【レーザーディスクは何者だ!?】世界初!?「ホンダe」で懐かしの「レーザーディスク」を再生してみたら極上のシアタールームになった…!?

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EVの充電時間、なにしよう?

BEV(電気自動車)に乗るうえで、切っても切れないのが充電時間の問題。自宅で充電できる場合は夜間など乗らないタイミングで繋ぎっぱなしにしておけばいいが、自宅に充電設備がなかったり、遠出をする際などは、サービスエリアや道の駅、ディーラーなどに設置された急速充電器のお世話になることになる。急速充電の利用は1回30分。たかが30分、されど30分で、なかなかに暇を持て余す時間だ。

メーカー側もそんな問題を理解しているのか、現在販売されているBEVには充電時間を退屈な待ち時間とならないよう工夫している車種もいくつかある。例えばヒョンデのアイオニック5は前席に「リラクゼーションコンフォートシート」を採用。ロングスライドのリクライニングとオットマンを備えた「ゼログラビティ」の座り心地で、ゆったりとくつろげる空間を演出している。

そして今回注目したいのがホンダeだ。インストルメントパネルには5つのスクリーンを水平配置した「ワイドビジョンインストルメントパネル」を採用。運転席から見えるダッシュボードすべてが画面というインパクトもさることながら、センターコンソール下に目をやるとAC100V電源とUSB端子に加え、HDMI端子が見える。そこで筆者はふと思ったのだった「ホンダeはもしかして”レーザーディスク”の再生にうってつけなのではないか……」と。

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ホンダが2020年から販売を開始する「ホンダe」。同社初の量産BEVだ。

ホンダeの「ワイドビジョンインストルメントパネル」。5つのスクリーンが水平配置される様は圧巻だ。

レーザーディスクは何者だ?

突然だが皆さんは「レーザーディスク(LD)」をご存じだろうか。

レーザーディスクは現在のBlu-rayやDVDのご先祖様と言える存在で、レーザーを用いて盤面の情報を読み出す光ディスクのひとつ。「絵の出るレコード」とも呼ばれ、1972年にフィリップスが開発し、1978年に製品化。日本では1981年にパイオニアが民生用プレーヤーの「LD-1000」を製品化し、国内でのレーザーディスク市場がスタートした。

後に登場した映像用ディスクと比較して、レーザーディスクの大きな特徴となるのがそのサイズだ。一般的なレーザーディスクは直径30cm、LPレコードと同じ大きさである。両面で最大120分までの映像を記録可能で、当時のメジャーな映像メディアだったVHSに比べて高画質なことも売りのひとつだった。

これがレーザーディスク。ステアリングとほぼ同じ大きさだ。

しかしながらプレーヤー、ディスクともに高価だったこともあり、普及は一部の富裕層やマニアに限られた。さらに90年代後半にはDVDが登場し、一気に衰退。カラオケなど一定の需要もあったのだが、寄せる時代には勝てず国内メーカーは次々と撤退し、最後まで生産を続けていたパイオニアも2009年にプレーヤーの生産を終了。40年弱の歴史に終止符が打たれた。

……ざっとレーザーディスクの歴史を振り返ってみたが、要するに“忘れ去られたメディア”のひとつである。ではなぜ今更レーザーディスクなのか? それは筆者が”今まさに”レーザーディスクにお熱であるというのが最大の理由である。

筆者は平成生まれなので、正直なところこれまでの人生でほとんどレーザーディスクに触れる機会はなかった。中学の頃、視聴覚室で見たのがおそらく人生初だったと記憶している。そんなレーザーディスク無縁人生に転機が訪れたのは去年の夏、友人が所有しているレーザーディスクを見せてもらったのが運の尽きだった。30cm四方の巨大なジャケットに大きくタイトルやビジュアルが印刷されたインパクトと、アルミの記録面がキラキラと輝くレーザーディスクの魅力に一瞬にしてやられちゃったわけである。

