
アメリカの自動車プラモデル――アメリカンカープラモの世界は、ホビーとして独立した存在ではなく、実は実車業界――自動車産業と強い結びつきを有して発展を遂げてきた。この連載では、今まで語られずじまいであったそのような歴史を繙いていきたい。その一回目となる今回は、まずアメリカ独自の縮尺――1/25スケールについて、ありがちな誤解を解いておこう。
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実用上の要請から生まれた合理的な縮尺
プラモデルの世界で、長らくアメリカが孤立している。
「中途半端だ、わけがわからない」
アメリカ製カープラモデルに固有の1/25スケールは、日本においてこれまでさんざんこのように言われ続けてきた。
世界を見渡してみれば、ヨーロッパや日本においてはこれよりもわずかに大きい1/24スケールが主流であるにもかかわらず、半世紀以上の歳月にわたってアメリカはかたくなに1/25スケールを守り続けてきた。日本ではこのふたつのスケールの差異は無視しがたい違和感として多くは悪しざまに語られ、ひどいときにはアメリカ車のプラモデルを作らない理由とまでされることもあった。
どうしてこんなことになってしまったのか。
1945年、未曾有の災禍となった第2次世界大戦をアメリカは戦勝国、それも領土にまるでダメージを受けなかった国として終えることができた。復員した若き兵士たちは新しい家族をもうけ、豊かな理想の新生活を求めて大都市から郊外へと進出し、新しい街と家とを築いた。大都市と郊外とを結ぶべくここで大いに求められたのが自動車で、人々は競うようにマイカーを買い求め、自動車メーカーはひとりでも多くの顧客を振り向かせようと、他社との差別化と宣伝に躍起となった。
その戦略は決して目先の売上のみ追うものではなく、戦後来るべくしてやって来た爆発的なベビー・ブームによって誕生した子供たちをそう遠くない将来における優良顧客として囲い込まんとする意欲的なもので、「The little ones sell the big ones.(小さなものが大きなものを売る)」のスローガンの下、戦略のいわば尖兵となったのが「ミニチュア」だった。
そうしたミニチュアのはじまりは金属製であった。アメリカ全土とひと口に言ってもそれは途方もなく広大で、人の住むところにあまねく自動車の需要はあったにもかかわらず、自動車販売のネットワーク=ディーラーは大都市と地方のそれとでは規模に大きな差があった。例えばあるシーズンにニューモデルが3種類、それぞれにカラーバリエーションが5色ずつ登場したとして、ショールームに15台の展示車を残らず用意することは、よほどの規模を持つ有力ディーラーであっても難しかった。
そこで自動車メーカーは、シーズンごとにニューモデルのミニチュアを用意し、そこに本物と同じ塗料による塗装を施すことによって顧客へ提示するサンプルとし、この問題の解決を図った。ディーラーに配られたこの「自動車の形をしたカラーチップ」は、現在のアメリカ製カープラモデルに到る自動車模型の先駆けとなる。
自動車型のカラーチップが金属製からプラスチック製に変化し……
こうした始祖の金属製ミニチュア、自動車の形をしたカラーチップは、その目的と機能をだんだんと変えていく。本物の自動車の塗装ラインを間借りすることで余計な負担を製造現場に強いていた金属製ミニチュアは、やがて成型前に狙いどおりの着色の利くプラスチックに素材を置き換えることで自動車メーカーの手からいよいよ完全にアウトソーシングされ、量産性・コストとも飛躍的に向上した。
専業の模型メーカーの手によって大量に安く作ることができるようになったことで、こうしたミニチュアはディーラー・ショールームの備品に留まることをやめ、よりアクティブな販売促進用ノベルティーとして、新車の購入を検討する家庭の「王子様」たちの手に広く納車されていくことになる。
このまったく新しいプラスチック製のミニチュアが、いわゆる「プロモーショナルモデル」と呼ばれるものだが、これらはすべてあらかじめ工場で組み上げられたもので、模型メーカーにとっては高価な金型に加え、組み立てコストが重くのしかかる代物でもあった。
毎年モデルチェンジを繰り返す自動車と歩を合わせ、避けがたく金型に追加コストが生じる状況に苦慮した模型メーカーは、コスト削減と回収の両方をねらいとして新機軸を打ち出す。組み立てられていないプラスチック成型品をそのまま「ユーザーが組み立てて楽しむもの」としてパッケージングし製品とした、現代の我々にも馴染み深いいわゆるアメリカンカープラモの誕生である。
この試みは初年度から爆発的な成功を収め、自動車ディーラーの手からも飛び出してスーパーマーケットチェーンなどに販路を拡大、1950年代終わりから1960年代にかけて最も人気のあるホビーとしてアメリカ全土を席巻していく。
原則として本物の自動車の販売促進役を務める以上、こうした一連のミニチュアには実車そっくりの縮尺模型であることが当然のごとく求められ、それを手掛けるメーカーには厳密な契約の下、対象となる車の公式図面(ブループリント)へのアクセスが許された。いうなれば実車と模型とは、同じ血を分けた兄弟のような関係だったわけだが、この関係はビジネスである以上非常にシビアでもあり、毎年モデルチェンジが行われる実車に合わせた模型の設計にあたっては、現在では考えられないほどのスピードと正確さが求められた。
ここで編み出されたのが、実車の図面に記されたインチ表記の寸法を、数字を一切変えることなくミリメートルに読み替え、模型における寸法としてそのまま適用する手法だった。1インチは25.4ミリであるから正確には1/25.4スケール。これが後々まで連綿と受け継がれるいわゆる「1/25スケール」の発祥である。
図面に書き込まれた数字を一切いじらないこの手法は、とにかくミスが起きず、実車の図面をそのまま模型用の図面に転用できるため、設計プロセスの大幅な短縮が可能だった。
また模型の設計には、最終的なサイズよりも大きなモックアップ(木型)を制作して全体のプロポーションから細部にいたるまでを検討するプロセスが欠かせないが、こうしたモックアップにも実車の図面の数字に手を加える必要がない1/10スケール(小数点の位置をずらして読み替えるだけ)が採用された。
1/25スケール表記のなされた車のプラモデルがお手許にあれば、ぜひそのホイールベースを実測してみていただきたい。実車のホイールベースが119インチの車であれば、プラモデルのホイールベースはきっかり119ミリメートルになっているはずだ。これが字義どおりの1/25であったなら、プラモデルのホイールベースは120.9ミリメートルになっているはずだが、実際はそうなってはいない。
実車の1インチを模型の1ミリメートルに読み替えるこの独特の縮尺法こそ、アメリカ製のアメリカ車のプラモデルが他でもない実車の図面そのものから作り起こされたものであることを示す重要なポイントなのだ。
このような出自を持つ縮尺模型は、アメリカンカープラモを置いて他に例を見ない。
長きにわたるアメリカンカープラモの孤立には、こうした背景があった。中途半端でわけがわからない要素など、何ひとつなかったのだ。
この記事を書いた人

1972年生まれ。日曜著述家、Twitterベースのホビー番組「バントウスペース」ホスト。造語「アメリカンカープラモ」の言い出しっぺにして、その探求がライフワーク。
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