ボディ外板全てがハードトップと違う!
Y31型の日産グロリア・セダンについては、前編の記事(下の「関連記事」参照のこと)ですでに述べた。ここでお目にかけている1/24スケールのプラモデル作例は、自動車模型専門誌「モデルカーズ」の235号(2015年)のグロリア/セドリック特集のために制作されたものである。以下、そのときの解説(作例を制作した森山氏によるもの)をお読みいただこう。
【画像29枚】細部までのボディ作り変えなど、制作の詳細を見る
「今回の特集、作ってみたい実車はいくつかありましたが、その中から、セダンボディとしては実質最後のモデルと言えるY31型をチョイス致しました。モデルカーズ187号でダッズ松本氏の手で素晴らしい作例が掲載されているのに何故今さら? と言われそうですが、松本氏の作品はCピラーを太く変更した後のセドリック・オリジナル、対して今回の私の作品は、変更前、つまり6ライト時代のグロリア・ブロアム(ハイヤー仕様)である訳です。
そして、制作方法も松本氏とは全く別のアプローチで――ひとつの題材に対して全く違う方向性でやってみたかったのです。
今回もまたボディ形状の変更、特にHTからセダンへの変更はルーフセクションの変更だけがメインとなる……と思いきや、やり始めて実車を確認してみたら、実はボディ外板が全部HTとは異なっているという、以前に手掛けた鬼クラ・セダン(モデルカーズ212号掲載)のときの轍をまたしても盛大に踏み抜けるというありさま。
ルーフセクションの改修については、大まかに分けて3つのやり方があると思います。私が鬼クラで行ったような、ルーフの端の方を延長する方法。松本氏がY31で行った、中央から分割して延長する方法。もうひとつが、キットのルーフ本体はそのままに、端の部分だけ加工して、ピラーなどの形状変更でそれらしくする方法。今回はそのどれとも全く違う方法でルーフセクションを新造してみようと考えました。
ピラーが曲がって屋根が歪んでしまったボディを有効活用
というのも今回ベースにしたフジミのキット、この年代の国産車キット全般にありがちですが、長期在庫品だと潰れて変形してたり、最悪折れてることも多いのですね。今回のキットも、ピラー全部曲がって屋根が歪んでしまったものを使っています。そのままでは組めない破損品の有効活用という側面もあるのではと思った次第です。
また、案外忘れられがちですが、HTとセダンでは、リアはもちろんフロントウィンドウの傾斜角度が異なっていることが多く、その修正も重要なポイントになります。普通に考えると、完全に作り変えるという作業そのものが難易度高すぎと思われがちですが、プラ板による箱組み作業なので、あせらずにじっくり腰をすえて行えば実現可能、マスターすれば応用としてライトバン化とかチョップトップとか、更に大胆な工作も出来るのではないかと思います。
作例のベースとしたのはフジミのブロアムVIPですが、今回再現したブロアムは営業モデルで3ナンバーという、「そんな仕様あるのか」と言われそうな個体です。法人需要も重視していたY31グロリア、ハイヤーや個人タクシー向けにブロアムおよびクラシックでLPGエンジン(RB20P型)搭載モデルの設定があり、これに税制改革(消費税導入による物品税廃止)を受けて、大型バンパーの3ナンバー仕様が追加されていたのです。小型でなくなるため初乗り運賃が割高になるので導入する会社が少なかったという次第(私も実物見るまで存在を知りませんでした)。
今回の作例が皆様にとって何かしらのヒントになれば幸いです。最後に、今回車両を取材させて頂きましたS氏にこの場をお借りして御礼申し上げます」
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