そこからは坂を転げ落ちるようにレーザーディスクを集め始め、今では自宅のレーザーディスクのコレクションは300枚を超えてしまった。先にも述べたように“忘れ去られたメディア”なので、ほとんどのレーザーディスクはリサイクルショップなどで投げ売り状態。当然のごとく新譜は無いのだが裏を返せばラインナップは古典的名作といわれる作品ばかり。プレーヤーの方は多少値が張るが、それでもリサイクルショップで2~3万出せば完動品を入手することができる。画質の方もBlu-rayと比べると流石に歴史を感じるが、自宅のプロジェクターなどで投影するとさほど気にならない。つまりプレーヤーさえ確保できれば、あとは最低限の出費で過去の名作を大量に楽しめるツールと化すのだ。

EVの給電機能でプレーヤーを動かす

レーザーディスクの魅力(?)を熱く語ったところで、記事冒頭での「ホンダeはもしかして”レーザーディスク”の再生にうってつけなのではないか……」との考えに至った理由を説明していこう。

レーザーディスクのプレーヤーはディスク本体の大きさのせいもあって筐体も必然的に大きなものとなる。さらに富裕層やマニア向けに高価格帯で売っていた商品上の性格もあり、少し乱暴かもしれないが筐体は大きく、重いほど高級機であるというヒエラルキーの下、ラインナップを拡大させていた。直径30cmのアルミ円盤を毎分1800回転という早さで回転させなければならないので当然と言えば当然なのだが、レーザーディスク40年余りの歴史のなかで携帯機というものはほぼ開発されていないと言っていいだろう。

“そんなレーザーディスクを、外で観ることができたらどんなに素晴らしいだろうか――”

先に述べた通り、プレーヤーは据え置きが前提なのでAC100Vの電源が必須。もちろん一般的なICE(ガソリン)車でも、別売りのインバーターなどを使えば電源を用意できないこともないが、12Vのアクセサリー電源がベースなので電力容量に不安が残る。走行用に大容量のバッテリーを有するBEVなら最大1500Wまでの出力に対応しているし、ICEのようにアイドリングの必要もないので、無駄な振動も発生せず安心してプレーヤーを使うことができるのだ。

そして言うまでもないがワイドビジョンインストルメントパネルの大画面は映像入力に対応しており、エンターテイメントを楽しむには最適。少し強引かもしれないがこれらの理由からレーザーディスクの再生にホンダeは適役なのである。

……というわけで前置きが長くなったが、早速レーザーディスクをホンダeで再生する準備をしていこう。

今回用意したレーザーディスクプレーヤーはパイオニア製の「CLD-R7G」、1997年に製造されたCDの再生も可能なコンパチブルプレーヤーだ。

まずはプレーヤーの設置場所だが、今回は後部座席を選択。助手席と迷ったが、視聴の特等席をプレーヤーで潰してしまうのはあまりにも勿体ない。ディスクの入れ替えなどは手間だが、そもそもクルマでレーザーディスクを観ようという発想自体が手間なので、ここは素直に視聴環境を優先した。

後部座席に堂々と鎮座。さすがにディスクが高速回転するのに本体が傾いているのはまずいと思い、左側は若干下駄をはかせた。

幸い電源ケーブルは2mほどの長さがあり、車内での取り回しに問題はない。AC100Vのコンセントに接続して、電源を入れると無事にプレーヤーが起動した。

後は映像端子の接続である。ホンダeの映像入力端子はHDMIだが、当然ながら1997年発売のプレーヤーHDMI出力端子装備されてなど装備されていない。あるのは昔ながらの赤白黄色のRCA端子だ(S端子もあるのだがここでは割愛)。そこで役に立つのがこの変換コンバーターだ。繋ぐだけでお手軽にRCA出力をHDMI出力に変換できるのだが、このコンバーターの使用にはUSBの外部電源が必要になる。ここでホンダeの電源端子が生きるのだ。AC100V電源と併設して2口のUSB端子(Type A)を装備、HDMI映像入力も含めてすべてセンターコンソール内で完結する、まるで示し合わせたかのようなスマートな接続が可能なのだ。

