で分厚い印象とは異なり、薄く硬質な印象だ。やはりBMWらしくシュアなハンドリングもすっきりとして心地よく、ゆるい勾配となだらかなコーナーが続く眺めのいい上信越道を気持ちよく駆けていく。

BMW M235i xDrive GRAN COUPE

90kmほど走った東部湯の丸SAで再度15分ほど90%までチャージしてから高速を降り、ツーリングは観光セクションへ。海野宿で格子戸の美しい家並みに歴史を感じ、大きく蛇行する千曲川の景色に地球の雄大さを思う。走行特性に加えて車内体験の演出もセットになった「マイモード」は、ここまでもっともスタンダードな「パーソナル」を選んでいたが、キャベツ畑が広がるつまごいパノラマラインに入って「スポーツ」にチェンジ。

BMW M235i xDrive GRAN COUPE

まるでタイヤが太くなったかのようなステアリングの手ごたえと俊敏な加速、なおかつSUVにありがちなノーズダイブのそぶりも見せない身のこなしで、絶景とアップダウンを満喫した。

BMW M235i xDrive GRAN COUPE

ふと気づけば走行可能距離200kmを切っていて、慌てて電力消費最適化モード「エフィシエント」にした上で、走行距離最大になる選択をする。が、外気温35度にもかかわらずエアコンが自動でオフになってギブアップ。快適性重視の走行特性と併せてサンシェードが閉まり、エアコンの温度が1度上がるという「リラックス」モードで滑らかな加減速を心がけたら走行可能距離は230kmまで回復して胸をなでおろした。

BMW M235i xDrive GRAN COUPE

スタイリッシュな4ドアクーペで帰路へ

最終目的地である熊谷農園に着くと、熊谷さんがぶどう畑に案内してくれた。ついに凄いぶどうとの対面である。皮ごと食べられるシャインマスカット、ナガノパープル、クイーンルージュの他、ゴルビー、黄玉といったレアな品種も試食させていただいた。もう、もの凄かった。大きな果実からほとばしる果汁と、力強い甘さ、そして深みのある複雑な味わいと香り。みんな無言で食べている。

BMW iX2 xDrive30 M SPORT/モダンなクーペスタイルを纏い、電気で駆けぬける先進的なパフォーマンス兼ね備えたX2のBEVモデル。インテリアにはBMWカーブドディスプレイを採用し、最新のオペレーティングシステムであるOS9を搭載する。

この凄いぶどうを作るために、畑の土に地元上田の岡崎酒造の銘酒「信州亀齢」の酒粕を撒き、土にはあえて雑草を生やし、畑の面積に対して通常の約半分まで房数を制限して一粒一粒に甘さと旨味を凝縮させるのだという。そうしてできたぶどうは、玄米を4割以上磨いて作る吟醸酒になぞらえ、「吟醸」を冠するブランド名を与えられている。一般的にすっきりクリアな味わいの吟醸酒とは逆に、あえて雑味を加えて深みを与え、しかもそのために酒粕という日本酒由来の雑味の塊が仕事をしているというのがおもしろい。

BMW iX2 xDrive30 M SPORT

シェフは熊谷さんのことを尊敬の念を込めて「変態」と呼んでいたが、まさに探求心の塊のようなマニアだった。おかげで凄いぶどうが食べられた。いやあ、世界は変態が豊かにしているんだな。

BMW iX2 xDrive30 M SPORT

希少な凄いぶどうを特別に分けていただき、シェフが注文していたお店用のものと合わせてM235iグランクーペのトランクに収め、帰路に着く。このスタイリッシュな4ドアクーペを見るといつも俳優の西島秀俊が思い浮かぶのは、細身でエレガントで意外と筋肉質だからだろうか。羊の皮をかぶった狼より断然脱いだら凄い西島秀俊に惹かれるとか言うと、今どきセクハラだと若者に眉をしかめられるから気をつけるように。

