ピュアに走りを突き詰めたホットなコンパクトスポーツカーを3台ピックアップ
実にピュアで真っ当なホットモデルだなというのが、アメリカで試乗した新型「BMW M2」の印象である。電子制御によるトッピングは最小限に留め、コンパクトFRクーペとしての資質を磨きに磨いたその走りは、あるいはオールドスクールかもしれないが、とにかく無心になってアクセルを踏み込みたくなる仕上がりだった。
ではライバルは不在なのか? FRに限定した場合にはそうなりそうだが、同じようにピュアに走りを突き詰めた存在という観点で見ると、いくつかのモデルが浮かび上がってきた。さてこれから挙げる3台は本当に新型M2と堂々渡り合うことができるだろうか。
最後のルノー・スポール
「ルノー メガーヌR.S. ウルティム」は、ルノー・スポールの名を冠する最後のモデルである。エクステリアは特別仕立てとされているが、その中身はハードにセットされたシャシー、トルセンLSD、前輪のアルミ製ハブ、鋳鉄製スリット入りブレーキディスクなどを採用するトロフィーと同等だ。
走りっぷりはやはり只者ではない。サスペンションは想像通り、とてもハード。その入力を受け止めるボディも負けじとガッチガチの剛性感を備えているので、安っぽい感じはしないとはいえ、これだけ揺さぶられる乗り心地のロードカーはそうそうない。まさにレーシングカーをそのまま公道に解き放ったかのようだ。
ただし、単に硬いのではない。圧倒されるのはそのハンドリングで、前輪の路面に貼り付いているかのような接地感に、後輪操舵によるリアの追従性のおかげで、ステアリングをわずかに切り込んだだけで即座にクルマ全体が息を飲むほど鋭くインに切れ込んでいく。
さらにそこからアクセルを踏み込めば、トルセンLSDのおかげでノーズの向いた方向にクルマがグイグイ引き込まれていく。多少のトルクステアもお構いなし。まさに胸のすく立ち上がりだ。
エンジンも迫力に満ちている。トルクの厚みは半端なく、どこからでも即座に加速体制に入り、しかもそこからトップエンドまではまさに一気。ワインディングロードではこうした特性が速いのだ。さすがニュルブルクリンク仕込みである。コラム固定の大型シフトパドルも操る歓びを高めている。
とにかくアンダーステアを嫌い、その分の危うさをドライバーがねじ伏せればとんでもなく速い。乗り手を選ぶが、そこにハマレば最高に痛快。そんなメガーヌR.S.の挑発的な走りに多くのファンが夢中になるのも大いに納得なのだ。
3台それぞれのまったく異なる個性を優劣で評価するのは難しい。しかしながら新型M2をベンチマークに、それに比肩し得るモデルを選ぶという観点で見ればメガーヌR.S.だ。モノとしての重厚感、筋の通ったコンセプト、そしてヒリヒリするような走りからは、駆動方式やトランスミッション形式、パワーに価格といった要素を飛び越えて、同じ匂いをもっとも強烈に感じるのである。
エンジンが魅力のRS3、果たしてM2のライバルは?
