50’sのラストを飾った端正なプロポーション
1950年代のフォードは、1954年型でのV8エンジン刷新(OHV化)、1957年型でのモデルチェンジの成功(販売首位をシボレーより奪還)と、順調な展開を遂げてきた。1959年型は1957年型の最後の発展形となるが、この年式最大のトピックは、ギャラクシーがトップモデルとして新たに加わったことだろう。従来の最上位モデル・フェアレーン500をベースに、太いリアピラーのサンダーバード風ルーフを具えるのが最大の特徴だ。なお、他のモデルではリアウィンドウが側面に回り込んだ、細いリアピラーのキャビンとなる。
モデルチェンジからひと足遅れで登場したギャラクシーだが、スクエアなボディと専用ルーフのマッチング、星をちりばめたフロントグリルなどのデザインは非常に高いデザイン評価を受け、当時開催されたブリュッセル万博では金賞を授与されている。ボディ形式は4ドア・セダン(名称はタウンセダン)と同ハードトップ(タウンビクトリア)、2ドア・セダン(クラブセダン)と同ハードトップ(クラブビクトリア)、そしてコンバーチブルのサンライナーと、電動格納式リトラクタブル2ドア・ハードトップのスカイライナーがあった。
ホイールベースは118インチ(2997mm)。ちなみに1957、1958年型ではカスタム、カスタム300などの下位モデルのホイールベースは116インチ(2946mm)だったが、1959年型では全モデル118インチに統一されている。エンジンは、スカイライナーを除く全車は直6の223-cid(3.7L/145hp)が標準。オプション(スカイライナーでは標準設定)のV8は292-cid(4.8L/200hp)。さらに強力なエンジンとしてコード“B”の332-cid(5.4L/225hp)、“H”の352-cid(5.8L/300hp)も存在した。
当時モノキットを美麗に仕上げる匠の技
さて、ここでお見せしているのは、AMT製1/25スケール・プラモデルのギャラクシー・クラブビクトリアである。今では非常にレアな当時モノ、AMT初期のアニュアルキット(品番:1HTK)だ。プロモーショナル・モデル(販促グッズとしての模型)をキットにしたものなので、パーツ構成はシンプル極まりない。下の画像がパッケージだが、同年型の他車種と共通のボックスのため、イラストは架空の車種が描かれている。オプションのカスタムパーツがいくつか付属するが、これらを省略したクラフツマン・シリーズ版も存在した。
60年以上前の品とはいえ、細部の彫刻は今でも充分通用する出来だ。金型技術もかなり良くなってきた時代で、パーティングラインのズレも少ない。ただし、ボディとフロントグリル&バンパーのパーツのフィッティングはあまり良くない。気になるのがテールフィンの形状で、横から見ると途中からやや上に反って見える。テールフィン自体が後ろに行くに従って若干広くなっていて、リアフェンダー上部の膨らみも少し反り返っているようだ。これは事後変形ではなく造形そのものの問題のようである。
作例では、テールフィンの上のラインをできるだけ直線にして、フィンの幅も揃えてみたが、決定的な解決には至っていない。やはり、下の膨らみから手直しが必要であろう。ただ、「Galaxie」のバッジが邪魔をしているので、修正は非常に厄介である。今回の作例では、テールフィンの問題は残しつつ、フロントグリルのフィッティングに集中した。インテリアは例によってコンバーチブルと共通なので、リアシート形状が異なる。パテ盛りして修正しているが、完成後はあまり目立たなかった。
作例のホワイトリボン・タイヤは年式からはやや不自然と思われるかもしれないが、キット付属のホワイトウォール・タイヤが、金型のズレが激しく使い物にならなかったため、暫定的に他キットからコンバートしたものである。シャシーはエンジンも足周りも一体の一枚ものだが、ボディにセットするとフロントサスやオイルパンが下に位置していて、前から見ると違和感があった。モーターツールで削り込んで目立たないようにしてある。前後のバンパーとホイールは剥離・成形して再メッキ処理を施した。フロントバンパーの横のパーティングラインは、実車ではパーツの分割ラインに相当するので、スジボリを入れてある。
ボディカラーはGeranium(カラーコードT)とColonial White(E)のツートン。アクセルSを用いて、純正カラーチップの色にほぼ合わせている。当時のフォードでは、このようにルーフを除いたボディ上面/その他の塗り分けをスタイル・トーンと呼び、ルーフ/アンダーボディの塗り分けをコンベンショナル・ツートンと呼称した。メッキモールにはベアメタル「ULTRA BRIGHT CHROME」を使用。クロームマスターに較べアルミシートが厚く、ナイフの消耗が激しい。非常に貼り難いがシートの厚みゆえ深い凹凸にも馴染み易く、リアフェンダー下部などの波板状モールドにも使えた。エンブレム類は筆記体の細い文字なのでほぼ全て、筆による色さしである。初代ギャラクシー特有のトランクリッドの「Fairlane 500」バッチが興味深い。