BMW iX2 xDrive30 M SPORT

西島秀俊は2L直4のFFベースなので、トランクは430Lと充分だし、後席に大人もちゃんと乗れる。しかも全幅1800mmとスリムなので機械式駐車場にも入れる。よって都心での機動力が高いため、シェフのお店がある表参道まで送っていくから帰路はこれがいいと指名させてもらった。早朝から走り回った帰り道はACC付がいいというのは内緒である。

BMW iX2 xDrive30 M SPORT

だが実際、途中故障車や工事で渋滞もあった高速でACCはありがたかった。高速巡航はXドライブの面目躍如でグイグイ真っすぐ突き進み、乗り心地も快適だ。太い排気音がMの気配を漂わせる黒とオレンジの派手な室内の助手席で、シェフはよく眠っている。

BMW iX2 xDrive30 M SPORT

彼が目を覚ましたのは首都高速池袋線に入った頃、ドライバーが俄然調子に乗ってきたせいである。正確でダイレクト感のあるステアリングと剛性の高いボディ、そして路面に張り付き続けるXドライブはガンガン踏める。M2クーペに比べたら雑味があるが、雑味も大事な味のファクターだと教えてくれたのは熊谷さんだ。

今回は、グランクーペ、M2、BEVのix2を伴っておよそ500kmにおよぶロングツーリングを敢行。2シリーズにはこの他に、MPVのアクティブツアラー、セグメント唯一のFRを採用したクーペ、SUVの内燃機モデルX2と幅広いラインナップで、ユーザーのニーズに対応する。

夜の表参道に着いてトランクを開けると、熊谷さんが作ったぶどうは魔法のように香り、宝石みたいに輝いていた。

M2はコンパクトなクーペながら、ラゲッジ容量は390Lと、そこそこの荷物は積めそうだ。グランクーペは430L、ix2は525~1400Lを確保する。3台ともスルーローディングシステム(40:20:40分割可倒式リアシート)を採用するため、後部座席を倒せば長尺モノの収納も可能だ。

【TRIP GUIDE】熊谷農園

写真は左から吟醸シャインマスカット、吟醸ナガノパープル、吟醸クイーンルージュ。凄いぶどうを食べてみたいという方は、熊谷農園のインスタをフォロー&DMで問合せを。

マニアックな熊谷さんは、趣味で旧いクルマのレストアも手掛けている。仕上げたばかりという初代ディスカバリーの他、レストアを待つ一群にはランドローバーシリーズⅠのピックアップボディなど超希少なモデルも。

【SPECIFICATION】BMW M2 COUPE
■車両本体価格(税込)=9,880,000円
■全長×全幅×全高=4580×1885×1410mm
■ホイールベース=2745mm
■車両重量=1710kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ツインターボ/2992cc
■最高出力=460ps(338kw)/6250rpm
■最大トルク=550Nm(56.1kg-m)/2650-5870rpm
■トランスミッション=6速MT
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:275/35R19、後:285/30R20

【SPECIFICATION】BMW M235i xDrive GRAN COUPE
■全長×全幅×全高=4540×1800×1430mm
■ホイールベース=2670mm
■車両重量=1590kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1998cc
■最高出力=306ps(225kw)/5000rpm
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)/1750-4500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:225/40R18
■車両本体価格(税込)=7,240,000円

【SPECIFICATION】BMW iX2 xDrive30 M SPORT
■車両本体価格(税込)=7,420,000円
■全長×全幅×全高=4555×1845×1565mm
■ホイールベース=2690mm
■車両重量=2050kg
■モーター最高出力=前:190ps(140kw)/8000rpm、後:190ps(140kw)/8000rpm
■モーター最大トルク=前:247Nm(25.2kg-m)/0-4900rpm、後:247Nm(25.2kg-m)/0-4900rpm
■バッテリー容量=66.5kwh
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:245/45R19
問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-269-437

フォト=郡 大二郎 ル・ボラン2024年11月号から転載

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