鮮烈なキャラミグリーンで彩られた「アウディ RS3セダン」は、ブラックアウトされて全面グリルのようにすら見える迫力のフロントマスクもあり、実に獰猛な雰囲気を醸し出している。おとなしいボディ色だったら、案外ワル目立ちすることなく乗れるのだろうか。
その特徴であり一番の魅力が、エンジン。伝統の直列5気筒レイアウトを採用する2.5Lターボユニットだ。最高出力400ps、最大トルク500Nmというスペックだけでもソソるが、このエンジンは吹け上がり、そしてサウンドが情感に訴えかけてくる。
4気筒にはない緻密さと、6気筒とは違ったかすかな揺らぎ。回転が高まるにつれて粒が揃っていき、一気にトップエンドまで突き抜ける快感はヤミツキになる。7速Sトロニックのギア比もドンピシャで、ワインディングロードでも存分に陶酔に浸ることができる。
フットワークは、良くも悪くもアウディ的。やけに大径のステアリングホイールの操作に対して、よく曲がってはくれるのだが、クルマとの一体感は強くはない。四輪の接地状態がどうにも感じにくく、自信を持って攻めづらいのだ。左右後輪間のトルクを自在に変化させるRSトルクスプリッターも旋回性に効いているのは間違いないが、制御されている感は強め。その上、ブレーキのタッチに唐突感があって、繊細なコントロールを受け付けてくれないのだ。
やはりアウディRS3セダンはエンジンに尽きるクルマだ。M2のストレートシックスに匹敵する色気が、そこにはある。
話題のGRカローラ
こちらも話題沸騰の「トヨタ GRカローラRZ」に乗り換える。フロントの開口部が大きく広げられ、前後フェンダーが思い切りワイド化された姿は、とても威圧的。後付け感というかチューンド感が凄味に繋がっている。それに較べればインテリアはやや素っ気ない。しかしながら6速MTのシフトレバー、そしてあえてのハンドブレーキを見れば思わずニヤリとする人も多いだろう。
1.6Lターボエンジンは、排気量が小さい分、さすがにやや線が細く、特に低速トルクは今どき珍しいくらい貧弱。発進には気を使うが、いざ回してしまえば小気味良い走りが楽しめる。回転でパワーを稼ぐ特性なら、とにかく踏むのみ。3気筒ながらさすがWRCを見据えて開発されただけある精緻な回転フィールは堪らないものがある。シフトフィールもカチッと正確。欲を言えばもっとマウントを固めてもいいかもしれない。
乗り心地は硬めではあるが、初期入力でガツンと来たあとは案外ストローク感があり、おかげ限界に至るまで挙動が掴みやすく安心してペースを上げていける。しかも、こちらは四輪駆動。路面状況を選ばない懐深さも備わる。
GR.FOURと名付けられたその電子制御4WDシステムには3つのモードが用意される。NORMALは前後駆動力配分60:40。速さを求めれば50:50になるTRACKだが、ワインディングロードでは30:70のSPORTが軽快で楽しい。アクセルオンでリアから押し出すように加速していく様には、思わず頬が緩む。
外形寸法もエンジンパワーも差は小さいはずだが、メガーヌR.S.と較べると走りは全体に軽やかな印象だ。言い換えれば骨太感では譲る感もあって、今回の比較にはモリゾウエディションの方が相応しかったかもしれない。
◆PERSONAL CHOICE:トヨタGRカローラ
相手がM2だとモリゾウエディションが欲しくなるが、自分で普段使いすると考えるとGRカローラRZがしっくり来る。パフォーマンスと快適性の好バランスに、いつでもどこでも楽しめるはずだ。
◆SPECIFICATION ルノー メガーヌR.S.ウルティム
全長×全幅×全高=4,410×1,875×1,465mm
ホイールベース=2,670mm
車両重量=1,480kg
エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1,798cc
最高出力=300ps(221kw)/6,000rpm
最大トルク=420Nm(42.8kg-m)/3,200rpm
トランスミッション=6速DCT
サスペンション(F:R)=ストラット:トーションビーム
ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
タイヤサイズ(F:R)=245/35R19:245/35R19
車両本体価格(税込)=6,590,000円
問い合わせ先=ルノージャポン 0120-676-365
◆SPECIFICATION アウディ RS3セダン
全長×全幅×全高=4,540×1,850×1,410mm
ホイールベース=2,630mm
車両重量=1,600kg
エンジン種類/排気量=直5DOHC20V+ターボ/2,480cc
最高出力=400ps(294kw)/5,600-7,000rpm
最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/2,250-5,600rpm
トランスミッション=7速DCT
サスペンション(F:R)=ストラット:ウイッシュボーン
ブレーキ(F:R)=ディスク:ディスク
タイヤサイズ(F:R)=265/30R19:245/35R19
車両本体価格(税込)=8,390,000円
問い合わせ先=アウディジャパン 0120-598-106
◆SPECIFICATION トヨタGRカローラ
全長×全幅×全高=4,410×1,850×1,480mm
ホイールベース=2,640mm
車両重量=1,470kg
エンジン種類/排気量=直3DOHC12V+ターボ/1,618cc
最高出力=304ps(224kw)/6,500rpm
最大トルク=370Nm(37.7kg-m)/3,000-5,550rpm
トランスミッション=6速MT
サスペンション(F:R)=ストラット:Wウイッシュボーン
ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
タイヤサイズ(F:R)=235/40R18:235/40R18
車両本体価格(税込)=5,250,000円
問い合わせ先=トヨタ自動車 0800-700-7700
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