日産最後のFRスポーツに国産初の電動コンバー
S15型シルビアをベースとした電動コンバーチブルのヴァリエッタについて、前編の記事(下の「関連記事」参照)では、アオシマ製プラモデルを改造して再現した作例とその制作について述べた。ここでは、実車のS15シルビアについて、もうすこし詳しく記述してみることとしよう。
【画像55枚】ボディ造形の続きから塗装、ディテールなど、制作の詳細を見る!
七代目となるS15型系シルビアは、1999年1月に発売された。先代では3ナンバー・サイズに拡大されていたボディは若干縮小され、5ナンバー・サイズへ回帰。しかしそのコンセプトは、先代後期型のアグレッシブでスポーティな性格づけがそのまま継承されており、スタイリングにもそれが現れている。吊り上がったヘッドライトとそれを収めた低いノーズ、ボディ中央を斜めに走る深いキャラクターラインなどによって、スポーティなイメージが強調されていたのである。
車体が小さくなったとは言えホイールベースは先代と変わらず、FRレイアウトも、前ストラット/後ろマルチリンクのサスペンションも先代同様だ。エンジンは直列4気筒DOHC 2LのSR20DE(最高出力165ps)と、それにインタークーラーターボを組み合わせたSR20DET(250ps)の2種類。前者を積むのがスペックS、後者を搭載するのがスペックRで、S15シルビアのシリーズ構成はこの2本の柱から成っていた。トランスミッションは6速MTと4速ATがあり、ATの場合はエンジンのパワーが抑えられている(SR20DEは160ps、SR20DETは225ps)。
スペックR、スペックSとも、ベーシックなモデルのほかに設定されるのはエアロというバージョンで、これにはサイドシルプロテクターやリアスポイラーが標準装備される。スペックSの上級モデルとしては、アルミホイールやフルオートエアコンが標準となるGパッケージがあり、スペックRのハイグレード版としては電動SUPER HICASを具える”電動スーパーハイキャスパッケージ”が用意された。また、スペックRではドライバー側Aピラーにブースト計が設けられていたことも特徴的だった(スペックSエアロでは油圧計)。
続々追加されるスペシャルパッケージと、ヴァリエッタの登場
デビューから9ヶ月後の1999年10月には、スペックRとスペックS両シリーズに、bパッケージというモデルを追加。これはブルー基調のインテリアを採用することでファッション性を増したものであった。同時に、オーテックジャパンからは同社がチューニングを手掛けたオーテックバージョンも発売となる。エンジンはSR20DEだが各種チューンにより200psにまでパワーアップ、もちろん足周りも固められていた。
同じくオーテックジャパンから2000年5月に発売されたのが、作例で再現したヴァリエッタだ。これは前年の東京モーターショーで好評を博した出品車を市販化したもので、「国産初のフルオープンタイプ電動メタルルーフ」を謳ったコンバーチブルである。ルーフの開閉は手元のスイッチにより20秒で完了。またインテリアにモルフォクロストーンを採用したことも話題となった。これはモルフォ蝶の発色原理を応用したという布地で、見る角度により色が変わり、また濁りのない澄んだ発色となるのが特徴である。
同年10月にはLパッケージとType-Bを追加。LパッケージはスペックRおよびスペックS(Gパッケージ)に設定されたもので、本革シートなどが奢られ、シルバーでコーディネートされたインテリアを持つモデル。後者はスペックRのみに用意されたカスタムベース車で、各種装備が簡略化されたものであった。2002年1月には、お買い得モデルのVパッケージを発売。これもスペックRとスペックS(Gパッケージ)をベースとしたもので、専用シート生地やMD/CD一体電子チューナーラジオなどを装備していた。
2002年11月、S15型シルビアは販売を終了。デビューは1999年1月であるから、4年に満たない若干短命なモデルであった。そこには、2ドア・クーペの需要減などの要因も明瞭に見出すことができる。シルビアの復活は何度も噂されながらも、未だ実現していない。
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