【比較試乗】4気筒、6気筒、オープンエア……、ポルシェのミッドシップスポーツを選ぶなら?「718ボクスター・スタイルエディション vs 718ケイマンGTS4.0 vs 718ケイマン・スタイルエディション vs 718ケイマンGT4 RS」

ポルシェのミッドシップスポーツである718シリーズ。登場から7年が経過した当モデルのバリエーションは多岐に渡り、まさによりどりみどり。次期型の登場が噂される今、完熟の718シリーズのベストモデルを探ってみた。

完熟を迎えた718。ベストと呼べる1台は?

ルーツは1996年に登場したボクスター。その2代目モデルから派生し、クーペボディのケイマンがデビューしたのが2005年のことだ。

そして2015年には両モデルが、4気筒ターボエンジンの導入とともに718というひとつのシリーズに統合される。その後もラインナップを拡大し、誰もが驚いた6気筒自然吸気ユニットの設定なども経ながら、今に至っている。

そんな718シリーズに大きな転機が迫っていることは、ご存知の方も多いだろう。次期型はBEVになる……率直な気持ちを込めて言えば「なってしまう」ことは、もはや周知の事実と言っていい。

内燃エンジンで楽しむ718を選ぶならば、今しかない。そこで現在、ポルシェジャパンの許にある広報車両を集めて、ベスト718を選び出すことにした。すべてを網羅できたわけではないが、これまで試乗してきた経験も交えつつ、アレコレ考察していきたい。

PORSCHE 718 CAYMAN STYLE EDITION/創造性とスポーティさの融合を謡う特別仕様車が、この「スタイルエディション」だ。搭載されるパワートレインは2Lの水平対向4気筒ターボ。試乗車は6速MTかつ、PTVやPASMのオプションを装着した走りに寄せた仕様だ。

最初に乗り込んだのは718ケイマン・スタイルエディション。のちに登場する718ボクスターのそれとともに’22年11月に発売された、素のモデルをベースにする特別仕様車である。試乗車は6速MTで、PTV(ポルシェ・トルク・ベクタリング)やPASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメント)などを装着した、走りに寄せた仕様だ。

ご無沙汰だった718のMT。クラッチペダルが結構重く「えっ、こんなだったっけ?」と思わず面食らってしまった。しかも718の2Lターボエンジンはアイドリング付近のトルクがきわめて細く、ラフに繋げばすぐにエンストしてしまう。

それでも、走り出してしまえばすべてがしっくりくる辺りは、やはりポルシェ。操作系すべての重さのバランスが絶妙で、クルマとの密な一体感を味わえる。

エンジンは回せば回すほど活発さを増す。低回転域ではからっきしなのに、4気筒の少し荒いビートを響かせながらビュンビュン回るから軽快感は半端ない。トルクバンドをキープするためにはこまめな変速が必要で、結構忙しない。けれど今あえてMTを買い求める人は、それを求めているはずと考えれば、これはこれでアリだろう。

フットワークも小気味良い。交差点や、高速道路の導入路のような場面ですらミッドシップならではの、自分を中心に曲がっていくような旋回感覚を堪能できる。

ボディの剛性感の高さもあり、若々しく筋肉のパツッと張ったアスリートという感覚。久しぶりに大いに楽しんでしまった。

PORSCHE 718 BOXSTER STYLE EDITION/往年の964型「911カレラRS」に採用されていた色を現代的に解釈したという「ルビースターネオ」が目を引く718ボクスター・スタイルエディション。電動ルーフの開閉時間は約10秒、走行中でも50km/h以下なら操作可能だ。

お次はルビースター・ネオと名付けられたボディ色が鮮烈な、718ボクスター・スタイルエディション。こちらはPDK仕様だ。天気も良いので、最初からソフトトップはオープンにして走り出す。

やっぱりイイなあ! 理屈抜きに、顔がほころぶ気持ちよさである。718シリーズが持つ軽快感がオープンにすると一層強調されて、なんとも爽快な気分になる。

ボディの剛性感は、718ケイマンから乗り換えた直後には、多少ワナワナする部分も感じられた。けれども普通に考えれば十分以上にカッチリしているのは間違いない。あるいはPASMを装着すれば、乗り心地はもう少しマイルドになりそうである。

2LターボエンジンもPDKとの組み合わせならばドライバビリティに不満はない。変速の速さがエンジンの切れ味とよく呼応していて、マッチングはこちらの方が良いように感じられた。あるいはMTを選ぶなら、2.5LターボのSの方がトルクの余裕があって扱いやすいかもしれない。

軽快感が魅力の4気筒対して6気筒モデルは?

いや、この手もある。6気筒4L自然吸気エンジンを積む718ケイマンGTS4.0だ。

兎にも角にもエンジンの存在感が強いクルマである。低回転域からトルク豊かで、回していっても全域スムーズ。しかも単に回るのではなく、回転上昇に伴って音や振動、要するに表情がどんどん変わっていくものだから堪らない。

PORSCHE 718 CAYMAN GTS4.0/使い勝手のいいボディサイズに4Lの水平対向自然吸気6気筒エンジンを組み合わせたパッケージングは、日常と非日常のバランスがちょうどいい。ひとたびスロットルを踏み込めばその官能的なフィーリングに酔いしれるはずだ。

