左ハンドル専用のオープンスポーツ
最新型RZ34の登場を契機として、日産のスポーツカー、フェアレディZへ俄かに注目が集まっている。フェアレディZの源流を辿ると、1952年に発表されたダットサンDC-3に行きつくのはよく知られていることだろう。このDC-3は、戦前モデルの内容を引き継いだダットサン・セダンのシャシーに、MG風のオープンボディを架装した、雰囲気だけのスポーツカーであった。
【画像52枚】スケール拡大までして実現したSPL212とその制作工程を見る!
50台足らずを生産したDC-3の後、1957年には、同様にダットサン・セダン(110型)のシャシーを利用したダットサン・スポーツ1000を発表。1959年から発売されたこのスポーツ1000(S211型)は、その翌年に排気量を1200ccへと拡大。型式名はSPL212となり、このとき「フェアレデー」の名が与えられた。これが現代のフェアレディZに繋がる直接の先祖と言えるのである。
DC-3、スポーツ1000と、いずれも国内での販売はふるわなかったが、これは商品力云々というより、当時の市場がそこまで成熟していなかったことが原因と言える。このような車種を購入・所有できるようなユーザーがそもそもそう多くはいなかったのである。このため、フェアレデーことSPL212は輸出専用モデルとなり、左ハンドルのみが生産された(型式名の「L」がそれを表すが、わずかに国内でも販売されたという)。
また、スポーツ1000ではFRPだったボディは鋼板製へと改められ、シャシー/ドライブトレインもダットサン210のものから、当時最新の310型ブルーバードのものへと進化しているのが特徴だ。しかし、フェアレデーがフェアレディとなり、本格的なスポーツカーへと脱皮するには、1962年10月のモデルチェンジまで待たなくてはならない。
成型の都合から裾拡がりとなったボディがスケール拡大に幸いし…
初代フェアレディとも呼ぶべきこのS210系は、当時マルサンから、ダットサン・スポーツ1000がプラモデル化されている。このキットは実車のノベルティ目的で少量が販売されたもので、現在では大変貴重なプレミアム品だ。一体成型のボディは雰囲気こそ悪くないものの、型抜きのしやすさを優先し、全体的に裾広がりの、実車とは異なるフォルムとなっている。とはいえ、1/24~1/25スケール近辺ではこれが唯一のプラモデル化と言えるだろう。
ここでお目にかけているのは、このキットをベースとてSPL212へと改造した作品である。ただし、キットをそのまま制作しディテールアップを施した、というわけではない。このキットは1/25スケールとされているので、これを芯に1/24スケールへと拡大、各部に手を加えて完成度を向上させたのである。なお、元のキットは大変貴重なものであり、そのような改造にそのまま使用したのではなく、組み立て済みジャンク品を複製してレジンコピーを作り、そちらに手を加えて制作している。
シリコーン&レジンでボディを複製して検討すると、マルサンのボディは1/25スケールながら、前述の通り裾広がりの形状で、そのためサイドシル部の幅が拡がっており、日東/フジミのフェアレディSR311用シャシーがリアオーバーハング部以外、ほぼピッタリ適合した。そこで、シャシーはこのSR311のものを使うことに決定、ボディ側はサイドシル部分を基準として主に上半身部分へポリパテで肉付けし、切断を伴う延長・拡幅などなしにスケール拡大が実現できたのである。実車のデザイン自体、フェンダーのフレアもなくメリハリの少ない形状であるため、さほど違和感はないだろう。
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