変換コンバーターを経由してRCAをHDMIへ。コンバーターはアマゾンで数千円で買える。

電源・映像系の端子がセンターコンソール下に集約されているホンダe。すべての配線がきれいに収まった。

あとはホンダe側の画面入力モードを「HDMI」に切り替えれば晴れてプレーヤーからの映像が出力される。ディスクをセットして再生ボタンを押せば、低い唸り音とともにディスクが回転し映像が流れ始める。記念すべきホンダeでのレーザーディスク初再生に選んだのは「OVA版 逮捕しちゃうぞ」。漫画家・藤島康介氏の代表作で女性警官のコンビを主人公としたコメディーだ。同氏の作品は自動車やバイクなどのマニアックな描写が特徴のひとつとなっているのだが、この作品をチョイスした理由は同作4巻のジャケットを見れば一目瞭然。

同名の漫画を原作に1994年から1995年にかけてOVA化された。当時のOVAならではの美麗な作画は必見。

そう、主人公たちの駆るミニパト、ホンダ・トゥデイだ。

1985年に登場した初代ホンダ・トゥデイは、かわいらしい丸目ライトと低い砲弾型フォルムが特徴的な軽ボンネットバンである。そのスタイリングはどこかホンダeに通じるところがないだろうか?(セグメント的にはシティの方がそれっぽいというのは公然の秘密) 過去のホンダ車が主役を務める象徴的な作品を、最新のホンダEVで堪能する、なかなかに”オツ”なものじゃないだろうか。

今まで気が付かなかったのだが、なんとエンディングクレジットの中に小社「カーマガジン」の文字が! 車両協力での参加らしいが、おそらく作中(第1話)に登場した「ミニERAターボ」だろうか。

……というわけでこれにて「ホンダeレーザーディスク視聴システム」の構築完了を宣言したい。こんな酔狂なことをしている人間はふたりといないはずなのでおそらく世界初だろう。「いや、我こそが世界初だ」と反論がある方は編集部までご一報いただきたい、ぜひともお友達になりましょう(笑)。

ちなみに視聴してからの感想として大画面での映像だけでなく、音質もかなりいい感じだったことは挙げておきたい。ホンダeに専用設計されたサウンドシステムはセンタースピーカーや大容量サブウーファーを備えた豪華なもので、ここがクルマの中であること忘れさせてしまうような、迫力のあるクリアな音が印象的だった。

まあ、ここまでしなくても……

おそらく世界初のホンダeでのレーザーディスク視聴の貴重な瞬間。

こんな風に散々趣味全開で好き勝手やってきたわけだが、ポータブルDVDプレーヤーやPC、スマホなどをつないでも充分楽しむことができる……というかそれが本来あるべき姿だろう。本末転倒な結論かもしれないが”ここまでやっても楽しめる”というホンダeの懐の深さを知ってもらうきっかけとしていただき、もしこれを読んでいるアナタがいつかEVオーナーになった時、ついてまわる充電時間を少しでも退屈せずに過ごすためのヒントとしてくれたら幸いだ(これは特殊なケース過ぎてならなそうだが……笑)。

【Specification】HONDA e ADVANCE/ホンダ e アドバンス
■車両本体価格(税込)=4,950,000円
■全長×全幅×全高=3895×1750×1510mm
■ホイールベース=2530mm
■トレッド=前1510、後1505mm
■車両重量=1540kg
■バッテリー種類=リチウムイオン
■モーター型式/種類=MCF5/交流同期電動機
■モーター最高出力=154ps(113kW)/3497-10000rpm
■モーター最大トルク=315Nm(32.1kg-m)/ 0-2000rpm
■サスペンション形式=前後マクファーソン/コイル
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤ(ホイール)=前205/45ZR17、後225/45ZR17

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