「やっぱりこれでしょう」と思わず口に出てしまった。近年は販売の多くをこのGTS4.0が占めていたというから、皆の思いも同じだったわけだ。

ついエンジンの話から始めてしまったが、フットワークもこれまた素晴らしい。PASMスポーツシャシーは引き締まった中にもしなやかな感触で、接地感が高く操舵応答性も鋭い。全体に、軽やかな4気筒モデルに較べて少し落ち着きを感じさせる。車重にほぼ差がないだけに、高い出力に見合ったセッティングの違いだろう。アベレージを高く保って、どこまでも行きたくなる走りである。

PORSCHE 718 CAYMAN GT4 RS/見た目からただならぬ雰囲気を纏うGT4 RS。その白眉はミッドシップに収まる4Lの水平対向自然吸気6気筒エンジンだ。その激烈なフィーリングは踏み込んだ瞬間からアドレナリンが全開となること間違いなし。

そして最後は718ケイマンGT4 RSだ。911GT3譲りとなるレース直系の6気筒4L自然吸気エンジンを搭載し、徹底的な軽量化を断行。サスペンションを締め上げ、専用エアロパーツによりダウンフォースは718ケイマンGT4に対して実に25%増を実現した。まさに、史上もっとも強烈な718である。

見た目から明らかなように、その走りは獰猛そのもの。背後のエンジンは盛大な唸りをあげ、乗り心地はガッチガチに硬い。7速PDKのギア比がショート化されているため回転上昇は鋭く、変速もビジー。タイトな駆動系のおかげでギクシャクすることもあるが、それすらも本物のレーシングカーのような刺激に繋がっている。

前が開いたらすかさずシフトダウンしてアクセルを踏み込む。爆音とともに回転計の針が一気に9000rpmまで到達し、電光石火のシフトアップ。これを繰り返していたら、頭が真っ白になった。

718ケイマンGT4 RSの一番の価値は、このエンジンにある。GTS4.0のエンジンも素晴らしいが、こちらは本物のレーシングエンジンの手触りなのだ。

ソリッドなコーナリングも絶品で、とにかく積極的にドライビングするすべての瞬間に刺激が詰まっている。いや正直に言うと、渋滞の中ではあまりに騒々しく、硬く、タイトな乗り味に苦痛すら感じてしまったのだけれど……。

このクルマと付き合っていくならば、家の前にニュルブルクリンクが欲しい。普段乗りに使うつもりだけなら、このクルマはあまりにもハード過ぎるのだ。
さて、そろそろこの中から1台を選ばなければいけない。今回、個人的には4気筒の軽快感を改めて見直し、最初は718ボクスターを候補としたが、結論はユーザーやファンの期待値の在りどころを鑑みると、やはり6気筒モデルだろうなという考えに至った。

結論は718ケイマンGTS4.0。ハッチゲートを持つ使い勝手含めたカジュアル感とマニアックなエンジンの歓びを兼ね備えた万能のスポーツカーである。

ただし、もはや718シリーズも新たな注文はほぼ難しい状態だという。そう考えれば、すでに手に入れて楽しまれている方、そして納車を待っている方は、どんなモデルを選んだにせよ皆、大勝利と言うべきだろう。間違いなく歴史に残る1台である。ゼヒ、存分に楽しんでいただければと思う。

【SPECIFICATION】PORSCHE 718 CAYMAN STYLE EDITION
■車両本体価格(税込)=9,520,000円
■全長×全幅×全高=4379×1801×1295mm
■ホイールベース=2475mm
■車両重量=1335kg
■エンジン種類/排気量=水平対向4気筒DOHC16V+ターボ/1988cc
■最高出力=300ps(220kW)/6500rpm
■最大トルク=380Nm(38.7kg-m)/2150-4500rpm
■トランスミッション=6速MT
■サスペンション=前:マクファーソンストラット、後:マクファーソンストラット
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:235/35ZR20、後:265/35ZR20

【SPECIFICATION】PORSCHE 718 BOXSTER STYLE EDITION
■車両本体価格(税込)=9,910,000円
■全長×全幅×全高=4379×1801×1281mm
■ホイールベース=2475mm
■車両重量=1365kg
■エンジン種類/排気量=水平対向4気筒DOHC16V+ターボ/1988cc
■最高出力=300ps(220kW)/6500rpm
■最大トルク=380Nm(38.7kg-m)/2150-4500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前後:マクファーソンストラット
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:235/35ZR20、後:265/35ZR20

【SPECIFICATION】PORSCHE 718 CAYMAN GTS4.0
■車両本体価格(税込)=12,240,000円
■全長×全幅×全高=4405×1801×1276mm
■ホイールベース=2475mm
■車両重量=1435kg
■エンジン種類/排気量=水平対向6気筒DOHC24V/3995cc
■最高出力=400ps(294kW)/7000rpm
■最大トルク=430Nm(43.9kg-m)/5500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前後:マクファーソンストラット
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:235/35ZR20、後:265/35ZR20

【SPECIFICATION】PORSCHE 718 CAYMAN GT4 RS
■車両本体価格(税込)=20,240,000円
■全長×全幅×全高=4456×1822×1267mm
■ホイールベース=2482mm
■車両重量=1415kg
■エンジン種類/排気量=水平対向6気筒DOHC24V/3996cc
■最高出力=500ps(368kW)/8400rpm
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)/6750rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前後:マクファーソンストラット
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:245/35R20、後:295/30R20

問い合わせ先=ポルシェジャパン  0120-846-911

リポート=島下泰久 フォト=篠原晃一 ルボラン2023年12月号より転載

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