【比較試乗】フォルクスワーゲンのBEVとICE、直接比較で鮮明になる事実「フォルクスワーゲン・ID.4 VS ティグアン」

アジアメーカーの日本進出等もありBEVの選択肢は日々増えている。だが充電インフラが脆弱な日本においてBEVを選ぶ際、その現実的な比較対象となるのはICEモデルではないだろうか? そんな視点でVWのID.4とティグアンを乗り比べてみた。

ICEとBEVの足元レベルの個性を再確認

メーカーによるフルラインナップ試乗会が年末に開催されることは珍しくないが、既に試乗済のモデルばかりでも、比較試乗ができるメリットは大きい。今回はICEのティグアンとBEVのID.4というサイズ感の近い2台のクロスオーバーSUVをチョイスして乗り比べてみることにした。

フォルクスワーゲン・ティグアンTSI 4MOTION R-Line/水平基調のメッキパーツが印象を引き締めるティグアン。地上最低高もしっかり確保され、また少々下回りを擦っても大丈夫!? と思えるところがICEモデルの安心感にもつながる。

ティグアンはTSI 4モーションのRラインで、パワートレインは最高出力190psの2L直4ターボ+7速DSGで駆動はAWD。対するID.4はベースグレードのライトで、最高出力170psのモーターでリアを駆動するRWDとなる。全長は65mm、ホイールベースは95mmほどID.4の方が長いが、実車を目の前にした印象も寸法通りで、のびやかでゆったりしたID.4とバランスよく起立したティグアンといった風に見える。上級対ベーシックの比較となるが印象はどうだろう?

ティグアンのエンジンの、BEVに対する長所はキレの良いパワートレインだ。2LのTSI+7速DSGは今後ますます貴重になっていくはずのクルマとの対話を促進する。

箱根のワインディングで最初に試乗したのはティグアンの方。その時点ではこれといった発見はなかったが、直後にID.4に乗り換えると、それぞれの立ち位置が鮮明になった。ID.4のゆったりとした質感をガソリンモデルに当てはめることはVWのランナップの中では難しい。ストローク感はありつつもフラットにゆっくりと推移する姿勢、しっとりとしかし力強い加速は1.95トンの車重を帳消しにしてしまうほど。Dセグメントを通り越しEセグの動的質感をID.4は含んでいるのだ。室内空間に関してもID.4はEセグ相当の広さが確保されている。

SUVっぽさではなくゴルフGTIに代表されるVW的なスポーティさが際立つティグアンの室内。シートの質感もドイツ車好きが求める芯のある硬さがある。ハンドリングはスポーティだが、案外大きなロールは好き嫌いが分かれるところだろう。

ただ室内に関して作り込みの良さが感じられるのはティグアンの方だった。前後シートともID.4よりはるかに立体的に設えられており、メッキパーツが印象を引き締めるエクステリアとの整合性も高い。乗り心地に関してははっきりとID.4に分があるわけだが、しかしスポーティという点ではティグアンが小気味よかった。今回箱根で2台を走らせていてふと思ったのは、BEVはポルシェ・タイカンのように突き抜けた高性能モデルでないと、なかなかアソビ心のようなものまで感じることが難しいということだった。と同時に、スロットルを心おきなく踏みたいけれど航続距離が心配、という思いを抱いてしまうはず。

フォルクスワーゲンID.4 Lite/全長に対し全幅が広く、Eセグレベルのサイズ感を誇る。WLTCモードによる航続距離に関しては今なおBEVの方がICEモデルより実走行との乖離があると思われる点は残念。

ID.4ライトのWLTCモードにおける一充電走行距離は388kmだが、今回試乗車に乗り込んだ際の走行距離は、バッテリー残量95%で259kmというものだった。ID.4を現実に生活に取り入れるのであれば561kmの一充電走行距離を提示するID.4プロを選ぶ必要があるだろう。
今回、2台を交互に試乗して印象的だったのは、普段はあまり感じることがない足元レベルの長所だった。個人的には最近、BEVを試乗することが多く、BEV特有の静けさといった特徴を前ほどは感じなくなっていた。だが今回はそれが上質なフィールに直結するという事実がよりはっきりとしたかたちで理解できた。

ID.4は90kWの充電器を使えば充電量80%までを40分でこなすが、実際問題は90kWの出力を発揮できる充電器が多くないことだろう。

一方、ティグアンの4モーションには本当の意味でのクロスオーバーSUVとしての良さを感じた。AWDで最低地上高もしっかりと確保されている。2LターボのTSIエンジンはパンチがあるので、ちょっとしたスポーツカーのオルタナティブになるという点もメリットなのだと気づかされた。
今回の2台に、クルマ好きの方が試乗すれば充電インフラの煩わしさも勘案してティグアンを選び、クルマにあまり興味のない方がステアリングを握れば、ID.4の上質さを選ぶような気がする。

素材使いがうまく、BEVらしい近未来感に富んだID.4の室内。シートスペースのみならず腰上の空間も広々と感じる。しかしシートはいくぶん平板で、ホールド性が十分とはいえない。

ともあれ、こと動的な質感に関して時代の要求に合致しているのはBEVの方であることは確かだ。自分の中にあるスタンダードを書き換える意味でもID.4を試乗してみるべきだと思う。

【Specification】フォルクスワーゲンID.4 Lite
■車両本体価格(税込)=5,142,000円
■全長×全幅×全高=4585×1850×1640mm
■ホイールベース=2770mm
■トレッド=前:1585、後:1560mm
■車両重量=1950kg
■モーター形式/種類=EBJ/交流同期電動機
■モーター最高出力=後:170ps(125kW)/3851-15311rpm
■モーター最大トルク=後:310Nm(31.6kg-m)/0-3851rpm
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=52kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=435km
■サスペンション形式=前:マクファーソンストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ドラム
■タイヤ(ホイール)=前後:235/60R18

【Specification】フォルクスワーゲン・ティグアンTSI 4MOTION R-Line
■車両本体価格(税込)=6,154,000円
■全長×全幅×全高=4520×1860×1675mm
■ホイールベース=2675mm
■トレッド=前:1585、後:1575mm
■車両重量=1720kg
■エンジン型式/種類=DNN/直4DOHC16V+ターボ
■内径×行程=82.5×92.8mm
■圧縮比=12.2
■総排気量=1984cc
■最高出力=190ps(140kW)/4200-6000rpm
■最大トルク=320(32.6)/1500-4100rpm
■燃料タンク容量=61L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=12.8km/L
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前:マクファーソン/コイル、後:4リンク/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:255/45R19

問い合わせ先=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン 0120-993-199

フォト=勝村大輔 ルボラン2024年3月号より転載

■関連記事

AUTHOR
2024/02/10 11:30

関連記事

愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?

複数社を比較して、最高値で売却しよう!

車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。

手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!

一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業不特定多数の業者からの大量電話をなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!

【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>

注目の記事

「ル・ボランCARSMEET」 公式SNS
フォローして最新情報をゲット!